彫り物は石原常八主信 主利親子の作と推定 [歓喜院 貴惣門] 埼玉県

獅子鼻 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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歓喜院は聖天堂も凄いですが、正門である貴惣門きそうもんにも豪壮な彫り物があり、こちらは拝観料なしで鑑賞できます。

歓喜院貴惣門

貴惣門は側面に破風が三つ重なる珍しい八脚門で、全国に4つの類例があるのみ、その中でも最大の物だそうです。国指定重要文化財。

歓喜院貴惣門

聖天堂再建から約100年後の安政二年(1855)頃に完成。

「くまがやねっと」には彫師は石原常八主信いしはらつねはちもとのぶ(二代石原常八)と主利(三代石原常八)親子と書いてありますが、「熊谷市Web博物館」には石原常人主利が彫刻を担当と書いてあります。歓喜院の公式サイトには何も記載が無いので、一応推定としておきます。まあ、彫り物を見れば、石原常八である事は間違いないのだろうとは思いますが。

正面頭貫上のの彫り物。

虹梁上中備

細かいです。

龍

波がすごく良いと思います。波は武志伊八郎信由たけしいはちろうのぶよしが有名で「波の伊八」なんて言いますが、私はこちらの波の方が好みです。

龍

裏側。

歓喜院貴惣門

裏側の頭貫上には玉巵弾琴ぎょくしだんきんがありました。

玉巵弾琴図

一絃琴を奏でる玉巵。

玉巵 

波も良いですが、龍の体のくねらせ方なんかは、まるで見て彫ったかの様です。

龍

非常に勉強になります。

龍

斗栱間には唐獅子と応龍の彫り物。

飛龍と唐獅子

唐獅子は後藤縫殿助が好きなのですが、龍は常八が好みです。

飛龍と唐獅子

波も良いし、体のくねらせ方も良いです。

飛龍

彫り物好きの人は気付いていると思いますが、至る所に銘が彫ってあります。沢山彫ってあるので、これは彫師ではなくて寄進者の銘なのだと思います。

飛龍

中には龍の体にまで銘が彫ってある物も。。。えええ!良いのか?大口の寄進に対する大サービスなのか?有力者か何かで「ここに入れろ」と言われて逆らえなかったのか?それとも、常八は細かい事を気にしない人だったのか?(そんな訳無い)

飛龍

因みにこちら↓は三代石原常八の石原恒蔵主計が手掛けた須影八幡神社の応龍。そっくりですが、さらに繊細な彫りになっている様に見えます。波は貴惣門の方が好みかな。

須影八幡神社 三代石原常八 石原恒蔵主計 彫

それにしても、漢字が違ったり名前を変えたり、昔の彫師の名前は覚えられんです。

龍だけでなく獅子鼻もさすがは超一流の彫師です。

獅子鼻
獅子鼻

門には多聞天(毘沙門天)と持国天がいて邪鬼を踏みつけています。もちろんこちらは常八ではないでしょう。

持国天と邪鬼

なかなか愛嬌のある顔。

邪鬼

素晴らしい彫り物でした。

貴惣門

刺青師・龍元

069-2(2021.05.24)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    邪鬼を見て笑ってしまいました。
    ありがとうございます!
    寺社彫刻がまだよくわからない頃に
    行ったので、見逃してました。(笑)
    獅噛や鬼などもいるようなので、再訪
    したいと思っています。

    現地で買った小冊子の解説です。
    「安政二年(1855)ごろ建立のこの門は、
    要所を素木の彫刻で飾る江戸後期建築の
    典型で、鑿(のみ)の切れ味は冴え渡り、
    彫刻師の意気込みが伝わる。」

    接写した写真を見ると、その素晴らしさ
    が分かりますね!

    • 獅噛や鬼などもいるんですか!気が付かなかったなぁ。良く見たつもりだったんですが。

      国宝と重文の違いというのは理解できるんですが、聖天堂に比べて貴惣門の扱い方があっさりし過ぎだと思いますね。こんなに見事なのに。

      その本は私も買いましたよ。隅々まで読みました。

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