かつては眩かっただろう寂れた彩色彫刻 [とある社 其の五] 関東

街のチンピラ 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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ある時 関東のとある社に参拝しました。

元々は極彩色が眩かっただろうと思われる 立派な御本殿です。

御本殿

右面胴羽目は唐子の書。

唐子の書

書とは古代の文人・士大夫・官僚が嗜むべき芸ごと 琴棋書画の四芸や詩書画の三絶の一つです。

唐子

彩色がかなり剥落してしまってます。

唐子

犬?猫?を抱えた唐子。

唐子
唐子

脇障子は 牛を連れたピエロの様な風貌の人。

巣父

これは 許由が耳を洗った川の水を 牛に飲ませる訳にはいかないと 来た道を引き返す巣父でしょう。

巣父

背面です。

御本殿

これはどなたでしょう?

画題不明

赤子を抱く女性。。。

画題不明

と。。。

画題不明

鍬を持った男性。。。とくれば 二十四孝の郭巨かくきょがまず思い浮かびますが

画題不明

肝心の 黄金/お釜 がどこにも見当たらないし 冠を被った女性の服装から考えても 極貧に喘ぐ郭巨夫婦ではなさそうです。

画題不明
〜追記(2024.07.06)これは拓跋詰汾たくばつきっぷんの説話の様です。

拓跋詰汾
橘守国 絵本故事談

天女

拓跋詰汾は山沢で狩りをしていた。突然、天から衣を纏った車が舞い降りて来た。中から1人の美しい婦人が現れ「私は天女です。あなたと婚姻を結ぶよう命を受けてきました」と言った。
その夜、拓跋詰汾は彼女と床を共にした。明け方、彼女は「ちょうど来年の今、また同じ場所でお会いしましょう」と言い、風雨のように凄まじい速度で去っていった。
1年後、拓跋詰汾は同じ場所に赴くと、やはり天女と再会した。
天女は生まれたばかりの子を拓跋詰汾へ託し「これはあなたの子です。しっかりと教育し、立派な子に育てるのです。子孫は代を重ねて王となることでしょう」と言い、すぐに退散した。
Wikipediaより抜粋

左面に廻ります。

御本殿

脇障子は巣父と対になる許由。

尭帝に位を譲ると言われて 耳が穢れたと言って 川で耳を洗います。

許由

思いの他 男前です。

許由

胴羽目は韓信の股くぐり。

韓信の股くぐり

「お前はいつも剣を帯びているが それで俺を刺してみろ できないなら俺の股をくぐれ」

街のチンピラ

街のチンピラに挑発された韓信は 何も言わずに股をくぐりました。

韓信

この韓信も男前ではありますが 僧侶かなにかの様な風貌です。

韓信

韓信は街中の笑い物になりましたが 後に劉邦に仕えて 漢の三傑と称されるまでになります。

街のチンピラ

画題に統一感が無いのが難と言えば難ですが 彫刻の完成度が高く 彩色の寂れ具合も良い感じで 素晴らしい社でした。

御本殿

刺青師・龍元

059(2024.07.06)

コメント

  1. onijiiです より:

    onijiiです。
    この寂れ具合がグッときますねえ。
    内緒で所在地を教えてくださいませ。
    よろしくお願いいたします。

    明日、仲間と富士吉田市に行きます。
    衝撃的にヘタウマな彫物を見るのが、
    楽しみで仕方ありません。(笑)

    • onijiiさん こんばんは
      分りました。いつもの所に送っておきますね。

      富士吉田の山神社ですか?暑いので熱中症には気を付けてくださいね。

  2. より:

    またまた解明されましたね!!
    拓跋詰汾 純粋なお方というか他人を疑わないというか、一度きりで一年後に現れて『あなたの子です』と言われても困っちゃいますよね

    • 他の探し物をしていると見つかるんですよね。今は子路と孔子の絵を探しています。

      >一年後に現れて『あなたの子です』と言われても困っちゃいますよね

      そう思って彫刻を見ると「エッ マジかよ!」って顔してますね!
      コレを彫った人は、どう思ってたんでしょうね。

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