観音堂の他にも見事な彫り物 [雨引山楽法寺 其の二] 茨城県

地蔵堂 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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雨引山楽法寺 其の一からの続きです。

仁王門

最初の黒い門、薬井門をくぐって階段を登ると仁王門が見えて来ます。

階段

建長六年(1254)建立
天和二年(1682)現建物再建
宝永年間(1704-10)無関堂円哲により彫刻制作

仁王門

門の周りの彫刻は嶋村円哲の様です。頭貫上には彩色の山鵲。奥には菊水があります。

山鵲

天井には迫力の龍。

龍

奥の天井は天女です。真上の写真を撮るのは結構難しいです。右下には銘があった様ですが、殆ど剥落してしまって「徳志」と読めるだけです。龍の方にも左上に銘があった様ですが、写真では見切れてしまいました。

天女

門の背面の頭貫上には鳳凰です。

鳳凰

門の周りの斗栱間にはぐるりと、綺麗に彩色された鶴や鷹、波に兎の彫り物がありました。

鐘楼堂

仁王門に向かって階段を登る途中、右手に鐘楼堂があります。

建長六年(1254)建立
天和二年(1682)再建
文政十三年(1830)現建物再建

鐘楼堂

二階の回廊下組物間には波に水鳥の彫り物がありましたが、目を引いたのは妻飾りの雷神。仁王門が鐘楼堂の屋根と同じ位の高さに立っているので、門の横からよく見えます。

雷神

当然、反対側には風神がありました。こちらは麓の方を向いているので、足元に気を付けながら、かなり見上げる形になります。

風神

地蔵堂

仁王門のそばには地蔵堂があります。享保年中(1716)無関堂円哲が彫った地蔵菩薩を安置しているとの事。

地蔵堂

扉上の彫り物。老人と唐子がいますが、どなたなのかは分かりません。

?

右側脇障子は福禄寿。

福禄寿

作風は緻密な感じですね。

福禄寿

左側の脇障子は鹿を連れた寿老人。

寿老人

寿老人というのは、中国では福星・禄星・寿星の三星の一つで、福禄寿はその三星の総称ですね。なので、寿老人か福禄寿のどちらかを抜いて吉祥天を加えた物を七福神とした時代もあった様です。

寿老人

鬼子母神堂

御本堂に向かって左に進むと、鮮やかな彩色の施された鬼子母神堂があります。

鬼子母神堂

脇障子のこれは恵比寿さまって事で良いのでしょうか。牛に乗った恵比寿なんてあまり見ないな、と思ってググると結構出てきます。

恵比寿天

向拝には水引虹梁がなく、向い龍の彫り物だけがありました。右側の龍はうっすらと口を開けています。

龍

左側脇障子は李白観瀑だと思います。事前調査では左右の脇障子を合わせて許由巣父としていました。

李白観瀑
鬼子母神堂

胴羽目は左右とも唐獅子牡丹。右面胴羽目は撮り忘れました。

唐獅子牡丹

背面です。

鬼子母神堂

斗栱間には二匹の虎がありました。

虎

胴羽目は当麻蹴速たいまのけはや野見宿禰のみのすくね。相撲の神様ですね。剛力自慢の蹴速が相手を探している事を聞いた垂仁天皇すいにんてんのうが、野見宿禰を召喚して対戦させ、野見宿禰が勝った、という神話。これが相撲の最初です。

当麻蹴速と野見宿禰

腰羽目は三面とも犀です。

犀

東照山王権現

御本堂に向かって右手には東照山王権現があります。扉が二つあるのは東照大権現と山王大権現を合祀したからだそうです。

東照山王権現

享保十二年(1727)再建

東照山王権現

向拝には金嚢きんのうと宝珠、その上には波に兎。

東照山王権現向拝

地紋彫りの施された目の覚める様な白い胴羽目に赤い紋が映えます。

東照山王権現

背面も地紋彫り。東照宮はこんな感じが良いのかも知れません。

東照山王権現

先日、ブログを読んで下さった方から彫師について指摘があり、彫り物の制作年代と彫師の生没年を考えなければならない事を教わりました。

お寺の解説では仏師円哲が東照宮再建に深く関わっていた様に書いてあります。この円哲は嶋村円哲の事だと思うのですが、嶋村円哲って1720年に亡くなってるんですよね。1727年再建のこの建物は、円哲が彫り物を彫ってあって、その死後七年の歳月を経て完成に漕ぎ着けた、という事なのでしょうか。

〜追記(2021.10.13)出典元の記事を良く読んでみたら、1720年に亡くなったのではなく「1688年から1720年頃に活躍」となっていました。私の様な輩が居るので間違いが広まるのでしょうね。以後気を付けます。追記終わり〜

こことは関係無い話ですが、なんと八代嶋村俊表も円哲(嶋村円哲は二代)の銘を使う事もあったとか。こりゃあ、銘すらもそのまま信用できないって事です。御本堂の彫り物は円哲で間違いない様ですが。

素人が深堀りすると迷子になってしまいます。

刺青師・龍元

126-02(2021.10.13)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    鐘楼堂の風神、雷神は見逃してました。
    早速リストに追加しました。
    ありがとうございます。

    この部分は愛好家でないと、まず見ない
    ですよね。
    多分第一発見者だと思います。(笑)

    風神、雷神は希少なので、チェックしてます。
    同じ桜川市の椎尾山薬王院の風神、雷神像は、
    知られていませんが傑作ですよ。
    造形から鎌倉期の作と思われますが、リアルさ
    に感動、衝撃を受けました。
    姿形、顔、筋肉、骨、浮き出た血管、足裏の
    土踏まずの曲線・・・。国宝級・・・。
    余りの衝撃に、1週間ほど感動の余韻に浸り
    ました。(笑)

    屋内に展示してあり有料(500円)ですが、
    機会があれば是非ご覧くださいませ。

    • ここは帰り道に発見しました。
      よく見えると書きましたが、高さ的に、角度的にという意味です。
      撮影にはズーム付きのカメラが有ると良いですね。
      スマホカメラではキビシイです。

      椎尾山薬王寺は2年前に参詣しましたが
      風神雷神像は見ませんでした。
      是非再訪しようと思います。
      ご紹介ありがとうございます
      m(__)m

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