矢崎久右衛門元形の仙人 [金刀比羅宮] 群馬県

蝦蟇仙人 劉海蟾 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和五年二月下旬 群馬県前橋市の金刀比羅宮に参拝しました。産泰神社の境内社です。

金毘羅宮鳥居

文化七年(1810)建立
御祭神 大物主命おおくにぬしのみこと

大工棟梁は大隅流伊藤生兵衛一門の矢崎久右衛門元形(1762-1827)。産泰神社拝殿や茅野市の三輪神社酒室神社を建てた人です。

金毘羅宮

向拝の龍。

向拝の龍

長押の上には 仙人の彫り物がありました。

正面の左端は鉄碗から龍を呼び出す陳楠仙人ちんなんせんにんです。

龍出し仙人 陳楠

干魃で困っていた人々のために 龍を呼び出して雨を降らせたと伝わります。

龍

彩色はほとんど剥落してしまってます。

龍出し仙人 陳楠

隣は鯉にまたがる琴高仙人きんこうせんにん

鯉乗り仙人 琴高

龍子を捕えると言って水に入り 約束の日に鯉に乗って帰って来て弟子や人々を驚かせ 再び水中に戻って行った と伝わります。

鯉乗り仙人 琴高

金毘羅大権現の扁額。

琴高と盧敖

扁額の右は盧敖仙人ろこうせんにん。元々は黄安仙人とは別人だったが習合して区別出来なくなったと言われます。

亀仙人 盧敖

右端は瓢箪から駒を出す張果老ちょうかろう

張果老

正史にも名を連ねます。596年生まれの735年没。

139歳か。仙人としては早逝ですね。

張果老

仙人の張果老は驢馬を紙のように畳んで箱にしまい 乗る時は水をかけて戻したと伝わります。干し椎茸か切り干し大根みたい。

瓢箪から駒

社殿右面。

「蝦蟇・鉄拐」の彫り物がありました。

右面

手前は幽体離脱仙人の李鉄拐りてっかい。鉄拐先生と呼ばれます。

李鉄拐

魂を飛ばして知人に会いに行っている間に弟子に体を焼かれしまい 仕方なしに近くにあった物乞いの死体に乗り移る事になります(諸説あります)。

李鉄拐

奥は蝦蟇仙人の劉海蟾りゅうかいせん

蝦蟇仙人 劉海蟾

「手に三足のひきがえるを持ち之を弄する形を描き 劉海戯蟾の図という。通常は蝦蟇仙人を以て最も多く知らる」『画題辞典』斎藤隆三

蝦蟇仙人 劉海蟾

左面です。

左面

鶴仙人 費長房ひちょうぼう

鶴仙人 費長房

巻き物を広げます。

鶴仙人 費長房

鶴仙人は沢山いますが 費長房は 控鶴仙人こうかくせんにん黄鶴仙人こうかくせんにんと同一人物という説もある様です。

鶴仙人 費長房

木の葉に乗ったこちらのお方は初めましてでしょうか。

木の葉仙人

何処かでお目に掛かった様な気もしますが…

木の葉仙人

北斎漫画や列仙伝をひっくり返してみましたが 見つかりませんでした。ご存知の方がいらっしゃいましたらご教示下さい。

刺青師・龍元

036-03(2023.04.07)

コメント

  1. より:

    葉に乗った仙人?は不明ですね、以前調べましたが辿り着けずマニアックな方のブログを見ても『不明』となっているので、かなり珍なお方なのかと思われます。葉が大きいのか?葉に乗るくらい小さいのか?小さいなら少彦名命?
    歌川国芳『日本国開闢由来記』少彦名でググると葉に乗った少彦名命の画に辿り着きましたが、その画の少彦名は高貴なお方、こちらの彫刻は『仙人』ってな雰囲気なので、少彦名ではなさそうな?不明ですね。

    • 錺さんおはようございます。

      なるほど「葉が大きいのか?葉に乗るくらい小さいのか?」は良いポイントですね。大体において仙人はそこら辺が曖昧です。

      国芳も色々描いてるんですね。勉強になります。ありがとうございます。

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