平成三十年十二月吉日、外弟子の彫鈴と埼玉越生の龍ヶ谷熊野神社を訪ねました。令和元年七月にも再訪しているので、写真は混ざっています。
いい具合に歴史を感じさせる雰囲気です。龍穏寺山門の隣にあります。東向きの神社です。彫師は名工・岸亦八。
![一の鳥居](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/e931d013-1024x908.jpg)
一の鳥居をくぐると奥に社殿が見えて来ます。
![社殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/79701974-1024x971.jpg)
![龍ヶ谷熊野神社 二の鳥居](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/IMG_7947-1024x1024.jpg)
由緒
明応元年(1492)紀州熊野本宮より分霊
天保十五年(1844)社殿再建
御祭神
伊弉冉尊(いざなみのみこと)
速玉乃男命(はやたまのおのみこと)
事解乃男命(ことさかのおのみこと)
一応、本などでは御祭神は上記の三柱なんですが、神社の検索サイト「八百万の神」では熊野権現となっています。神仏習合の結果、仏が神の姿で民の前に現れるのが権現です。ここは元々隣の龍隠寺の境内社だったので、そんな事もあるのかも知れません。
が、龍ヶ谷地域活性化推進の会の案内板には 須佐之男命 となっています。どういう事なんでしょう。
![龍ヶ谷地域活性化推進の会の案内板](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/9ecea2f7-1024x768.jpg)
普通だったら、現地の案内板が優先なんですが、この案内板、酒井抱一の「抱」の字の手偏がサンズイになっちゃってます。どうも誤字は信憑性を損ないますね。それから「天保十五年創建」と書いてあるけど、ここにはもう一つ越生町教育委員会の案内板があって、それには「天保十五年再建」となっています。
![越生町教育委員会の案内板](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/cc790a0b-1024x754.jpg)
活性化推進委員会の案内板の方が後に作られた様ですが、何か主義主張の違いでもあるのでしょうか。それともこれも誤植って事ですかね。
熊野権現でググってみると更に訳が分からなくなったので、もうこれ以上この問題を深掘りするのはやめます。彫刻が興味のメインですから。
拝殿
![龍ヶ谷熊野神社社殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/IMG_5041.jpg)
向拝
向拝虹梁上には 牛若丸 がありました。
![牛若丸 天狗に兵法を授かる](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/d3b42559-1024x751.jpg)
木鼻には 獅子。
![獅子木鼻](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/28697eb1-1024x834.jpg)
凛々しい獅子ですね。
![獅子木鼻](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/6d5e1c26-1024x955.jpg)
拝殿扉
扉には仙人が彫ってありますが、鶴に乗った王子喬くらいしか分かるものはありません。
![社殿扉](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/4da2d102-1024x1024.jpg)
〜追記(2020.02.24)左端のは巻物を持っているので王子喬ではなく、費長房ですね。控鶴仙人ともいう様です。追記終わり〜
〜追記 (2020.08.06)左から費長房(ひちょうぼう)・武志士(ぶしし)・東方朔(とうほうさく)・王子喬(おうしきょう)の様です。追記終わり〜
本殿
![本殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/2a7d19b9-926x1024.jpg)
![本殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/f2e05194-884x1024.jpg)
胴羽目
題材不明。〜追記19.07.18 武内宿禰 宝珠を得る の様です 追記終わり〜
![北側胴羽目](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/e4ab4fb3.jpg)
これも題材は不明。「鬼女と侍」といえば 渡辺綱 か平維茂が思い浮かびますが、ちょっと違いますね。侍が手に持っているのは鏡でしょうか?で、鬼女の正体を暴く、とすれば平維茂の紅葉狩りかなと思うんですが、紅葉がありません。
![南側胴羽目](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/34f6e69e.jpg)
〜追記(2020.02.24)これは天児家根命の様です。北斎の資料を漁っていたら、これの下絵と思われる絵を発見しました。
![天児家根命](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2020/02/61fe5902.jpg)
鬼女は「大蛇の再生 磐永姫」とありますが、具体的な話はいずれ調べようと思います。追記終わり〜
〜追記(2023.06.04)岸和田八木地区大町の地車に「天兒屋根命神鏡を以って怪異を顕す」というよく似た彫り物が有る様ですが、内容についてはよく分かっていない様です。追記終わり〜
〜追記(2024.03.29)これは近松門左衛門作の日本振袖始という人形浄瑠璃の「天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く」という場面の様です。詳しくはこちらをどうぞ。
追記終わり〜
天の岩戸。天照が岩戸に隠れてしまった時に、外で天鈿女命が楽しそうに踊り、気になった天照が岩戸を少し開けて隙間から覗こうとした所を、手力雄がすかさず岩戸を放り投げる、というお話です。
![天の岩戸](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/9c45269f-1024x655.jpg)
天照大神(あまてらすおおかみ)
![天照大神](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/3b5929b1-940x1024.jpg)
天手力雄神(あめのたじからおのかみ)
![手力男命](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/583d424f-1024x918.jpg)
天鈿女命(あめのうずめのみこと)
![天宇受売命](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/d78506c5-768x1024.jpg)
天照と手力雄は彫った事があるのですが、いつか、踊り狂う天鈿女命を背中に大きく彫ってみたいですね。
脇障子
南側脇障子表側。馬がいないけど、黄石公と張遼かなぁ。
![黄石公と張遼](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/bb09bfbc-650x1024.jpg)
南側脇障子裏側。馬が彫られています。これは黄石公の馬かも。
![](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/d2424d8a-620x1024.jpg)
北側脇障子表。韓信の股くぐり。
![韓信の股くぐり](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/71a3ed69-661x1024.jpg)
北側脇障子裏側。これは表側の韓信が股をくぐった人かも。
![](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/07/a6caf64a-626x1024.jpg)
なかなか凝った演出ですね。
縁下隅持送り
波で 獏 を表現。
![縁下隅持送り](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/1f8b162f-1024x1024.jpg)
縁下の象鼻。波で 獅子 を表現。この手法は最近、刺青でも流行っていますね。
![縁下隅持送り](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/a267241a-1024x1024.jpg)
![縁下隅持送り](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2019/05/dab0359b-1024x1024.jpg)
すごく気持ちの良い、雰囲気のある神社でした。
刺青師・龍元
コメント