歓喜院は聖天堂も凄いですが、正門である貴惣門にも豪壮な彫り物があり、こちらは拝観料なしで鑑賞できます。
貴惣門は側面に破風が三つ重なる珍しい八脚門で、全国に4つの類例があるのみ、その中でも最大の物だそうです。国指定重要文化財。
聖天堂再建から約100年後の安政二年(1855)頃に完成。
「くまがやねっと」には彫師は石原常八主信(二代石原常八)と主利(三代石原常八)親子と書いてありますが、「熊谷市Web博物館」には石原常人主利が彫刻を担当と書いてあります。歓喜院の公式サイトには何も記載が無いので、一応推定としておきます。まあ、彫り物を見れば、石原常八である事は間違いないのだろうとは思いますが。
正面頭貫上の龍の彫り物。
細かいです。
波がすごく良いと思います。波は武志伊八郎信由が有名で「波の伊八」なんて言いますが、私はこちらの波の方が好みです。
裏側。
裏側の頭貫上には玉巵弾琴がありました。
一絃琴を奏でる玉巵。
波も良いですが、龍の体のくねらせ方なんかは、まるで見て彫ったかの様です。
非常に勉強になります。
斗栱間には唐獅子と応龍の彫り物。
唐獅子は後藤縫殿助が好きなのですが、龍は常八が好みです。
波も良いし、体のくねらせ方も良いです。
彫り物好きの人は気付いていると思いますが、至る所に銘が彫ってあります。沢山彫ってあるので、これは彫師ではなくて寄進者の銘なのだと思います。
中には龍の体にまで銘が彫ってある物も。。。えええ!良いのか?大口の寄進に対する大サービスなのか?有力者か何かで「ここに入れろ」と言われて逆らえなかったのか?それとも、常八は細かい事を気にしない人だったのか?(そんな訳無い)
因みにこちら↓は三代石原常八の石原恒蔵主計が手掛けた須影八幡神社の応龍。そっくりですが、さらに繊細な彫りになっている様に見えます。波は貴惣門の方が好みかな。
それにしても、漢字が違ったり名前を変えたり、昔の彫師の名前は覚えられんです。
龍だけでなく獅子鼻もさすがは超一流の彫師です。
門には多聞天(毘沙門天)と持国天がいて邪鬼を踏みつけています。もちろんこちらは常八ではないでしょう。
なかなか愛嬌のある顔。
素晴らしい彫り物でした。
刺青師・龍元
069-2(2021.05.24)
コメント
onijiiです。
邪鬼を見て笑ってしまいました。
ありがとうございます!
寺社彫刻がまだよくわからない頃に
行ったので、見逃してました。(笑)
獅噛や鬼などもいるようなので、再訪
したいと思っています。
現地で買った小冊子の解説です。
「安政二年(1855)ごろ建立のこの門は、
要所を素木の彫刻で飾る江戸後期建築の
典型で、鑿(のみ)の切れ味は冴え渡り、
彫刻師の意気込みが伝わる。」
接写した写真を見ると、その素晴らしさ
が分かりますね!
獅噛や鬼などもいるんですか!気が付かなかったなぁ。良く見たつもりだったんですが。
国宝と重文の違いというのは理解できるんですが、聖天堂に比べて貴惣門の扱い方があっさりし過ぎだと思いますね。こんなに見事なのに。
その本は私も買いましたよ。隅々まで読みました。