画題判明 [日本振袖始 天児家根命 神鏡を以て磐永姫の正体を暴く]

天児家根命 大蛇の再生岩永姫 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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長らく 不明だった胴羽目の画題がついに判明しました。

画題不明胴羽目というのはこれです。

天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く
越生町 龍ヶ谷熊野神社 御本殿左面胴羽目

元絵と思われる葛飾北斎の画には 「天児家根命 大蛇の再生 磐永姫」とあります。

天児家根命 北斎画

磐永姫いわながひめというの大山祇神おおやまつみのかみの娘で 妹の木花佐久夜姫このはなさくやひめと一緒に瓊瓊杵尊ににぎのみことに嫁いだが 醜かったため磐永姫だけ追い返される(ひどい!)という話が日本書紀にあります。

その話と 須佐之男命の八岐大蛇退治 を合わせて膨らませた人形浄瑠璃が「日本振袖始」 近松門左衛門 享保三年(1718)の作。

この胴羽目は その「日本振袖始」の一場面の様です。

天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く
川越市 雀の森氷川神社 御本殿左面胴羽目

あらすじはこんな感じ。

瓊瓊杵命の寵愛を受ける 姿も心も美しい木花佐久夜姫を目の当たりにして 嫉妬に狂った 姿も心も醜い磐永姫は 宮中で大暴れ。逃げ惑う局や腰元を追い回し 凄まじい形相で八つ裂きにしたりと あたりはまるで地獄絵図の様です。

天児家根命

そこへやって来た 天児家根命
「おのれ 神も帝も憚らぬ鬼畜の所業 大山祇の娘ともあろうものが恥を知れ!汝の正体を暴いてみせよう!」
神鏡を頭上に捧げ 磐永姫の眉間に向けます。

天児家根命

すると 岩をも砕く様な衝撃が走り 磐永姫はよろよろと床下に逃げ込みます。

天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く
前橋市 諏訪神社 御本殿右面胴羽目

この後 磐永姫は須佐之男命を騙して 宝剣を奪って逃げ 色々あったのち 実は八岐大蛇の化身であった磐永姫は須佐之男命に退治されます。

天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く
深谷市 諏訪神社 御本殿左面胴羽目

という訳でこれは 日本振袖始の名場面「天児屋根命 岩永姫の正体を暴く」という感じの画題になるのではないかと思います。

日本振袖始という話は歌舞伎にもなっていますが 今はメインの須佐之男命八岐大蛇退治の部分しかやらない様です。

京都大学貴重資料デジタルアーカイブ で読める様ですが 昔の本なので 私にはとても歯が立ちそうにありません。なので あらすじは 神社ぢからと寺ごころ というサイトを参照させて頂きました。


余談ですが 神話によると

ブスだからと 磐永姫を追い返した瓊瓊杵命。木花佐久夜姫が妊娠すると
「それ ホントに俺の子?」
と言い放ちます。本当に最低な男です。

怒った木花佐久夜姫は 神の子である事を証明するために 炎の中で三柱の男神を産みます。

唐破風下
深谷市 島護産泰神社 拝殿向拝

母は強しです。

刺青師・龍元

(2024.03.29)

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