長らく 不明だった胴羽目の画題がついに判明しました。
画題不明胴羽目というのはこれです。
![天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/03/image.jpeg)
元絵と思われる葛飾北斎の画には 「天児家根命 大蛇の再生 磐永姫」とあります。
![天児家根命 北斎画](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2020/09/61fe5902.jpg)
磐永姫というのは大山祇神の娘で 妹の木花佐久夜姫と一緒に瓊瓊杵尊に嫁いだが 醜かったため磐永姫だけ追い返される(ひどい!)という話が日本書紀にあります。
その話と 須佐之男命の八岐大蛇退治 を合わせて膨らませた人形浄瑠璃が「日本振袖始」 近松門左衛門 享保三年(1718)の作。
この胴羽目は その「日本振袖始」の一場面の様です。
![天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/03/IMG_3690.jpg)
あらすじはこんな感じ。
瓊瓊杵命の寵愛を受ける 姿も心も美しい木花佐久夜姫を目の当たりにして 嫉妬に狂った 姿も心も醜い磐永姫は 宮中で大暴れ。逃げ惑う局や腰元を追い回し 凄まじい形相で八つ裂きにしたりと あたりはまるで地獄絵図の様です。
![天児家根命](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_7367-1.jpg)
そこへやって来た 天児家根命
「おのれ 神も帝も憚らぬ鬼畜の所業 大山祇の娘ともあろうものが恥を知れ!汝の正体を暴いてみせよう!」
神鏡を頭上に捧げ 磐永姫の眉間に向けます。
![天児家根命](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_7384-1.jpg)
すると 岩をも砕く様な衝撃が走り 磐永姫はよろよろと床下に逃げ込みます。
![天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_7365-1.jpg)
この後 磐永姫は須佐之男命を騙して 宝剣を奪って逃げ 色々あったのち 実は八岐大蛇の化身であった磐永姫は須佐之男命に退治されます。
![天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/03/IMG_1380.jpg)
という訳でこれは 日本振袖始の名場面「天児屋根命 岩永姫の正体を暴く」という感じの画題になるのではないかと思います。
日本振袖始という話は歌舞伎にもなっていますが 今はメインの須佐之男命八岐大蛇退治の部分しかやらない様です。
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ で読める様ですが 昔の本なので 私にはとても歯が立ちそうにありません。なので あらすじは 神社ぢからと寺ごころ というサイトを参照させて頂きました。
余談ですが 神話によると
ブスだからと 磐永姫を追い返した瓊瓊杵命。木花佐久夜姫が妊娠すると
「それ ホントに俺の子?」
と言い放ちます。本当に最低な男です。
怒った木花佐久夜姫は 神の子である事を証明するために 炎の中で三柱の男神を産みます。
![唐破風下](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2021/07/IMG_8552-1-1.jpg)
母は強しです。
刺青師・龍元
(2024.03.29)
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