渡邊源次綱(わたなべのげんじつな)
953-1025 平安中期
源頼光 の家臣で頼光四天王の筆頭
正式な名乗りは源綱 通称 渡辺源次
「大江山の鬼退治」「一条戻橋」「羅生門」などの説話が有名ですね。
「一条戻橋」
ある晩、頼光の使いで源氏の宝刀「髭切の太刀」を借り受けた帰り道、一条戻橋に差し掛かる辺りで道に困っている女があった。綱が女を馬に乗せると、突然、女は鬼に変身し綱の髷に掴み掛かって来た。綱がすかさず宝刀「髭切」を抜き、その腕を切り落とすと、鬼はそのまま逃げて行った。
陰陽師の安倍晴明に相談すると
「その鬼は 茨木童子、必ず腕を取り返しにやって来るから、七日間家に閉じこもり物忌みをし、その間誰も家に入れない様に」
と言われた。
それから数日間、茨木童子は綱の屋敷に侵入しようとするが、綱の唱える仁王経と家中に貼った護符の力でどうしても入る事が出来なかった。
七日目の晩、養母が訪ねて来た。綱は扉越しに訳を話して来訪を断るが、年老いた養母に
「年老いた母がはるばるやって来たというのに、なんという仕打ちをするのじゃ、この親不孝者め」
と泣かれ、仕方なく家に招じ入れた。
「綱よ、鬼の腕を切り落としたそうじゃな、見せておくれ」
養母は鬼の腕を手に取り、しげしげと眺めていたが、突然鬼へと姿を変え、
「我は茨木童子、確かに腕は返して貰った」
と腕を持ったまま窓から逃げて行った。
「羅生門」はこの「一条戻橋」の説話の舞台を羅生門に移し換えた物だが、時系列の設定が「大江山の鬼退治」の後になっている。
「羅生門」
大江山の鬼 を成敗した後のある日、渡辺綱、卜部季武、碓井貞光、坂田金時 ら四天王の面々と藤原保昌が酒を飲んでいた時、誰かが言った。
「最近、羅生門の辺りで鬼が出るそうだが…」
「拙者もそんな噂を聞いた…」
「ただの噂だ、鬼は全部退治しただろう」
「いや、取り逃がしたのがいるやも知れん…」
という訳で渡辺綱が羅生門に行って確かめる事になった。
「証拠にこの札を立てて参る」
綱は鎧をつけ、高札を持って羅生門にやって来たが、何もおかしな事はなかった。綱がしばらく待っていると生温かい風が吹き始め、突然何かが綱の兜を掴んだ。すかさず刀を振り上げその腕を切り落とすとそれは鬼の腕であった。
この後、鬼が腕を取り返しに来るのは「一条戻橋」と同じだが、羅生門の鬼は茨木童子とは別の鬼とする話もある。
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