国宝! [歓喜院聖天堂] 埼玉県

唐子 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和三年四月、埼玉県熊谷市の歓喜院聖天堂かんぎいんしょうでんどうに参拝しました。

歓喜院聖天堂中門

治承三年(1179)創建
享保二十年(1735)聖天堂再建開始
寛保2年(1742)本殿竣工及び遷宮
彫刻棟梁 上州花輪村 石原吟八郎

歓喜院聖天堂仁王門

ここは時間が掛かるだろうと思って、ずっと素通りして来たのですが、今日は意を決してここだけの為にやってきました。

御本殿拝殿

歓喜院聖天堂御本殿拝殿

唐破風下には琴棋書画の図がありました。中備は龍。持ち送りは鯉。拝殿前は参拝する人が多く、正面からは撮りませんでした。

歓喜院聖天堂御本殿拝殿向拝

奥殿

入場料を払って奥殿の方へ。玉垣内に入れて、写真もOKです。ボランティアでガイドの人が解説してくれるというので、せっかくなので拝聴してきましたが、小一時間人の話を聞くのは結構疲れます。

他の人達は誘導されて拝殿の解説を聞きに行きましたが、一度外に出てしまうと再入場はできないというので、私は一人残って写真撮影。

次の回のガイドの人が来ましたが、観客は一人です。一対一なんてお互いにキツイだろうなぁ。

歓喜院聖天堂御本殿

奥殿左面

いつもは右から回りますが、ここは左から廻るのが順路のようなので、左から。

歓喜院聖天堂御本殿中殿と奥殿

胴羽目は寿老人。ただ一言、豪華です。

寿老人

彫りが深くて彩色も凝っています。

寿老人

各面に唐破風がついていて、この面には三聖吸酸がありました。孔子、釈迦、老子が酢をなめて、教えが違えど酢は酸っぱい、真実は一つという意味だそうです。

三聖吸酸

木階上の窓には猛禽捕猿図がありました。ボランティアの人が「鷹は仏、猿は人間を表していて、仏が人間を助けている」と解説されていました。僕は弱肉強食を表していると考えていますが、それぞれで良いと思います。

猛禽捕猿

奥殿背面

歓喜院聖天堂御本殿奥殿背面

こちらの唐破風下には司馬温公の瓶割り。中国北宋時代の政治家の司馬光が子供の時分、仲間の一人が誤って水がめに落ちてしまったが、司馬光は高価な水がめを躊躇なく石で割って仲間を救い出した、という話。

司馬温公瓶割り

中央の胴羽目は布袋尊と恵比寿天が囲碁をやっていて、大黒天がそれを観戦している図。左右の胴羽目は大黒天の米俵や布袋尊の袋で遊ぶ唐子達。

囲碁をする布袋と恵比寿と観戦する大黒

奥殿右面

歓喜院聖天堂御本殿奥殿

弁財天と吉祥天が双六をやっていて、毘沙門天がそれを観戦している図。横で隣の胴羽目にいる西王母においでおいでする天邪鬼がユーモラスですね。

双六をする弁財天と吉祥天

着物の柄が圧巻です。これは塗料を塗り重ねて立体感を出しているそうです。これが雨晒しとは。。。

弁財天 毘沙門天 吉祥天

背面と右面の胴羽目は橘守国の絵本古事談という絵手本を参照した物と思われます。

七福神 橘守国 絵本故事談
絵本古事談 橘守国

唐破風下には猩々がありました。飲んでも呑んでも酔わない人間ではない不思議な生き物と呑んでも飲んでも枯れない不思議な酒甕。この酒甕を一つ欲しいですが、ダメ人間になりそうなのでやっぱり要りません。

猩々

蝦虹梁上

ここは石原吟八郎と関口文治郎を中心として沢山の名工が制作に関わったそうですが、どれが誰の作品かは良く解っていません。

しかし、両側面の蝦虹梁上の鳳凰だけは銘が入っているので比べてみるのも良いでしょうとガイドさんに教えて貰いました。

こちらは左面の鳳凰。彫師 小沢五右衛門常信。

鳳凰

右面。彫師 後藤流初代 後藤茂右衛門正綱。まあ、確かに違うと言えば違うけど。。。というレベルの違いですね。お互いにデザインを擦り合わせたのかも知れません。

鳳凰

中殿蟇股

中殿左面の蟇股には雷さまがいました。

雷神

その隣には奥さんの電母でんぼさま。またの名を閃光娘娘せんこうにゃんにゃん金光聖母きんこうせいぼと言います。

中殿右面には風神さまがいました。

風神

縁下腰羽目の唐子遊び

奥殿の各面縁下斗栱間腰羽目には唐子遊びがありました。目の高さにあるので間近でじっくりと鑑賞する事が出来ます。

唐子
唐子
唐子
唐子

アッカンベー

唐子

ガイドさんはしきりに日光東照宮と比べて「こっちのがスゴいんだ」と強調されてました。僕もそう思いますが、日光にはお色直しをしてからは行ってないので、その内に行ってみようと思います。

刺青師・龍元

069-1(2021.05.14)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    国宝を見に行かれたんですね!
    寺社巡りを始めて、直ぐ行きました!!
    改めて写真を見ると、きめ細かな彩色に
    驚かされますね!!!
    また行きたくなりました!!!!
    日光東照宮はじっと我慢してます・・・。(笑)

    龍元さんにガイドさんは不要と思います。(笑)

    • スミマセン、最近は仕事が忙しくて返事が遅れちゃいました。

      さすが国宝、綺麗な彩色ですが、劣化が進んでしまっているのが残念ですね。
      日光東照宮も我慢せず早めに行かないと劣化が進んでしまうと思います。

  2. Shin-Z より:

    こんにちは♪
    龍元さんがこちらがまだだったとはかなり意外です。
    でも確かにここは時間が掛かりますからね。
    私も昨年三月に再訪した時には二時間ほどいました(笑)

    シンバルの人(笑)は雷神様の奥様だったんですね!
    調べてもわからずに、ずっともやもやしていました。
    ありがとうございます(人´∀`)♪

    ところでアップの写真を見ると、既に劣化がかなり進んでますね。
    十億以上もかけて修復したのに本当にもったいないことです。
    なぜ誰も修復後の保護について考えなかったんですかね?
    外観の見栄えや鑑賞のしやすさを考えてのことなのでしょうか?
    このままではそう長くは保てないと思います。残念過ぎます。

    ところで聖天さまからほぼ真南に1.5キロほどのところにある
    氷川大神社には行きましたか?岸又八作の素晴らしい彫刻があります。
    残念ながら外からはほとんど見えませんが(;´▽`A“

    • ここは日光東照宮と同じく、小西美術工藝社という所が修復をしたらしいのですが、どうやらこの劣化の速さが以前から問題になっていて「輸入した塗料が日本の気候に合わなかった」という結論に達した様です。

      国産の漆でなく輸入物を使ったのかと思うと、なおさら残念です。それならせめて庇をつけるとかしたら良いと思いますが、一般の人からすれば「離れた所から豪華絢爛な建物が一望できる」という事の方が大事かもしれませんね。

      氷川大神社はマークしておりますが、よく見えないという事なのでまだ未訪問です。公開される事があれば行きたいですね。

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