令和六年五月中旬 茨城県常総市の別雷神社に参拝しました。
![別雷神社鳥居](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_0973-1.jpeg)
享保十七年(1732)創建
明治初期 本殿再建
明治四〜九年(1871-76)彫刻製作
御祭神 別雷神
彫師 後藤縫之助
小さくて細い拝殿です。
![別雷神社](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_0972-1.jpeg)
いつもは右から廻りますが ここの胴羽目は三点で 大江山伝説の続き物なので 物語の順番通りに左面から廻ります。
![別雷神社御本殿覆屋](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_0967-1.jpeg)
向拝は見えなくなっています。縁下は後の補修なのか 通常の御本殿とは全く違う造り。
![別雷神社御本殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_0966-1.jpeg)
現在は御本殿を護る屋根が架けられていますが 割と最近まで雨ざらしだった様です。
![別雷神社御本殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_0965-1.jpeg)
胴羽目は 源頼光 足柄山にて金時を得る の場面。頼光が金太郎を見染めて召し抱えます。
![源頼光 足柄山にて金時を得る](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9505-1.jpg)
金太郎の母 山姥。
![山姥](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9583-1.jpg)
「誰か来たよ。。。一体 誰だろうね。。。」
![山姥](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9593-1.jpg)
首チョンパになってしまってますが 馬上の人が源頼光だと思われます。
![源頼光](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9581-1.jpg)
頼光の従者。従者は四人いるので頼光四天王だと思いましたが よく考えると 坂田金時を除いた三人の筈。
![源頼光の従者A](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9605-1.jpg)
浮世絵などでも 頼光と三人の他に下々の皆さんが多数おられる様です。
![源頼光の従者B](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9597-1.jpg)
片手で子熊を持ち上げ 怪力を誇示する金太郎。でも 熊というよりカピバラみたい。
![金太郎](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9591-1.jpg)
後に 名を坂田金時と改めます。1778年刊の『誹風柳多留』には「金太郎わるく育つと鬼になり」という川柳が載っているそうです。ここで頼光に出会わなければ 将来とんでもない怪物になっていた事でしょう。
![金太郎](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9600-1.jpg)
背面です。
![別雷神社御本殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_0959-1.jpeg)
胴羽目は 大江山伝説 木渡り の場面。大江山に巣食う鬼を退治するために 山伏姿に扮した頼光一行が山道を進みます。
![源頼光の木渡り](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9500-1.jpg)
怪力の坂田金時が 木を引き抜いて谷川に渡し 一行は渓流を越えます。
![源頼光の木渡り](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9564-1.jpg)
途中 血の付いた布を洗う女に出会い 道を尋ねる場面。
![頼光一行と洗濯女](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9567-1.jpg)
味わい深い表情です。
![頼光の従者](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9565-1.jpg)
これを見てすぐに 後藤縫之助だと分かる訳ではありませんが これが縫之助彫と聞けば ああ 流石名工は違うなと思います。
![洗濯女](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9615-1.jpg)
仏の化身の翁に 鬼には毒になり人間には薬になるという「神便鬼毒酒」と八幡大菩薩が使っていたという「星兜」を与えられます。
![仏の化身](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9611-1.jpg)
この様子を遠眼鏡で観察する鬼。 このくだりは初見です。
![鬼](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9612-1.jpg)
この後 鬼たちの棲家に到着。頼光一行は旅の山伏を装い 一晩の宿を請います。
鬼たちは 遠眼鏡で見て知ってたんなら騙されない筈と思うんですが。。。どういう展開になっているのだろう?
右面です。
![別雷神社御本殿](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_0956-1.jpeg)
いよいよ物語はクライマックスに突入 宿のお礼に 一行が酒呑童子に酒と舞を振る舞う場面。
![酒呑童子に酒と舞を振る舞う頼光一行](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9489-1.jpg)
舞を披露する 頼光一行の誰か。
![酒呑童子に舞を振る舞う頼光一行](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9540-1.jpg)
「まあ 一気にググッとどうぞ」
![酒呑童子に酒を振る舞う頼光一行](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9545-1.jpg)
「これは かたじけない ご馳走になります」
![大江山の鬼](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9542-1.jpg)
「バカめ 鬼には毒だとも知らずに。。。」
![酒呑童子に酒と舞を振る舞う頼光一行](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9547-1.jpg)
大江山の大ボス 酒呑童子です。
![酒呑童子](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9551-1.jpg)
酒呑童子の生い立ちには 諸説ありますが 私は「稚児として働いていた寺で 鬼踊り祭りの時に振る舞われた酒を鯨飲して寝てしまい 起きた時には付けていた鬼面が外れなくなっていて 寺を追われた」という話が哀しくて好きです。
![酒呑童子](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9549-1.jpg)
深く人間を恨んだ童子は 各地を放浪の末に 沢山の鬼を連れて大江山に巣喰い 都から人間をさらって来ては 生きたまま食べていたそうです。
![酒呑童子](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9538-1.jpg)
ああ 金太郎の様に 誰か正しい人に出会って導いて貰ってさえいれば。。。人生とは ちょっとした ボタンの掛け違いやタイミングで 大きく変わります。
![酒呑童子](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9616-1.jpg)
この神社では ここで物語は終わりなのですが 続きの場面が 茨城県大子町の王子神社にあります。
神便鬼毒酒を振る舞われて 体が痺れ 動けなくなった鬼たちを 頼光一行が退治する場面。
![大江山の鬼退治](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/01/IMG_1800-1.jpg)
酒呑童子は首を切り落とされますが その刹那 生首が頼光に飛びかかり 頭にかぶり付いたまま息絶えます。
![酒呑童子の生首](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/01/IMG_1798-1.jpg)
頼光は仏に授かった星兜を被っていたので無事でした。刺青ではもっぱら この場面が彫られます。
![源頼光の頭にかぶりつく酒呑童子の生首](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/raiko-ryugen.jpg)
別雷神社に戻ります。
右側脇障子の裏には龍が彫られていました。
![八岐大蛇](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9552-1.jpg)
これは左右で一組。龍退治はいくつかありますが 須佐之男命八岐大蛇退治 の可能性が一番高いでしょう。
![八岐大蛇](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9495-1.jpg)
![須佐之男命](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9501-1.jpg)
酒甕や櫛名田比売があれば 確実なんですが。。。
![須佐之男命](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2024/05/IMG_9610-1.jpg)
縫之助の彫り物をたっぷり堪能できました。
刺青師・龍元
050(2023.05.24)
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