またまた珍しい仙人の彫り物 激珍指定候補です [塩の湯温泉神社] 栃木県

海老虹梁の龍 栃木県
プロフィール

彫師歴三十余年。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和八年九月上旬 栃木県那須塩原市の塩の湯温泉神社に参拝しました。

温泉神社鳥居

茗荷温泉神社と同じ覆屋に鎮座します。

温泉神社

手前の御本殿が塩の湯温泉神社ですね。

塩の湯温泉神社御本殿

寛仁二年(1018)創建
慶長十六年(1611)頃 現在地に遷座
文化五年(1808)再建
御祭神 大己貴命おおなむちのみこと 伊邪那岐命いざなぎのみこと

塩の湯温泉神社御本殿

向拝中備は龍です。

塩の湯温泉神社御本殿向拝

彫刻が茗荷温泉神社よりも充実しています。 

塩の湯温泉神社御本殿

海老虹梁や尾垂木なども立派なものが備わっています。

海老虹梁の龍

海老虹梁の龍は 細かい部分よりも 分かりやすさと勢いを大切にした 大胆な造形です。

海老虹梁の龍
塩の湯温泉神社御本殿

胴羽目の彫刻は多分 老子でしょう。

老子出関

「老子は中国春秋時代における哲学者である」と Wikipedia にありますが 老子は仙人なのでしょうか?

老子

老子は 東海林辰三郎しょうじ たつさぶろうによる中国の仙人に関する伝記をまとめた書籍・支那仙人列伝にも乗っています。

老子
国立国会図書館デジタルコレクション 支那仙人列伝 コマ5/269 より切抜転載

「支那仙人列伝」自体は明治44年に日本で刊行された本ですが 明代(1600年頃)に刊行された「列仙全伝」の図像をトレースしています。

『列仙全伝』(四天王寺大学図書館所蔵) 出典: 国書データベース コマ17/345より切抜転載

太上老君たいじょうろうくんとも呼ばれ 道教の最高神格である三清の一柱に数えられます。

老子

彫刻は「老子出関」の場面。手に持っている巻物は 老子道徳経だと思われます。

老子

周の衰退を憂いた老子は 隠棲するために牛に乗って函谷関かんこくかんを通る際に 関所の役人である尹喜いんきに引き止められ 国を去るなら教えを書き残すように求められました。 

牛

老子は 全五千言からなる書物「老子道徳経」を書き残して関所を去り その後仙人になったと伝わります。

老子出関

背面です。

塩の湯温泉神社御本殿

胴羽目は猛禽です。茗荷温泉神社と同じ様に 背面は息抜き的な感じ(猛禽好きの方 ごめんなさい)。

猛禽

左面です。

塩の湯温泉神社御本殿

胴羽目は馬の様な生き物に後ろ向きに乗る人。

張果老

これは馬っぽい造形ですが 多分驢馬なのでしょう。

一日で数万里を走る白驢に乗り 休む時は紙のように折りたたんで箱にしまい 水をかけて再び驢馬に戻して旅を続けたと伝えられる 通玄先生こと 張果老だと思います。

張果老

本物の驢馬は奇蹄類ですが これは霊獣の類。割れた蹄は彫刻や絵画ではよくある表現なのだそうです。

張果老

「後ろ向きに驢馬に乗る」姿で描かれる張果老は 世俗的な欲望や名利に背を向ける という教えを象徴していると言われます。

張果老

寺社彫刻では「瓢箪から駒」が多い張果老ですが 後ろ向きではないものの 驢馬に乗った張果老らしき胴羽目を 常陸大宮市の鹿島神社で見かけた事があります。

驢馬仙人
常陸大宮市鹿島神社胴羽目

海老虹梁の龍です。

海老虹梁の龍

ガオー!

海老虹梁の龍

覚えている限り初めましての老子と 本来の姿が珍しい張果老の彫り物に 感激でした。

塩の湯温泉神社御本殿
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今年の夏は 暑かったし個人的な事情で忙しかったので あまり彫刻巡りに行けませんでした。

設定含めて やはり頻繁にカメラを触っていないとカンが鈍るというか。。。まあ下手くそになりますね。

良い季節になって来たので 熊には気をつけながら さらに探究道を進みたいと思います。

刺青師・龍元

049-02(2026.10.27)

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