令和七年四月下旬 神奈川県横須賀市の龍本寺に参詣しました。

建長五年(1253)創建
宗旨 日蓮宗
正式名称 猿海山龍本寺
別称 米ヶ浜のお祖師
御本尊 日蓮聖人像

向拝には見事な彫り物が沢山あります。

兎ノ毛通の応龍。

唐破風下には宝船?

というか 米俵を沢山積んだ船です。

この辺り一帯は昔 米ヶ浜と呼ばれていたので お米に関係のある土地柄だったのかも知れません。

手挟みには なんとも言えない表情をした猿がいました。

伝説によると 開祖の日蓮聖人を乗せた船が安房国から鎌倉へ向かう途中 近海で大しけに遭いました。座礁しかけた船はなんとか猿島に辿り着きました。すると 一匹の白猿がやって来て 陸の方を指差します。それが米ヶ浜でした。

中備の龍は宝珠ではなく 角無しの栄螺を掴んでいます。

伝説によると 日蓮聖人を乗せた船は なんとか米ヶ浜近くまで漕ぎ着きましたが 浅瀬で立ち往生。そこへ一人の男がやって来て日蓮聖人を背負って海を渡りました。

見ると男の脚は 栄螺の角で傷付いて血だらけ。哀れんだ日蓮は法華経を唱えました。すると 男の脚はみるみる癒えて それ以来 この辺りの栄螺には角が無くなった と伝わります。

海老虹梁持ち送りは竹に虎。腹には「常」と刻んであります。

右側の虎の腹には「源」と刻んであります。

正面扉には四点 琴棋書画の彫り物がありました。

琴棋書画とは中国の士大夫(知識人階級)が嗜むべきとされた 琴・棋・書・画の四つの芸道のこと。

老人が琴を弾いていますが 脇で童子が突っ伏して寝ています。芸術はこれで良いのです。

棋とは 碁・将棋の事。寺社彫刻では主に囲碁の事です。

袖を押さえる手。表現が細かいです。

お次は書です。

主に書道の事と解釈されますが 彫刻によっては読書の場合もあります。

画です。

書との判別が難しい事もありますが 絵皿が数枚あるし 何より 紙に山水画らしき物が彫られているので この彫刻は画という事で間違いないでしょう。 それに琴棋書画の順番に並んでいます。

唐破風上の千鳥破風の天女を撮ろうとしたら その奥には龍がいました。

こんな人目に付かない所にもひっそりと龍を忍ばせて来るなんて なかなかどうして 気が抜けません。

念の為 入母屋破風も覗いてみました。

やはりです。

力神さまが鎮座していました。

左側入母屋破風。

手足ともに指が5本づつあるので 私の分類では力士型力神です。

お寺の彫り物は大きくて 遠くからでも その迫力が伝わって来ます。

素晴らしい彫刻の数々でしたが 彫人知らずだそうです。
木階から上は立ち入り禁止の札がありますが 御住職の許可を得て上がりました。
刺青師・龍元
050(2025.07.18)
コメント