角無し栄螺伝説が伝わります [猿海山龍本寺] 神奈川県

枇杷に猿 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和七年四月下旬 神奈川県横須賀市の龍本寺に参詣しました。

龍本寺

建長五年(1253)創建
宗旨 日蓮宗
正式名称 猿海山龍本寺
別称 米ヶ浜のお祖師
御本尊 日蓮聖人像

龍本寺本堂向拝

向拝には見事な彫り物が沢山あります。

龍本寺本堂向拝

兎ノ毛通の応龍。

応龍

唐破風下には宝船?

宝船

というか 米俵を沢山積んだ船です。

宝船

この辺り一帯は昔 米ヶ浜と呼ばれていたので お米に関係のある土地柄だったのかも知れません。

宝船

手挟みには なんとも言えない表情をした猿がいました。

枇杷に猿

伝説によると 開祖の日蓮聖人を乗せた船が安房国から鎌倉へ向かう途中 近海で大しけに遭いました。座礁しかけた船はなんとか猿島に辿り着きました。すると 一匹の白猿がやって来て 陸の方を指差します。それが米ヶ浜でした。

中備の龍は宝珠ではなく 角無しの栄螺さざえを掴んでいます。

向拝の龍

伝説によると 日蓮聖人を乗せた船は なんとか米ヶ浜近くまで漕ぎ着きましたが 浅瀬で立ち往生。そこへ一人の男がやって来て日蓮聖人を背負って海を渡りました。

向拝の龍

見ると男の脚は 栄螺の角で傷付いて血だらけ。哀れんだ日蓮は法華経を唱えました。すると 男の脚はみるみる癒えて それ以来 この辺りの栄螺には角が無くなった と伝わります。

栄螺

海老虹梁持ち送りは竹に虎。腹には「常」と刻んであります。

竹林の虎

右側の虎の腹には「源」と刻んであります。

竹林の虎

正面扉には四点 琴棋書画の彫り物がありました。

龍本寺本堂正面扉

琴棋書画きんきしょがとは中国の士大夫(知識人階級)が嗜むべきとされた 琴・棋・書・画の四つの芸道のこと。

琴棋書画の琴

老人が琴を弾いていますが 脇で童子が突っ伏して寝ています。芸術はこれで良いのです。

琴棋書画の琴

棋とは 碁・将棋の事。寺社彫刻では主に囲碁の事です。

琴棋書画の棋

袖を押さえる手。表現が細かいです。

琴棋書画の棋

お次は書です。

琴棋書画の書

主に書道の事と解釈されますが 彫刻によっては読書の場合もあります。

琴棋書画の書

画です。

琴棋書画の画

書との判別が難しい事もありますが 絵皿が数枚あるし 何より 紙に山水画らしき物が彫られているので この彫刻は画という事で間違いないでしょう。 それに琴棋書画の順番に並んでいます。

琴棋書画の画

唐破風上の千鳥破風の天女を撮ろうとしたら その奥には龍がいました。

天女と龍

こんな人目に付かない所にもひっそりと龍を忍ばせて来るなんて なかなかどうして 気が抜けません。

天女と龍

念の為 入母屋破風も覗いてみました。

力神さま

やはりです。

力神さま

力神さまが鎮座していました。

力神さま

左側入母屋破風。

力神さま

手足ともに指が5本づつあるので 私の分類では力士型力神です。

力神さま

お寺の彫り物は大きくて 遠くからでも その迫力が伝わって来ます。

力神さま

素晴らしい彫刻の数々でしたが 彫人知らずだそうです。

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木階から上は立ち入り禁止の札がありますが 御住職の許可を得て上がりました。

刺青師・龍元

050(2025.07.18)

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