小林栄次郎の彫り物 [国神神社 其の一 拝殿向拝] 埼玉県

天岩戸 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和五年九月上旬 埼玉県皆野町の国神神社に参拝しました。

国神神社鳥居

創建年不詳
明治三十四年(1901)社殿改築 費用弐千五百円・手間五千人を要す 費用の内壱千壱百五拾円は秩父郡内を勧進
明治四〇年(1907)近隣各社合祀・社号を国神神社と改称
彫師 熊谷市玉井 小林栄次郎

小林栄次郎というのは 初代小林源八正信の流れの人で 秩父市の三峰神社や秩父神社などにも彫り物を残している様です。

国神神社

向拝です。

国神神社拝殿向拝

唐破風下右側には麒麟

麒麟

左側には鳳凰の彫り物がありました。

鳳凰

中備は天岩戸です。

天岩戸

須佐之男命すさのおのみことの乱暴狼藉に腹を立てた天照大神が天岩戸に隠れてしまったので 世界は暗闇になりました。

天照大神

困った神々は 天照大神の御出現を祈る方法を相談され  

天岩戸鼓笛隊

天安河の河原に集まり みんなして祈祷しました。

天岩戸鼓笛隊

岩戸の前で俳優わざおさし 神懸かりした 天鈿女命あめのうずめのみこと

天宇受売命

天鈿女命はどうしてこのように笑い楽しんでいるのだろう? と天照大神が覗いた瞬間に 手力雄命たじからおのみことが岩戸をこじ開けます。

手力男命

天鈿女命の迫真の踊りに 手力雄命は少し引き気味な感じ。

天岩戸
天岩戸

中備の裏側はこんな感じ。銘などは見当たりませんでした。

向拝中備裏側

木鼻は牡丹の籠彫りになっています。

木鼻

海老虹梁の龍です。

海老虹梁の龍

子引き龍です。

海老虹梁の龍

電動工具の無い時代に 非常に緻密な仕上がりになっています。

海老虹梁の龍

子龍は棘ではなく 毛が生えています。

海老虹梁の龍

前脚の造形が素晴らしいです。

海老虹梁の龍

裏側も手を抜きません。

海老虹梁の龍

右側の海老虹梁。ちょっと出目っぽいです。

海老虹梁の龍

龍の角が 下向きに枝分かれしてます。

海老虹梁の龍

明治四十年に国神神社と改称する前は 琴平神社だったので 社号額は琴平神社となっています。

国神神社拝殿向拝

額には龍虎玄武朱雀の四神が彫られていました。

社号額

龍を見ると 出目っぽくて角が下向きに枝分かれしているなど 海老虹梁の龍と似ているので これも小林栄次郎彫りかもと想像します。

社号額の龍

ところで 案内板には「費用弐千五百円・手間五千人を要す」とありました。

日本銀行調査統計局の「企業物価指数(戦前基準指数)」によると

1901年(明治34年)の企業物価指数は0.469で 2022年(令和四年)は859.4です。859.4÷0.469 でおよそ1,832倍なので 1円は1,832円の価値になります。つまり社殿建造当時の弐千五百円は 458万円。

ん?安い?

違うものさしで考えてみます。

1897年(明治30年)の尋常小学校本科正教員の初任給が1ヶ月で約10円。2000年(平成12年)の初任給は19万4千4百円。つまり1円は19,440円の価値になります。つまり社殿建造当時の弐千五百円は4,860万円。

ん〜これでも安いんじゃないのかな。

この「費用」というのは材料費を含んでないのかも知れませんね。「手間五千人」とは 延べ5千人という事だと思いますが 日当を一人1万円払ったら5千万です。

まあ どうでも良い事ですね。。。

御本殿に胴羽目はありませんが 脇障子と幣殿・拝殿の小壁に良い彫り物が沢山あったので 其の二に続きます。

刺青師・龍元

092-01(2023.09.16)

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