一つ積んでは父の為 [大悲願寺 観音堂] 東京都

令和四年三月中旬、東京都あきる野市の大悲願寺観音堂に参詣しました

仁王門の仁王様　阿形

安政六年（1859）現仁王門建立

吽形の仁王さま

門をくぐると観音堂があります

別名　無畏閣むいかく
寛政六年（1794）建立
文政十年（1827）向拝追加　正面欄間取り付け
平成十八年（2006）彩色など保存修理

兎ノ毛通しの龍　腹が黒いです

唐破風下には虎渓三笑こけいさんしょうがありました
高僧慧遠えおんは隠遁生活を送るに当たり　虎渓を越えない
という誓いを立てていたが
遊びに来た友人を見送る途中　話が弾んで
いつの間にか虎渓に架かる橋を越えてしまった事に気付いて
大笑いした　という話

中備は玉巵弾琴ぎょくしだんきん
西王母の娘で　一絃の琴を弾き　白龍に乗って四海を周遊する仙人です

彩色がとても綺麗です

正面左右の欄間に二枚の地獄図極楽図

地獄図極楽図といっても極楽の部分はこれだけ　約六分の一（涙）

一つ積んでは父の為〜　二つ積んでは母の為〜
親より先に死んだ子供は　賽の河原で鬼に責め苛まれますが　まれにお地蔵さまに助けられる事も。。。まれですよね　きっと。。。

三途の川の奪衣婆だつえばが恐ろしいです
正確に言えば　ここは地獄ではないのでしょうが　同じ様なもんですね

いよいよ地獄本番です

釜茹で
刺青でも注文の多いシーンの一つです
みんな　好きなんだなぁ

舌抜き
僕はブーツを修理するのが趣味なので　こんな釘抜きを持っています　靴屋業界では「エンマ」と呼んでいます
横の板の上に並べてある　ベーコンみたいなのは何かな？　想像したくないかも

実際には閻魔大王がエンマ釘抜きを使う訳ではありません

彩色を直してから16年経っていますが　まだまだ綺麗です

欄間の上の斗栱間には各面6つづつ　計24の彫り物がありました

正面の1番左は
鶴乗り仙人の費長房ひちょうぼう

正面左から2番目
象や鳥に畑仕事を手伝ってもらう　二十四孝の大舜たいしゅん

正面左から3番目　馬

その隣には　瓢箪ひょうたんを持った童子と老師なので
二つで　張果老ちょうかろうの瓢箪から駒　でしょう

正面左から5番目
二十四孝の孟宗もうそうが　母のため　真冬に筍を探します

正面左から6番目
童子が笙しょうを吹く横で　老師が何かを手招き
鳳凰がいませんが　蕭史しょうしでしょうか

右面に移り　左から2番目
水を張った水甕みずがめに落ちた友人を助けるために
躊躇なく高価な甕を割ったという
司馬温公甕割りしばおんこうかめわり

右面左から5番目
亀乗り仙人の　盧敖ろこう

背面は全て鳥だったので割愛します

左面に移って　左から3番目
口減らしに赤ん坊を埋めようとして　ご褒美をもらう
二十四孝の郭巨かくきょ

左面左から5番目
帝を悩ませる物の怪もののけ　鵺ぬえ　を
退治する　源頼政みなもとのよりまさ

斗栱間の彫り物は24あるのだから　全部二十四孝が丁度良かったのに　なんて勝手な事を思いますが　色々都合もあったのでしょう　他には唐獅子や兎や鳥などがありました

彫り物の横に「彩色施主　○右衛門」「○兵衛」など　古い名前がありました　平成十八年の人にしちゃあ古い名前ですが　こんな物だったのかな
明治40年生まれの僕の祖父は幸太郎という名前でした　当時としては最先端だったのかなぁ

まさか　彩色施主の名前まで　文政十年のものを復元した訳ではないですよね？　彩色は新しくなってんだから

刺青師・龍元

046-01（2022.03.29）