胴羽目は橘守国の絵本写宝袋から [静神社] 茨城県

静神社御本殿 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和五年 新年寺社彫刻巡礼の旅二日目 茨城県常陸大宮市の静神社に参拝しました

静神社鳥居
静神社

拝殿内部を覗いてみると。。。

静神社拝殿内部

唐獅子牡丹の彫り物がありました

唐獅子牡丹

幸いにして 拝殿側面にも窓があったので つぶさに鑑賞する事ができました

唐獅子

寂れた彩色から推察して 長い事何処か他所に飾られていた物をここに移したのだと思われます

唐獅子

拝殿の裏 少し高くなったところに 立派な御本殿がありました

静神社御本殿

脇障子は松に鷹 多分逆さまに取り付けられていますが こんな事は結構あります

松に鷹

すぐ横に他の御本殿があるので 少し屈みながら見ていきます

玄徳 的露馬に乗り檀渓を越す所

胴羽目は 劉備玄徳りゅうびげんとく 的露馬てきろばに乗り檀渓だんけいを越す所

玄徳 的露馬に乗り檀渓を越す所

胴羽目探求必携の書 橘守国の絵本写宝袋 に元絵がありました

玄徳 的露馬に乗り檀渓を越す所
橘守国著 絵本写宝袋より

暗殺されかけた玄徳は 凶馬とされる的露に乗り脱出しますが 行手を急流に阻まれます

玄徳 的露馬に乗り檀渓を越す所

乗る者に祟ると云われる的盧「汝 今日われに祟りをなすか またわれを救うや」

玄徳 的露馬に乗り檀渓を越す所

木鼻の獅子

木鼻の獅子

背面です

静神社御本殿

胴羽目は 船に乗った綸巾かんきんを被った人物

綸巾を被っているので最初は諸葛亮孔明しょかつりょうこうめいと思いましたが 

曹操「槊を横たえ詩を賦す」

これは赤壁の戦い前夜の曹操そうそうが船上で詩を詠む場面「ほこを横たえ詩をす」であり これも絵本写宝袋に載っている と三国志研究家のKyoさんにご教示いただきました 

曹操「槊を横たえ詩を賦す」 呉の南屏山に月登って烏鵲色を発の景 曹操身長七尺 眼細く 髯長し 行年五十歳 船頭に立って槊を横たえ詩を賦すの図 中冬西北の微風紅の直垂を翻す意を写す
橘守国著 絵本写宝袋より

絵本写宝袋の詞書には「呉の南屏山なんびょうざんに月登って 烏鵲うじゃく色を発の景  曹操身長七尺眼細く髯長し行年五十歳 船頭に立ってほこを横たえ詩をすの図 中冬西北の微風くれないひたたれをひるがえす意を写す」とあります

曹操「槊を横たえ詩を賦す」

右面です

静神社御本殿

これは 武内宿禰たけうちのすくね宝珠投擲ほうじゅとうてき 

高良玉垂命

神功皇后の三韓征伐の際に龍宮から授かった 潮の干満を操る干珠と満珠を海中に投げ入れる場面 

高良玉垂命

。。。と 今まではして来ましたが

これも絵本写宝袋に元絵があり よく見ると それには高良明神玉垂命こうらみょうじんたまたれのみことと題がついています

高良明神玉垂命
橘守国著 絵本写宝袋より

高良明神玉垂命って誰だ? と調べてみると諸説あって中々奥が深い様ですが 高良玉垂命=武内宿禰という解釈がある様です なんだ やっぱり武内宿禰で良いのか。。。

高良玉垂命

脇障子は 尾を見ると鷹っぽいですが 全体的には何の鳥でしょう?という感じ

鳥

胴羽目三面には全て 銘が彫られていましたが 左面背面は複数人彫られていて 多分寄進者でしょう 右面は苔むしていて読めませんでした

静神社御本殿

向拝の龍 水引虹梁や木鼻の獅子もかなり苔むしています

向拝の龍

やっぱり雨が当たってしまうのかな と思いました

静神社御本殿

素朴な彫りながら 色々勉強になる神社でした

静神社御本殿覆屋

特に背面の曹操は非常に珍しい画題

一見の価値ありです

刺青師・龍元

008(2023.01.26) 

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    愛用の地図帳になく、未訪問です。
    大事に守られているようですね。
    紹介ありがとうございます。
    珍しい題材の彫刻とのこと、是非
    行きたいと思います。

    • Onijii さんこんにちは
      地図帳に載ってない神社って結構あるんですね。
      神社全部が神社庁管轄ではないというのも知ってビックリでしたね。

      曹操のこの場面は三国志研究家のKyoさんも他には知らないという位に珍ですので、ぜひ参拝してみて下さい。

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