神仏習合の痕跡が色濃く残る [武生神社] 茨城県

武生神社 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和五年 新年寺社彫刻巡礼の旅三日目 茨城県常陸太田市の武生神社たきゅうじんじゃに参拝しました

武生神社鳥居

鳥居をくぐってから数分歩くと(車でも入れます)門が見えてきます

武生神社参道階段

随身門かと思いましたが 仁王門でした

仁王門

常陸太田市のサイトによると 大仏師・雲恵によって正徳六年(1716)に造られたそうです

仁王

う〜む この色。。。 菖蒲色あやめいろというのでしょうか 赤紫より少し藤色っぽい様な。。。

まあ 写真の具合もあるけど なかなか勇気の要る色味ですね

仁王

釣鐘があって 神仏習合の跡がかなり濃く残っています

武生神社

大宝元年(701)役小角えんのおづぬが神霊をこの地に遷す
大同元年(806)坂上田村麻呂が本殿を奉献
正徳六年(1716)大仏師雲恵によって仁王象造営
天明六年(1786)現本殿再建
御祭神 大戸道命おおとのぢのみこと

〜追記(2023.02.15)彫師は広木右内と堂後重松だそうです。onijii さんにご教示頂きました。詳しくはコメント欄をご覧ください。追記終わり〜

武生神社

裏へ廻ります

武生神社御本殿

今まで胴羽目探求苦難の道(大袈裟)を歩んで来たので 真っ赤に映える御本殿が目に沁みて眩しい位です

武生神社御本殿

向拝懸魚には牡丹 唐破風下は鳳凰 中備は龍 扉上には鷹が彫られています

向拝の龍

右面です

武生神社御本殿

胴羽目は海馬 これは割と珍です 神馬との区別は炎の有無 炎は霊獣の証です 

海馬

浜床と御本殿の間は鯉の滝登り 水色の鯉!

鯉の滝登り

腰組間は波に水鳥 その下は波のみです 波を水色で表現するのはどうなんでしょう

水鳥

背面です

武生神社御本殿

胴羽目は唐獅子の親子 獅子の子落としの様ですが あまり緊迫感はありません 左に何か気になる物が有る設定なのか?

獅子の親子

腰組間は波に兎

波に兎

左面です

武生神社御本殿

胴羽目は鶴亀

鶴と亀

刺青では波は水色ではなく 薄墨で表現します

水鳥

昔は色が 墨と紅殻べんがら銀朱ぎんしゅしか無かったから だと思います

鯉の滝登り

銀朱は毒性が強くて熱が出たらしいですね 刺青を入れると熱が出るという俗説はここから来ているんではないかと思います

武生神社御本殿

もちろん 今は人体に無害な刺青専用の物が沢山有るので 紅殻とか銀朱なんて物は使ってませんし熱も出ません ご安心くださいね

武生神社御本殿

刺青師・龍元

020(2023.02.13)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    「たきゅう」とは読めませんでしたね。
    郷里の福井では「たけふ」と読みます。

    河野弘著「いばらきの装飾社殿」によ
    ると、彫刻師は広木右内と堂後重松と
    出ていました。

    海馬と言うのですか。他では遭遇した
    ことが無いですね。

    • Onijiiさん おはよう御座います
      「たけふ」という読みもあるのですね、と今PCに打ち込んだら候補に「武生」と出て来ました。でも「たきゅう」では出て来ませんね。

      彫刻師が判明しているんですね。2人とも聞いた事が無い名前です。

      海馬は、今まで参拝した中では、他に群馬県中之条町の大國魂神社にあっただけですね。ググると、宮崎県の三ヶ所神社が海馬の彫刻で有名の様で、「日本国内ではウチの他に一社見つかっているだけの珍しい彫り物」と自慢していますが、これで少なくとも三社有る事になりますね。細かく調べると他にもまだまだ有る様ですが、まあ珍しい事は間違いないと思います。

      私が寺社彫刻廻りを始めたきっかけのサイトの一つ「雄峯閣」には「海馬と犀の区別が分からない」となっているし、他にもサイとカイバの違いを研究されている方もいらっしゃる様で、なかなか区別は難しいみたいですが、コレは確実に海馬だと思います。

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