山の中の廃道を往く [愛宕神社] 千葉県

二十四孝 陸績 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和四年五月中旬、千葉県君津市の愛宕神社に参拝しました

愛宕神社鳥居

道路工事で片側一車線規制の道を走っていたら 急に鳥居が見えたので入ってしまいました

愛宕神社参道

轍があったので 行ける所まで行こうと思いましたが これ以上は車では無理の様です

愛宕神社参道

バックで戻って途中の別れ道を曲がり 舗装された道に出ました

ここより向こうは○○警備会社の敷地 元は学校の様でしたが 立ち入り禁止の看板がありました

廃校 現警備会社敷地

仕方がないので 車を停めて 歩きでまたさっきの道へ

愛宕神社参道

ここが本当に参道なのか?

愛宕神社参道

こりゃ遭難するかも と思いましたが 鳥居からの一本道ですから 間違いありません

愛宕神社参道

時たま石段があったりします 参道がこんな調子じゃ 神社も荒れ果ててんだろうな と思いながら進みます

愛宕神社参道

15分ほど道なき道を登って行くと 遂に見えて来ました

愛宕神社参道

天永二年(1111)勧請
大正十二年(1923)本殿倒破 その後再建
御祭神 軻遇突智命かぐつちのみこと 埴山比売命はにやまひめのみこと 水波能売命みずはのめのみこと

愛宕神社拝殿

向拝の龍 唐破風下には麒麟の親子でしょうか

向拝の龍

このウルトラマンの様な龍の顔は 何処かでお目にかかった様な気がしますが 思い出せません

龍
愛宕神社拝殿向拝

裏へ廻ります

愛宕神社

見事な御本殿です

愛宕神社御本殿

懸魚にはキングギドラ調の応龍がありました

応龍

胴羽目は二枚あって その内の左側を飾るのは

二十四孝 楊香

二十四孝きっての孝行娘 楊香ようこうです
「ここは私に任せて お父さんは いいから 座っていて」
さすが我らが楊香 落ち着いたものです

二十四孝 楊香

その右側には これも二十四孝から

お呼ばれ先で おやつに出されたミカンを
内緒で持ち帰ろうとして咎められる 陸績りくせき

二十四孝 陸績

お呼ばれ先の主人 名は袁術えんじゅつ 後漢の群雄の一人
「母に食べさせたかった」 
陸績の言い訳に涙して 遠くを見つめます

袁術

上手く言い逃れたつもりの陸績ですが
これが後々 彼の黒歴史となります

二十四孝 陸績

後に呉の皇帝となる孫権の
家臣となった 頭の良い陸績

同盟を求めて 単身 呉に 
乗り込んで来た 諸葛孔明しょかつこうめいとの
大舌戦の中

 「お前の主人の劉玄徳りゅうげんとくは 元靴職人だろ」
と 孔明をバカにしたつもりが
「おやおや 袁術のところで蜜柑パクった陸坊じゃないか」
と逆襲され 胸が塞がって 二の句が継げなくなります

閑話休題

残念ながら 背面には大きな彫り物は ありません

愛宕神社御本殿

左面にも二枚の胴羽目がありました

愛宕神社御本殿

左側の胴羽目は 黄石公と張良

黄石公と張良

「先生 くつです」

張良

「よしよし お前は見どころがあるな 兵法書を授けよう」

黄石公と張良

右側の胴羽目は 韓信の股くぐり

韓信の股くぐり

不敵な笑みを浮かべる チンピラ

チンピラA

韓信は そっぽを向いてしまってます

韓信

どうやら これからやるべき事を 説明している様子

韓信の股くぐり

参道に比べて 思いの外 綺麗に手入れされた 境内

愛宕神社御本殿

どうやらここまで 車で来られるみたいですね

帰り道

試しにこの轍に沿って 降りてみると
先程の 警備会社の敷地内に出ました

 因みに 神社のすぐ裏は 砂利採掘場
地図で見ると 一番近道に見えますが
多分 神社へは行けません

刺青師・龍元

071(2022.05.26)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    狛犬探訪の方のブログでチェックしてましたが、
    リストには入れてませんでした。
    たじろいでしまうような参道ですね。(笑)

    龍と応龍が劇画っぽいですね!かなり好みです。
    これなら龍オンチの自分でも分かります。

    胴羽目の作風が特徴的。独特の味を感じます。
    機会があれば行こうと思います。(笑)

    • これはたじろぎますよね。進むか引き返すか本当に迷いました。
      警備会社の敷地を通るのが1番楽でしょうけど、黙って入れば不法侵入ですからね。それから他にもう一つ道が有って、近くのキャンプ場から30分位で来られるみたいです。

      胴羽目は独特の味わいがありますね。鑑賞しやすくてお勧め度は高いですが、雨晒しなので劣化が気になりますね。

  2. より:

    こちらはノーチェックでした、まだまだありそうですね!! 参道から察するに荒れ果てている事が予想されますが、神社はきれいですね、この寂れ具合、良いですね、行きたいですが徒歩ですかぁ・・・。千葉県は行きたい所が沢山あるのですが、都内を抜けるのが嫌で避けています、東京湾フェリーを使う方法もあるのですが、フェリーを使って80km、フェリーを使わないと145km、乗船の準備だぁなんだかんだで時間を費やすよりも、走っちゃえって考えちゃうのですが、結果的には千葉県は近くて遠い所です。

    • またまた〜嫌ですね、此処は間違いなく錺さんに教えて頂いた神社ですよ。
      此処は住所と彫り物の存在のみしか予備知識が無かったので、道中とても不安でした。

      錺さんの所から千葉は遠いですよね。サーファー向けの安い宿を探して泊まりがけで行ってはどうでしょうか。もしくはソロキャンプとか。

      • より:

        え~私ですか?ってリストを確認したら、君津市を『みきつし』と『カ行』ではなく『マ行』にありました(笑)、泊りで行こうと思っていますが、どこを回るかピックアップするのも楽しいですね。
        先週・今週は夜勤です。睡眠薬を飲んでいますが眠れないので肉体的精神的にボロボロです。
        ネットで彫刻を捜すのが唯一の息抜き・楽しみになっております。ありがとうございます。

        • 千葉にはサーファー向けの宿が2千円台からありますね。ソロテントも2千円位からあります。
          私も遠出する時は車中泊ですが、泊まりは神社のそばで寝て朝イチから廻り始められるのが良いですね。
          昼夜逆転するのは辛いですね。お体ご自愛くださいね。

  3. Shin-Z より:

    こんばんは。

    すごく私好みの神社です!房総遠征の際は絶対に行きたいと思います!
    参道の荒れ具合、山に夢中だった頃は廃道や道の無い尾根歩きや藪漕ぎ(普通の人は知らない言葉ですよねw)もけっこうやったので、こんな参道は何でもないです(笑)まあ普通の人は「こんなん道じゃね~!」とか連呼しそうですけど。

    胴羽目の彫刻も独特ないい味があって惹かれますね~。私の認識での話になりますが、陸績はいわゆる中国の松ですが、楊香は日本の松になっていますね。認識を改めないといけないのでしょうか。そして張良と韓信の面には何だかわからない木が彫られていますね。そんなところも面白いです。でも何よりも驚いたのは韓信が四つん這いではない点です。私の記憶に欠落が無ければ、四つん這い以外の韓信は見たことがありません。けっこうレアなのではないですか?

    • Shin-Zさんにとってはこんな山は何でも無いですよね。参道がちゃんとしていた頃の話でしょうが、この山は近所の小学生なんかの遠足地になっていた様ですから、高さ自体は全く何でもありません。

      松については私は分かりません。韓信がしゃがんで後ろを向いているのは私も初めて見ました。激レアだと思います。

      味わいのある良い彫り物ですよね。是非訪れて下さい。

  4. より:

    『韓信の股くぐり』『四つん這いではない』『しゃがんで後ろを向いている』って、御二方はマ・二・ア ですね!!(褒め言葉)

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