名工岸亦八の妙技が光る![龍ヶ谷熊野神社] 埼玉県

龍ヶ谷熊野神社 二の鳥居 神社仏閣
龍ヶ谷熊野神社 二の鳥居
プロフィール

彫師歴三十余年。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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新たに左面胴羽目の画題が判明しましたので再掲します。

平成三十年十二月吉日、外弟子の彫鈴と埼玉越生の龍ヶ谷熊野神社に参拝しました。令和元年七月にも再訪しているので、写真は混ざっています。

いい具合に歴史を感じさせる雰囲気です。龍穏寺山門の隣にあります。東向きの神社です。彫師は名工・岸亦八。

一の鳥居

一の鳥居をくぐると奥に社殿が見えて来ます。

社殿
龍ヶ谷熊野神社 二の鳥居

由緒

明応元年(1492)紀州熊野本宮より分霊
天保十五年(1844)社殿再建
御祭神
伊弉冉尊(いざなみのみこと)
速玉乃男命(はやたまのおのみこと)
事解乃男命(ことさかのおのみこと)

龍ヶ谷地域活性化推進の会の案内板

「天保十五年創建」と書いてありますが、ここにはもう一つ越生町教育委員会の案内板があって、それには「天保十五年再建」となっています。

越生町教育委員会の案内板

拝殿

龍ヶ谷熊野神社社殿

向拝

向拝虹梁上には 牛若丸 がありました。

牛若丸 天狗に兵法を授かる

木鼻には 獅子

獅子木鼻

凛々しい獅子です。

獅子木鼻

拝殿扉

扉には仙人が彫ってありますが、鶴に乗った王子喬くらいしか分かるものはありません。

社殿扉

追記 (2020.08.06)左から費長房(ひちょうぼう)・武志士(ぶしし)・東方朔(とうほうさく)・王子喬(おうしきょう)の様です。

本殿

本殿
本殿

左胴羽目

題材不明

北側胴羽目

追記(2019.07.18) 武内宿禰 宝珠を得る の様です。

追記(2025.09.21)これは須佐之男命です。葛飾北斎の名頭武者部類 という本に元絵を発見しました。

近松門左衛門作の人形浄瑠璃「日本振袖始」 素戔嗚尊が蝿聲邪神さばえなすあしきかみを調伏している場面。蝿聲邪神聲は声の旧字体)というのは中国なかつくに(中華人民共和国ではありません)の在来神の事。

素戔嗚尊と蝿声邪神
名頭武者部類 葛飾北斎画

この場面は覚えている限りここだけ。激レア画題です。

右胴羽目

これも題材は不明。「鬼女と侍」といえば 渡辺綱 か平維茂が思い浮かびますが、ちょっと違いますね。侍が手に持っているのは鏡でしょうか?で、鬼女の正体を暴く、とすれば平維茂の紅葉狩りかなと思うんですが、紅葉がありません。

南側胴羽目

〜追記(2020.02.24)これは天児家根命の様です。北斎の資料を漁っていたら、これの下絵と思われる絵を発見しました。

鬼女は「大蛇の再生 磐永姫」とありますが、具体的な話はいずれ調べようと思います。

〜追記(2023.06.04)岸和田八木地区大町の地車だんじりに「天兒屋根命神鏡を以って怪異を顕す」というよく似た彫り物が有る様ですが、内容についてはよく分かっていない様です。

〜追記(2024.03.29)これは近松門左衛門作の日本振袖始という人形浄瑠璃の「天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く」という場面です。詳しくはこちらをどうぞ。

なので左右の胴羽目が近松門左衛門作の人形浄瑠璃「日本振袖始」繋がりという事になります。

背胴羽目

天の岩戸。天照が岩戸に隠れてしまった時に、外で天鈿女命が楽しそうに踊り、気になった天照が岩戸を少し開けて隙間から覗こうとした所を、手力雄がすかさず岩戸を放り投げる、というお話です。

天の岩戸

天照大神(あまてらすおおかみ)

天照大神

天手力雄神(あめのたじからおのかみ)

手力男命

天鈿女命(あめのうずめのみこと)

天宇受売命

天照と手力雄は彫った事があるのですが、いつか、踊り狂う天鈿女命を背中に大きく彫ってみたいですね。

脇障子

南側脇障子表側。黄石公と張良。

黄石公と張遼

南側脇障子裏側。馬が彫られています。これは黄石公の馬かも。

北側脇障子表。韓信の股くぐり。

韓信の股くぐり

北側脇障子裏側。これは表側の韓信が股をくぐった人かも。

なかなか凝った演出ですね。

縁下隅持送り

波で を表現。

縁下隅持送り

縁下の象鼻。波で 獅子 を表現。この手法は最近、刺青でも流行っていますね。

縁下隅持送り
縁下隅持送り

すごく気持ちの良い、雰囲気のある神社でした。

刺青師・龍元

(2019.01.13)

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