刺青図柄の意味 獏(ばく)

獏の刺青 刺青図柄解説
獏の刺青
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

刺青師・ 龍元をフォローする

霊獣 獏

獏というのは、中国から伝わった伝説上の生き物で、夢を食べて生きると言われます。特に悪夢を食べるので縁起物として刺青でも人気がありますね。

獏の刺青
獏の刺青

室町時代には、正月の初夢に良い夢を見るために枕の下に入れる「宝船の絵」の帆に、獏という文字を描く風習があったそうです。江戸時代には獏の絵を描いた枕や獏の形をした枕が庶民の間で流行した事も。

でも、この悪夢を食べるというのは日本だけの様です。中国の白氏文集には鉄を食べる霊獣と書いてあり、平和な時代を象徴するとも言われます。戦争があると金属が供出されて食べ物である鉄が無くなってしまうからという事の様ですね。

信仰

神社仏閣では魔除けとして、向拝の木鼻などに、とにかく良く見られます。

誉田足玉神社(長野県上田市)の向拝木鼻の獏
誉田足玉神社 (長野県上田市)の向拝木鼻の獏

特徴

和漢三才図会 (わかんさんさいずえ) によると「獏は熊に似ていて頭は小さく脚は低く黒白のまだら模様がある。毛は浅くて光沢がある。あるいは黄白色とも蒼白色ともいう。象の鼻、犀の目、牛の尾、虎の足を持ち、力は強くよく胴鉄および竹骨蛇蝮をねぶり食べる。(中略) 歯骨は極めて堅く、刀・斧で打つと逆に刀・斧が砕け落ちるほどである。火でも焼く事が出来ない」とあります。

和漢三才図会 (わかんさんさいずえ)の獏
和漢三才図会 (わかんさんさいずえ)の獏

 和漢三才図会 (国会図書館HP) というのは江戸時代中期に寺島良安によって編纂された類書 (百貨辞典) で、獏の他にも麒麟や獅子・白澤などの霊獣の説明があります。全部漢文なので読むのは厳しいですが、漢字なので意味は何となく分かりますし、挿絵があるので興味のある方はご参考に。

Wikipediaによると、動物園にいる実在の動物のバクは、霊獣の獏に姿が似ている事からその名前がついたとなっています。

刺青芸術工房 龍元洞
刺青師・龍元

タイトルとURLをコピーしました