十二年に一度 辰年の御開帳! [舎人氷川神社(再訪)] 東京都

舎人氷川神社 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和六年二月二十八日 東京都足立区の舎人氷川神社に参拝しました。

ここは令和二年六月にも参拝しましたが 総代の松本さんから 御開帳の連絡があったので拝観して来ました。

朝の10時に到着。すでに行列です。

舎人氷川神社

いきなり御本殿の紹介に行きます。御由緒・外観などは過去記事を参照してください。

向拝には龍が何匹もいます。この角度からは普段は見られません。

舎人氷川神社御本殿向拝

松本さんによると 近年文献が見つかり 彫師は高澤改乃介らしいとの事です。現在足立区が調査中で 彫師が確定すれば東京都の文化財に指定されるだろうとの事です。

向拝の龍

高澤改乃介(改之助と表記される事もあり)というのは三代石原常八の長男で石原知信とも名乗ったそうですが 彫師の系譜については私は詳しくありません。

それより改之助の龍といえば 爪に特徴があり 私は常々参考にして来ました。

下は↓群馬県太田市の稲荷神社拝殿の海老虹梁の龍の爪。こちらは改之助の仕事である事がわかっている様です。

高澤改之助の龍の爪
太田市稲荷神社拝殿海老虹梁

↓舎人氷川神社御本殿向拝の龍の爪。

向拝の龍の爪

木鼻の龍も大迫力です。

木鼻の龍
木鼻の龍

下は↓群馬県太田市の稲荷神社拝殿向拝の木鼻。まるで瓜二つですから これはもう 高澤改之助彫でほぼ間違い無しなんだと思います。

高澤改之助の龍
群馬県太田市稲荷神社拝殿向拝木鼻

〜追記(2024.03.02)高澤改之助彫でほぼ間違い無しというのは 私が勝手に思っているだけです。建造年と改之助の年が合わない と 3月3日は結婚記念日さんより指摘がありました。詳しくはコメント欄をご覧ください。追記終わり〜

正面扉には唐獅子と牡丹。脇板は錦鶏です。

舎人氷川神社御本殿向拝

向拝柱の昇り龍も大迫力です。

向拝柱の龍

尻尾の毛も具に見ると 新しい発見があり 参考になります。

向拝柱の龍
舎人氷川神社御本殿

左面胴羽目は須佐之男命八岐大蛇退治です。

須佐之男命

これは刺青としても定番中の定番で 今まで何人彫ったか直ぐには思い出せない位です。

須佐之男命

櫛名田比売くしなだひめ

櫛名田比売
八岐大蛇
須佐之男命八岐大蛇退治
舎人氷川神社御本殿

胴羽目は天岩戸です。

天岩戸

記紀では ここにいなかった筈の 猿田彦神。

猿田彦神

私の一番のお気に入りのキャラクターの一つです。

猿田彦神
猿田彦神
猿田彦神

岩戸に隠れてしまった天照大神と 岩戸をこじ開ける手力男命たじからおのみこと

天照大神と手力男命
天照大神と手力男命と天鈿女命

オカメ顔の天宇受売命あめのうずめのみこと

天鈿女命
鼓笛隊の一人

縁下組物間にはぐるりと十二支が彫られていましたが 特にこれ↓が印象的でした。

龍虎

龍虎自体は珍しくないですが こういう風にお互いに噛みつきあっているのは珍だと思います。

龍虎
舎人氷川神社御本殿

胴羽目は天孫降臨。瓊瓊杵命ににぎのみことの天下りですね。

天孫降臨

神社で配布されていた解説書には ここには邇邇芸命自身は描かれておらず 先頭にいるのは天宇受売命 と説明されていました。背面胴羽目の天宇受売命はオカメ顔だったけど。。。

邇邇芸命一行

出迎えるのは猿田彦神の筈ですが。。。こちらの人は鼻が普通です。猿田彦神は他にいるのか?

猿田彦神

いや 出迎えているのだから これが猿田彦神の筈。。。背面胴羽目の猿田彦神はいつも通りの天狗の様な鼻でしたが。。。

どうして背面と違う顔なんだろう。彫師が違うのかな?う〜ん。

〜追記(2024.03.01)これは海神の娘である豊玉姫が彦火火出見命に嫁ぐために海中から顕現する場面です。一魁斎さんにご教示いただきました。詳しくはコメント欄をご覧ください。

追記終わり〜

やはり 直に見ると違いますね。朝イチは混むけど お昼頃には落ち着いて来ると思います。

さすがに如意棒や脚立は使えないので 胴羽目全面の写真は 人が少ない時に手早くスマホ+自撮り棒で撮りました。

十二年に一度のご開帳。まだ間に合います。三月三日の日曜日も10時から16時まで拝観ができます。この御開帳を逃すと 十二年待つ事になってしまいますので ぜひ今度の日曜日は出掛けてみてください。

刺青師・龍元

021(2024.02.28)

コメント

  1. より:

    いやぁ~凄い彫り物ですね!! 強風で何かが飛んで来たらすぐにでも壊れてしまいそうな緻密な彫ですね!! 見難いですが金網で守られていて正解ですね。
    3枚ほど金網の様な菱形の影が映っていますが、あれは金網の外から撮ったのでしょうか?
    それっぽい(彫刻病)方はいましたか?

    • 錺さん おはよう御座います。

      信心が薄れて来たと言っても、やはり都内は人口が違いますね。

      ここは裏が公園になってますから、近所の子供達から御本殿を守るにはこれが最適ですね。

      菱形の影はそうです。中からだとどうしても見上げる形になってしまうのもあって、早い時間は非常に混んでいたので拝観者が減るの待つ間、外から撮りました。

      凄いカメラを持っている人は何人か居ましたが、滞在時間的に同病ではないと思います。スマホで熱心に撮っている人や、折りたたみの踏み台を使っている人は何人もいました。最新のスマホはズームも凄いし、手早く綺麗に撮れますからね。もしかしたらご同輩が居たかも知れません。

      あと面白いのが、ここは左から回るのが順路だったのですが、左面は人だかりが凄くて中々前に進みませんでしたが、右面はガラガラでした。みんな最初はビックリして熱心に観るけど、背面・右面に進むと疲れてしまうのだと思います。

  2. onijiiです より:

    onijiiです。
    凄いですねえ!
    霊獣も人物もいい顔してますねえ。
    冒頭の写真から見入ってしまいました。
    息を呑むほどの、凄まじい超絶技巧。

    高澤改之助は、「明治の左甚五郎」と
    呼ばれていたそうですね。

    さっそく日曜日に行こうと思います。
    紹介ありがとうございます。

    • Onijiiさん こんにちは
      朝イチは混んでると思いますから、時間をずらすと良いと思います。
      私は朝イチから20分並んで「ハイ止まらないで下さ〜い、ゆっくり進んで下さ〜い」の叫び声の中3回並び直しました。
      でも、お昼近くになり、人がまばらになってからは、落ち着いて色々な角度からゆっくりと鑑賞できましたよ。
      特に向拝の龍はこれを逃すと12年待ちになりますからね。じっくりと鑑賞してください。

  3. 一魁斎 より:

    詳細画像の御投稿ありがとうございます。
    残念ながら自分は御開帳は両日とも勤務に付き参拝できませんので、龍元さんやTwitterにアップされている参詣者の皆様の写真を拝見して楽しませていただく形になってしまいますが…(涙)

    あと、天孫降臨とされている胴羽目ですが、これは恐らく海神の娘である豊玉姫が彦火火出見命に嫁ぐために海中から顕現する場面だと思われます。

    ※全くの同一描写ではありませんが「大日本国開闢由来記」の中の、歌川国芳による挿絵に似たものがあります。https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_02697/he13_02697_0001/he13_02697_0001_p0013.jpg

    • 一魁斎さん こんにちは
      それは残念ですね。12年待つのも気が遠くなります。。。都の文化財になれば、もうちょっと頻繁に公開されるのかなぁと期待しますが。。。

      やはりこれは天孫降臨ではないのですか。同じ人物なのに違う顔では変だな、と思っていました。確かに天孫降臨では邇邇芸命のほか男神三柱女神二柱の筈ですが、彫刻は先頭の神の後に女神五柱、その後に男神二柱になっています。それに天孫降臨は雲に乗って降りてくる筈ですね。そもそも主役の邇邇芸命が描かれていないなんて、おかしな話です。

      リンクありがとうございます。確かにこれを見るとこれは豊玉姫で間違いないですね。

      • 松本尚正 より:

        2/28、まずは龍元さんに実際にお会い出来たことを感謝致します!また、今回も舎人氷川神社をご紹介頂き、誠にありがとうございます!
        龍元さんがお帰りになった後、宮大工の彫刻師の方々(八王子、群馬、栃木から計7人)が入らして、この方々は、この彫刻の作者の崇拝者?の方々らしく、明治の左甚五郎!と呼ばれてる高澤かいのすけの作品であると明言され、足立区内では、一番!都内でも有数の作品と太鼓番を頂きました。ただ、区の有形文化財から都の有形文化財にあげるのは、調査するのに10年くらいかかるそうですこれからも頑張って維持して行きますので、御ひいきのほどよろしくお願いします
        舎人氷川神社 総代 松本

        • 松本さん こんにちは
          ご開帳大盛況(と表現して良いのか分かりませんが)おめでとうございます。

          やはり直に拝観すると迫力が違います。特に向拝の龍は外からは見えないので感動しました。
          これだけの物を維持して次世代に伝えて行くのは並大抵の苦労ではないと思います。

          次回のご開帳の時には東京都の文化財になっている事をお祈り致します。
          ありがとうございました。

  4. 3月3日は結婚記念日 より:

    こんばんわ
    私も3月3日には行こうと思ってますが、休日なので凄く混みそう…
    さて、彫刻師が高澤改之助では?とのことですが、おそらく違うと思います。
    造営が天保7年(1836年)で正しいのだとすると、改之助は3歳です。
    彼は天保4年(1833年)生〜明治24年(1891年)没、享年58歳とハッキリしています。
    確かに作風は酷似してますが…
    彫刻が後の増補だとして、向拝柱や水引虹梁・海老虹梁など構造材まで及んでいるので、
    増補ではほとんど新築と変わらなくなってしまいます。
    もし高澤改之助で確定なら、造営年が間違っていると思います。
    三代目・石原常八主計であれば25歳頃なので可能性はあります。
    主計の関与が確定しているのは、この4年後の伊勢崎神社本殿からですが。

    • 3月3日は結婚記念日さん コメントありがとうございます。

      なるほど。色々な角度から見ないと軽々に判断は出来ない訳ですね。現在、足立区が調査中で10年くらい掛かるそうですが、そういう様々な角度から検証していくのでしょう。

      何にしても彫刻の素晴らしさを見れば、工匠が誰であってもその価値は計り知れません。たくさんの人が興味を持てば、これから研究が進んでいくのだと思います。

  5. 松本尚正 より:

    皆さん、色々と議論して頂き、感謝です!皆さんが注目して頂き、議論されることで色々と解明されていくことを私たち神社総代も望んでいます。今も区の学芸員の方々が調査してくれていますが、このサイトの事もお知らせしていて、観覧していて興味深いと言っていました。
    これからも、なにとぞお力をお貸しして頂きたいと思っております。

    • 松本さん こんにちは

      そうですね。色々な角度から議論して、沢山の目で見て調べて研究が深まると良いですね。それにはまず沢山の人に興味を持ってもらう事が必要なので、松本さんの広報活動は舎人氷川神社の未来に多大な貢献をしていると思います。

      これからもよろしくお願いします。

  6. 松本尚正 より:

    追伸、この度舎人氷川神社の広報として、任命されましたので、何かありましたらご連絡いただければ対応致します。

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