空海と十六羅漢と孔子と孔門十哲 [玉泉寺本堂欄間] 埼玉県

玉泉寺本堂 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和三年十一月下旬、埼玉県長瀞町の玉泉寺に参詣しました。

玉泉寺

ここは元は宝登山神社の別当寺だったそうです。明治の神仏分離の後は、お寺が無くなるか別々になるのが普通ですが、ここは神社がお寺を管理する様になったという珍しいお寺。

玉泉寺本堂

真言宗智山派
永久元年(1113)開基
明治元年(1868)神仏分離
御本尊 地蔵菩薩

向拝には張果老ちょうかろうの瓢箪から駒と鶏の彫り物がありました。

張果老 鶏

社務所に声掛けをすると中へ入れて貰えます。

天井絵が見事です。広角レンズが欲しくなりますね。

玉泉寺本堂天井絵

空海一代記

欄間には空海一代記がありました。空海と云うのは「弘法も筆の誤り」の弘法大師の事ですね。

「誕生奇瑞」 天竺の僧が懐に入って来る夢を見る玉依御前たまよりごぜん

誕生奇瑞

「幼少の頃」 諸仏と対話する我が子を見て両親は貴物とうとものと呼んだと云います。

幼少の頃

「剃髪出家」 出家します。

剃髪出家

画題の札が無かったのか見切れてしまったのか良く覚えてません。沢山ある空海伝説の一つと思われます。

「大師の修行」 何をしているのかわかりません。沢山ある空海伝説の一つと思われます。

大師の修行

五筆和尚ごひつわじょう」 唐の順宗皇帝は、書の達人として名を馳せていた空海を呼び寄せ、消えてしまった王羲之おうぎし(晋の書家)の書の修復を依頼。すると空海は両手両足と口に筆を持って一気に五行詩をしたためたと云います。

五筆和尚

これも数ある空海伝説の一つと思われます。

「流水に字を書く」 流水点字るすいてんじとも云います。童子が点の欠けた龍という文字を書き、最後に点を付け足すと本物の龍になって飛び去った。この童子は実は文殊菩薩であった。という話。

流水点字

「飛行三鈷」 投擲三鈷とうてきさんことも云います。空海帰国の日、明州の港で『密教を伝えるのにふさわしい場所へ』と祈願して、三鈷杵さんこしょを空へ投げると紫色の雲に乗って日本の方角へ飛んでった、という話。

投擲三鈷

「高野山開創」 帰国した空海は投げた三鈷杵が飛来したという高野山に道場を開きます。今も高野山には、その三鈷杵が引っ掛かっていたとされる松の木『三鈷の松』があるそうです。

高野山開創

「即身成仏」 即身成仏とは生身のまま悟りを開く事。即身仏とは違うらしいです。

即身成仏

入定にゅうじょう」 これも即身仏とはちがい、空海が永遠の瞑想に入っているという信仰を指すらしいです。

入定

孔門十哲

向かって左隣の部屋の欄間には孔門十哲こうもんじってつがありました。

孔門十哲というのは、孔子の優れた弟子10人の事です。顔淵がんえん閔子騫びんしけん(おお!二十四孝でお馴染みです)・冉伯牛ぜんはくぎゅう仲弓ちゅうきゅう宰我さいが子貢そこう冉有ぜんゆう子路しろ(おお!二十四孝の準レギュラーです)・子游しゆう子夏しかの10人。

孔門十哲

どれが誰だかは分かりませんが、人数的に真ん中の台に乗っている人は孔子なのだと思います。麒麟もいるし。

孔門十哲

どの人も偉そうです。

孔門十哲

十六羅漢

向かって右隣の部屋の欄間は羅漢様らかんさまでした。

羅漢とは釈迦の弟子で阿羅漢の略です。何百人もいますが、十六羅漢、十八羅漢が有名です。一人ひとり名前が有りますが、よほど特徴的でないと誰が誰やらわかりません。

 に乗っているのは伐闍羅弗多羅尊者ばじやらほつたらそんじや。他4人。

十六羅漢

6人います。

十六羅漢

虎に乗っている羅漢様は迦理迦尊者きやりきやそんじや。他4人。

十六羅漢

他にも鬼を連れている迦諾跋釐惰闍尊者きやだばりだじやそんじやとか、腹を裂いて仏を見せている釈迦の実子の囉怙羅らごら尊者が居る筈ですが、今日はやってらっしゃらない様なので、何処にいらっしゃるのか分かりません。

見応えのある欄間でした。

刺青師・龍元

160(2021.12.18)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    宝登山神社の煌びやかさから一転して、
    歴史を感じさせる渋い彫刻ですね。
    そのギャップに痺れます。
    両方行くしかないですね。(笑)

    • ここはGoogleMapの位置が間違っていて、辺りを彷徨ってしまいました。
      空海の伝説は数え切れない程ありますが、私でも知っているのがいくつかあったので楽しめました。

      宝登山神社の新しい彩色も綺麗で良いですが、ここは屋内にあるので当分塗り替えは要らないですね。このまま渋〜く古くなっていって欲しいと思いました。

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