案内板曰く「法師を思わせる」仙人たち [愛宕神社] 栃木県

向拝の龍 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和五年六月上旬 栃木県栃木市の愛宕神社に参拝しました。

愛宕神社鳥居

慶長十二年(1607)創建
御祭神 火結命ほむすびのみこと

愛宕神社

拝殿と御本殿覆屋を兼ねた社殿には側面に窓がありました。

愛宕神社

が 窓は曇りガラス。中は全く見えません。

愛宕神社

幸い 前は全面が格子だったので斜めから。

愛宕神社御本殿

脇障子は 西王母から盗んだ桃を持った東方朔とうぼうさくと思われます。

東方朔

「支那の仙人 仙術を得て齢八百歳に及ぶといふので 古来目出度い画題として盛に描かれ 西王母と対幅となつているものなど殊に多い。」(金井紫雲著 東洋画題綜覧より抜粋)

東方朔

胴羽目はどなたでしょう。

愛宕神社御本殿胴羽目

童子が二人。一人は笙を吹いているのだと思われます。

笙を吹く童子

これで龍か鳳凰がいれば 笙を吹いて龍/鳳凰を呼ぶ 蕭史仙人しょうしせんにんだと思うのですが。

蕭史?

正面扉脇板には龍。議論のある所ですが 私は目線が上を向いていれば登り龍と教わりました。

上り下りの龍

木鼻の獏。

獏

向拝中備の龍。

向拝の龍

兎ノ毛通しには菊の華。

愛宕神社御本殿向拝

よく手入れのされた御本殿です。

愛宕神社御本殿

このお爺さんの様な龍は よく見ると上顎にはトゲ 下顎には毛が生えています。

向拝の龍

扉脇の龍。

上り下りの龍

右面胴羽目には凛々しい男性。

董奉

虎がいるので これは董奉とうほうだと思います。

虎

「仙術を得てよく人の病を治す。癩病者を治し 又旱天に雨を降らせたりして徳を施こしてゐた。殊に面白いのは治療して銭を取らず 返礼には杏を植ゑしめたことである。」(金井紫雲著 東洋画題綜覧より抜粋)

愛宕神社御本殿胴羽目

脇障子は梅と鶴をこよなく愛する詩人の林和靖りんなせい

林和靖

「廬を西湖の孤山に結んで詩作に興じ一歩も湖外に出でず 客あれば童子をして鶴を放たしむるといふ。梅を愛し鶴を養ひ 悠々たる生涯は誠に道釈人物中の好画題である。」(金井紫雲著 東洋画題綜覧より抜粋)

林和靖

どの彫り物も彫りが深く 仙人の表情や髭や眉なども緻密に彫られています。

愛宕神社御本殿

これだけの彫り物を 真横から後ろから 見られないのは残念です。

愛宕神社御本殿

素晴らしい御本殿でした。

刺青師・龍元

066(2023.06.13)

コメント

  1. onijiiです より:

    onijiiです。
    いい顔つきしてますねえ。
    素晴らしいです。
    腕のいい彫り師ですね。
    公開することがあるのなら、
    ぜひ拝見したいと思います。

    • Onijiさん おはようございます。
      この覆屋は、元々は側面背面ぐるりと格子だったのを、ガラス窓をつけて外側から波板張って改修した物みたいですね。
      まあ、開口部は少ない方が保存や掃除の面で有利ですが、せめて素通しのガラス窓にして欲しかったですね。

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