再び岸亦八の彫り物と勝手に推定 [諏訪神社] 群馬県

手力男命 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

刺青師・ 龍元をフォローする

令和四年七月下旬 群馬県前橋市の諏訪神社に参拝しました

諏訪神社鳥居
諏訪神社

裏には かなり高い位置に立派な御本殿が鎮座しています

諏訪神社御本殿

御本殿向拝

向拝は龍尽くしです

中備の龍

向拝の龍

扉脇には登り降りの龍があります

正面扉脇の龍

角が立派で格好良い龍ですね

正面扉脇の龍

左側海老虹梁の龍

海老虹梁の龍

右側海老虹梁の龍もほぼ同じ形

海老虹梁の龍

トゲあり毛ありのハイブリッド型です

海老虹梁の龍

右面胴羽目

諏訪神社御本殿

おお!これは見た事がある構図です(って 知ってて来た訳ですが…)

天児家根命

以前参拝した越生町の龍ヶ谷熊野神社↓に同じ構図の彫り物があります 

天児家根命
越生町龍ヶ谷熊野神社胴羽目

龍ヶ谷熊野神社↑の彫師は岸亦八だという事が分かっているので こちら↓も岸亦八だろうと私は勝手に思い込んでいますが こうして比べると随分違いますね

天児家根命

ここの彫り物が岸亦八の物なのかは証拠も無いし 私には見る目も無いので違うのかも知れません

天児家根命

龍ヶ谷熊野神社の胴羽目は若林純の本では渡辺綱と解説されていますが 元絵と思われる葛飾北斎の絵には「天児家根命」「大蛇の再生 磐永姫」とあります

磐永姫

磐永姫いわながひめというのは木花佐久夜姫このはなさくやひめの姉で 木花佐久夜姫と一緒に瓊瓊杵尊ににぎのみことに嫁ぎましたが 醜かったため磐永姫だけ追い返されます(ひどい!)

磐永姫は毎日鏡を見て泣き暮らしますが ある日自分の姿が龍の様に見えたので鏡を後ろに放り投げた と日向神話にある様です

天児家根命が出てくる話には 行き当たらなかったので 今後の課題とします

〜追記(2023.06.04)岸和田八木地区大町の地車だんじりに「天兒屋根命神鏡を以って怪異を顕す」という、これによく似た彫り物が有る様ですが、内容についてはよく分かっていない様です。追記終わり〜

〜追記(2024.03.29)これは近松門左衛門作の日本振袖始という人形浄瑠璃の「天児屋根命 神鏡を以て岩永姫の正体を暴く」という場面の様です。詳しくはこちらをどうぞ。

追記終わり〜

他にも深谷市の諏訪神社にほぼ同じ構図の彫り物があります

背面胴羽目

諏訪神社御本殿

胴羽目は 隠れてしまった天照大神を誘い出すために岩戸の前でどんちゃん騒ぎをやったという話の天岩戸

天岩戸

これも龍ヶ谷熊野神社↓に似た構図の彫り物がありますが 細かく比べると随分違います

天岩戸
越生町龍ヶ谷熊野神社胴羽目

こちら↓の手力男命の方が細かい所まで彫り込まれていて劇画調です

手力男命

天鈿女命はそっくりですね

天鈿女命

まあ 長い事やっていれば作風が変わるのは当然かも知れません

天照大神

これも深谷市の諏訪神社にほぼ同じ構図の彫り物があります

左面胴羽目

諏訪神社御本殿

画題は須佐之男命八岐大蛇退治

須佐之男命八岐大蛇退治

緻密に彫り込まれた須佐之男命ですが 雨ざらしのためか悲しい事に 左手の指が4本欠損

須佐之男命

何処か他人事の様な風情の櫛名田比売命

櫛名田比売

右面胴羽目の下絵と思われる北斎の絵には「大蛇の再生 磐永姫」とあります これは須佐之男命が退治した八岐大蛇が岩永姫に転生するという話がある様なのですが 確認できていません

八岐大蛇

須佐之男命が酔い潰れた八岐大蛇を十拳剣とつかのつるぎで退治すると 大蛇の尾から天叢雲剣むらくものつるぎが出てきます これは後に草薙剣くさなぎのつるぎと呼ばれる様になります

須佐之男命八岐大蛇退治

名工と謳われる岸亦八(と推定)の見事な彫り物が雨ざらしなのは惜しい事です

刺青師・龍元

113(2022.09.08)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    2キロほど東側までローラーやりました。
    もう少しだったのですね。(笑)

    素晴らしい彫刻ですね。
    海老虹梁の龍の巻き付きが凄いですね。
    見入ってしまいます。
    行きたい寺社リストに追加しました。

    • ここの彫り物は超絶技巧と言って良いですね。かなり緻密に彫り込まれています。御本殿がかなり高い位置にあるので、離れたところから双眼鏡などで鑑賞しないと、首が痛くなること請け合いです。

      境内は近所の人たち?の駐車場の様になっていて、車と車の間から撮影する感じでした。

タイトルとURLをコピーしました