胴羽目は神話から [出世稲荷神社(鑁阿寺境内社)] 栃木県

鬼瓦 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和六年二月中旬 栃木県足利市の鑁阿寺ばんなじに参詣しました。

鑁阿寺本堂

建久七年(1196)創建
正安元年(1299)火災による消失のため本堂再建
応永十四年〜永享四年(1407-32)本堂大規模改造
平成二十五年(2013)本堂国宝指定

鬼瓦と龍が参詣者を威嚇します。

鬼瓦

応永十四年〜永享四年の大規模改造の時に付けられたという向拝。

鑁阿寺本堂向拝

ですが 六百年前というと室町時代。その頃の彫り物とはちょっと考えにくいですね。

公式サイトには記載がありませんでしたが 案内板には「昭和八年に解体修理をした」 とあるので ちょくちょく改築してるのかも知れません。

鑁阿寺本堂向拝

力神さま。

鑁阿寺本堂向拝の力神

東松山市の岩殿観音の力神↓にポーズと雰囲気が似ています。

力神
東松山市岩殿観音力神

向拝の龍。

鑁阿寺本堂向拝の龍

ここのお目当ては境内社の出世稲荷神社。

鑁阿寺境内社 稲荷神社

足利義兼(1154〜99)が邸稲荷として建てたものらしいです。

稲荷神社

でも 社殿は新しそうです。

稲荷神社御本殿

木鼻はバカボンパパ。非常に珍です。

木鼻の獅子

胴羽目は 須佐之男命の八岐大蛇退治

稲荷神社御本殿

妙に足の長い須佐之男命です。

須佐之男命八岐大蛇退治

次元大介みたい。

須佐之男命

須佐之男命は 死神の大鎌の様な物を持っているのか と思いましたが 弧を描いているのは 振り下ろした十拳剣の軌跡か もしくは大蛇の体液。 大蛇の首がパックリ いってます。

須佐之男命八岐大蛇退治

背面です。

稲荷神社御本殿

唐破風下には カエルの蟇股かえるまた。 エビの海老虹梁 がある様に いつか こういう物に出会うはずだと思っていました。

カエルの蟇股

胴羽目は天孫降臨てんそんこうりんの一場面。

天孫降臨

邇邇芸命ににぎのみことが天下りをしようとすると 高天原たかまがはらから葦原中国あしはらのなかつくにまでを照らす神が行く手を阻んだので 天宇受売命あめのうずめのみことが 名前を尋ねた。

「アンタ 誰?」

天宇受売命

「ワシは猿田彦神さるたひこかみ 道案内をするために迎えに来た ぽっこりお腹だが 気にしないでくれ」

猿田彦神

眉毛は塗師(注1)が塗り忘れたのだと思います。

(注1)おそらく本職ではない

左面です。

稲荷神社御本殿

胴羽目は天岩戸。 隠れてしまった天照大神を誘い出すために 踊り狂う天宇受売命あめのうずめのみことと 岩戸をこじ開ける手力男命たぢからおのみことの他に一柱の神がいます。

天宇受売命

「ア〜レ〜 やられた〜!」

天宇受売命

背後の閃光は ホームセンターに売っている角材を流用した様に見えますが 真相は分かりません。

天宇受売命

それに 僕は彫刻師ではないので 仮にそういう事があったとしても それが邪道なのかどうか言う立場にありません。

人物の大きさが 非常に芸術的(注2)に表現されています。

天岩戸

(注2)非常に芸術的=デッサン・遠近感が狂っている事

下から見上げた バカボンパパ。

木鼻の獅子

破風にも龍の彫り物がありました。

破風の龍

新しそうでしたが キワモノ系の 非常に好みの彫り物でした。

境内には他に 蛭子堂ひるこどうというのがありました。

神話では 蛭子命ひるこのみことは不具の子に生まれたため 葦船に入れられ流されます。

ちょっと胸の悪くなる話ですが そんな蛭子命と同じ神なのかどうか ここの御本尊は 蛭子女尊で 安産のききめがあるらしいです。

鑁阿寺蛭子堂

堂内の御本殿は ただ置いてあるだけなのか それとも神様か御本尊が入っているのか分かりませんが 胴羽目がありました。

鑁阿寺蛭子堂

横窓が無いので よく見えません。四十年ぶりに兄に会って 石を山羊に変えた 黄初平こうしょへい かも知れないと思います。

黄初平?

こちら↓は 甘楽町の赤城神社境内社の水天宮琴平宮胴羽目の 黄初平。

黄初平
甘楽町赤城神社境内社の水天宮琴平宮胴羽目

御本堂も出世稲荷神社も蛭子堂も 素晴らしい彫り物で 見応え十分 一見の価値ありです。

刺青師・龍元

036(2024.04.10)

コメント

  1. onijiiです より:

    onijiiです。
    初心者感満載ですねえ。
    思わず口元が緩みます。

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