手彫りの針の組み方作り方

針 刺青道具
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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最近は分からない事が有ってもネットで検索すれば何でも答えが出て来ますよネ。

「彫師は自分の道具や色の事は人に教えないもんだ」
なんて事を昔は言いましたが、今ではネットで検索すると色々出て来ます。時代が変われば変わるもんです。という訳で今日は私の道具の紹介です。

私は基本的に、スジ彫りは機械で、ボカシは手彫りです。スジというのはアウトライン、ボカシというのはスジの中を墨やカラーで埋める事を言います。

今日は手彫りの針を組んだので紹介しますネ。

手彫り針

手彫り針
手彫り針

これが針。約千本有ります。嘘を吐いたらコレを飲まされる訳です。

針を選ぶポイント

針を選ぶポイントは3つ。
第1、切れ味が良い事。当然です。
第2、安い事。使い捨てにするのですからネ。
第3、使い捨てにする為に重要なのはもう一つ、安定的な供給が有る事です。「希少価値が高く手に入れるのにいつも苦労する針」とか「幻の針」では困るのです。カッコいいですけどネ。さらに万が一の為に私は常に数十万本ストックしています。

組み方

私はジグ、つまり型を使います。市販されているモノもある様ですが、やっぱり自分の手に合わせて作った物が1番です。手彫り針は先端のカーブが命です。昔は何か丸い物を使って一つ一つこのカーブを整えていましたが、それでは針の出来が一つ一つバラバラになってしまいます。これは3作目で先端のカーブ部分を取り替えながら10年以上使っています。正に彫師の命です。

ジグの写真
手製のジグ

針はステンレスなのでフラックスを使い半田で留めます。ボンドで留める人もいるようです。昔はご飯をすり潰したノリで留めていたそうです。私は2段を使っていますが、3段を使う人もいます。

ジグ写真
ジグに針を並べたところ

私のジグは1段目2段目が1度に作れるようになっています。

針写真
組み上がった針。細いのはスジ用。

超音波洗浄器を使って重曹水でフラックスを洗浄してから、針をカートリッジにタコ糸と瞬間ボンドで固定。このカートリッジも使い捨てです。
​何年か前にfacebook で知らない人から
「針を何で固定してるのか」
とメッセージが来て
「知らない人に教える訳ないだろ」
と返しましたが、今日は言っちゃいます。タコ糸です。見りゃあ分かるって話ですネ。

手彫り針
手彫り針

これが刺棒に針を装着した状態。実際に彫る時には柄の部分にラップを巻きます。

刺棒に針を装着した状態の写真
刺棒に針を装着した状態

衛生管理

今まで世界中の刺青大会に参加して来ましたが、衛生管理はカルガリーが1番厳しいです。
カルガリー大会は針とインクが保健所指定のモノが主催者から支給されるのですが、手彫りの針は供給して貰えないので、毎回針や道具を一つ一つ保健所の職員にチェックして貰って持ち込みます。それからカルガリー大会は基本的に木製のモノはNGで、私の刺棒は黒檀製なのでラッピングするという条件で許可を貰っています。今年も10月に参加します。

厳しい所の基準に合わせておくのが間違いないという訳です。

滅菌パック写真
滅菌パックに封入し、オートクレーブで滅菌します

手彫り針も使い捨て

昔はお客さん一人一人に専用の針を使っていましたが、十数年前からは使い捨てにしています。管理が大変なのと、万が一にも取り違えをする可能性を考えたら、使い捨てが合理的です。
「洗ってまた封して使ってんだろ」
​なんて思う人がいるかも知れませんが、洗って再利用するより、作った方が断然速いし楽です。ジグはその為に有るのです。

龍元洞の衛生管理についてはこちらも参照ください。
龍元洞の衛生管理について

マシンについてはまた後日紹介致しますネ。

刺青師・ 龍元

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