令和六年九月下旬 秋田県横手市の八幡神社に参拝しました。
仁王門。鳥居の写真は撮り忘れました。
延暦二十一年(802)三島大神を勧請
治暦三年(1067)八幡神を勧請
宝徳年間(1449-51)上記他一社を合祀 「正八幡宮」と改称
明治二十六年(1893)本殿建築
明治四十三年(1910)頃から周辺の氏神二十二社を合祀
昭和二十二年(1947)拝殿改築
御祭神 誉田別命 他
本殿彫師 横手 中嶋重栄
拝殿彫師 土崎 鈴木勝雲
昭和二十二年改築の拝殿向拝には 龍がありました。
彫師 鈴木勝雲について詳しい事は分かりませんでしたが これはなかなか個性的な龍です。
宮司さんに許可を貰って 拝殿の中から御本殿を撮影させて貰いました。向拝中備の龍。
扉上には 菊水と 波に宝珠。丸い波が直線的に連続する 中嶋重栄の波が炸裂しています。
正面扉脇板には登り下りの龍がありました。
明治二十六年に建てられた御本殿です。
海老虹梁は 松に鷹。持ち送りには 波に兎 がありました。
木鼻の獅子。
この個性的な顔は ここの前に参拝した神明社↓でも目撃しました。神明社も中嶋重栄 もしくは同門の彫師なのでしょうか?
向拝中備の裏側。もはや柄か 幾何学模様か といった感じ。
右面。胴羽目には枠があり その外側にさらに雲の縁取りがあります。
胴羽目は 楠正成正行父子の櫻井駅の別れ。
あれれ これも見た事があります。そうです 美郷町の日吉神社にも同じ構図の胴羽目↓がありました。
ただ 具に見ると 微妙に違います。
↓美郷町日吉神社胴羽目の正成。
ここ 八幡神社胴羽目の正行。
↓美郷町日吉神社胴羽目の正行。
心なしか 日吉神社の胴羽目の方が洗練されてる? と感じてしまうのは私だけでしょうか?
背面胴羽目も 枠があって その外側にさらに雲の縁取りがあります。
どなたでしょう?
胸に笹竜胆紋があるので 源氏の誰かだと思いますが。。。
弓で龍退治と言えば 曲亭馬琴の椿説弓張月で 源為朝が 琉球王国を乗っ取ろうとした妖僧・曚雲を退治したら 虬(みずち 龍の一種)の化身だった という話を思い出しますが 絵は見た事がありません。
追記(2024.11.11)これは多田満仲です。一魁斎さんにご教示いただきました。
多田源氏の祖・多田満仲は九頭龍退治が有名ですが「夢に現れた龍女に頼まれ 天駆ける馬を得て大蛇を退治した」という話もある様です。
左面です。
ん〜 どちらさん?
先頭の 太刀を佩いて 紙垂を持って 鹿爪らしい顔をした人。
2番目の 笏を持った人。口が ひしゃげています。
幟旗の様な物を持った人。
追記(2024.11.11)これは宇佐八幡宮で神託を受ける 和気清麻呂かも知れません。一魁斎さんにご教示いただきました。
和気清麻呂は 戦前は楠正成と並ぶ忠臣とされていた様なので 右面胴羽目との兼ね合いからも可能性は高いのではないかと思います。
海老虹梁の鷹。
- 八坂神社御本殿とここ八幡神社御本殿の彫師は 中嶋重栄だとされています。
- 日吉神社御本殿と神明社拝殿は 向拝の龍と波がそっくりで 同じ彫師なんじゃないかなぁと思ったりします。
- ここ八幡神社御本殿と神明社拝殿の木鼻の獅子が瓜二つに見えます。
- 日吉神社(1900建立)・八坂神社・神明社・ここ八幡神社(1893建立)の龍は 頭や粒だった鱗など どれもそっくりです。
以上から これらの四社はどれも中嶋重栄の作なのかなぁ と素人ながら思っている次第です。
日吉神社とここ八幡神社の胴羽目の微妙な違いは気になりますが 長くやっていれば 全く作風が変わってしまう事だってあり得ます。また 胴羽目の縁どりを大きく取る手法は 他所で彫った物を現地で寸法合わせをする為に使われる事があるので ここ八幡神社の胴羽目だけ違う彫師という可能性もあります。
素人の推測です。
刺青師・龍元
088(2024.11.11)
コメント
背面の胴羽目の題材ですが、恐らく源満仲(多田満仲)の大蛇退治と思われます。https://ukiyoe-morimiya.com/items/65ebfa84b7ac334db9271378
なお、左面に関しては人物が複数人配されていることもありまして断定はできませんが、八幡神社さんという点から宇佐八幡宮で神託を受ける和気清麻呂の可能性がありそうですね。https://ja.ukiyo-e.org/image/metro/H281-001
一魁斎さん こんばんは
これは多田満仲なんですね。多田満仲は九頭龍伝説が有名ですが、確かに芳年の絵では頭は一つですね。
和気清麻呂は知りませんでした。戦前は楠正成と並ぶ忠臣とされていたらしいですから、可能性は高いですね。
いつもありがとうございます。
onijiiです。
直線的な波が強烈ですねえ!
独創的、思わず口元が緩みます!!
人物の顔も素晴らしいですね!!!
波もそうですが、海老虹梁の鷹なんかも凄く洗練されていて、こなれていると言うか、経験豊かな彫師の作品て感じですね。
でも胴羽目、特に桜井の別れがなんか違う感じなんですよね。こんなもんなんですかね。