令和三年九月下旬、栃木県益子町の八坂神社に参拝しました。
御祭神 素戔嗚尊
御本殿覆屋の壁はスノコ状になっていて、楽に御本殿が鑑賞できました。
右面胴羽目
右面胴羽目は三国志演義の名場面「檀渓を跳ぶ」から。
劉表の元に身を寄せていた劉備玄徳。劉備を疎ましく思い、排除しようと躍起になる蔡瑁に謀殺されかけます。伊籍の助けで計略に気づいた劉備は単騎脱出。
的盧に乗り、駆け飛ぶ事二里あまり。道は途絶え、「白波天にみなぎり奔濤が渓潭を噛」む激流が行手を阻みます。
追手がせまる。
乗る者に祟ると云われる的盧。「汝、今日われに祟りをなすか、またわれを救うや」
「激浪は人馬をつつみ、的盧は首をあげ首を振って濤と闘う。そしてからくも中流を突き進むや、約三丈ばかり跳んで、対岸の一石へ水けむりと共に跳び上がった」(吉川英治 三国志第四巻)
「劉備玄徳 的盧に乗って檀渓を跳ぶ」
背面胴羽目
背面胴羽目は日本神話から素戔嗚尊。ここの御祭神です。
流浪の末にたどり着いた出雲の国の肥河・鳥髪という地で、老夫と老女が乙女・櫛名田比売を挟んで泣いていた。
素戔嗚が
「お前たちはなぜ泣いているのか」
と尋ねると老夫は
「私の娘は八人いましたが、身一つに頭が八つ、尾が八つある八岐大蛇が毎年一人ずつ食べ、今日は最後の娘が食べられてしまうのです」
と答えた。
素戔嗚が酒を八つの瓶に満たして待っていると
八岐大蛇がやって来て酒に頭を突っ込んで飲み干して泥酔してしまった。
その隙に素戔嗚は大蛇を十拳剣で切り刻んで退治します。
左面胴羽目
左面胴羽目は三国志演義の名場面「長坂の闘い」から。
曹操軍との乱戦の中、趙雲は警護していた劉備の妻子を見失ってしまった。
「何の面目あってこのまま主君にまみえん?生命のある限りは。。。」
趙雲が劉備の妻・糜夫人と嫡子・阿斗を発見した時には、糜夫人は身に深傷を追って歩けない状態だった。糜夫人は阿斗の体を、趙雲の手へあずけると、
「その子の運命は将軍の手にあるものを。妾に心をかけて、手のうちの珠を砕いてたもるな」
云うやいな、みずから井戸の底へ、身を投げてしまった。
声をあげて哭いた。
やがて甲の紐をといて、胸当の下に、しっかと、幼君阿斗のからだを抱きこんだ。
「若君のお身をつつがなく主君へお渡し奉るこそ大事中の大事」
「おれをさえぎるものはすべて生命を失うぞ」(吉川英治 三国志第五巻)
趙雲のふところに抱かれた幼主阿斗。のちに蜀の天子となるべき瑞兆として、趙雲の翔ける馬の脚下からは紫の霧が流れていたという。
趙雲を追う曹操軍の兵士。
「長坂坡趙雲救幼主」
彫り人知らずですが、素晴らしいの一言に尽きます。見る角度でも印象が変わって面白いですね。
浮世絵では一枚の絵の中に時間の流れを作ってあったりするそうですが、良い胴羽目彫刻には似たような工夫があると思います。
デッサンを犠牲にしてまでスピード感を優先した、臨場感溢れる彫り物でした。
今年のベスト10に入る彫り物が、すでに30も40もあります。
刺青師・龍元
130(2021.10.21)
コメント
onijiiです。
先日、教えていただいた所を回るついでに
再訪しました。3度目の訪問です。
小説通りの構図なのですね!
登場人物の役ぴったりの顔!!
こちらは何回見ても凄いです!!!(笑)
真岡の長蓮寺の力神を確認してきました。
ありがとうございます。
頭上に宇賀神を乗せた弁財天像が本堂内に
あり、大喜びしました。
宇賀神もチェックしてます。(笑)
三国志は吉川英治版と村上知行版を読みました。
物語を知れば知るほど彫刻を見るのがより楽しくなります。
二十四孝もそうでした。
刺青も同じなんですよね。
和彫りとは錦絵(浮世絵)を入れる事だ、と思います。
錦絵を理解するには、物語を知らなくちゃいけません。
龍や唐獅子も悪くはないんですが、それは腕や脚(木鼻・海老虹梁)向けで、
背中やお腹の大きい部位(胴羽目)にはやっぱり物語の人物ですね。
宇賀神ですか!
これからは注意してみてみます。