立川流二代目・和四郎富昌の謎 [津金寺妙見堂] 長野県

金剛力士 津金寺 長野県
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和二年十一月、長野県立科町の津金寺に参拝しました。

長野を彷徨っていて、この大きな茅葺きの仁王門の前を通るたびに気になっていたお寺です。

仁王門 文化十年(1813)再建

津金寺仁王門

ロボ!メガトンパンチだ!

金剛力士 津金寺

マ!

金剛力士 津金寺

大きいです。

金剛力士 津金寺

鐘楼

仁王門をくぐると右手には鐘楼がありました。

平成二十年(2008)再々建立

津金寺鐘楼

梁の上の彫り物は古いものを移植したのでしょう。

↓ちょっと分かりづらいですが、右の塊は獅子なので、これは作家で錬金術師の魏伯陽ぎはくようだと思います。

魏伯陽

↓龍仙人は何人もいる様なので(ナント、支那仙人列伝には詩人の李白も龍仙人として載っています)、確かな事は分かりませんが、呂洞賓りょどうひんという事にします。

呂洞賓

↓麒麟と言えば孔子懐妊か上元夫人が思い浮かびますが、二人とも女性ですね。男性と麒麟の組み合わせは今までも幾つか見た事がありますが、何なのかは分かりません。麒麟について調べると西狩獲麟せいしゅかくりんという「物事の終わり」を意味する言葉があり、麒麟が捕らえられ殺されたのを見て孔子が筆を置いた、という故事から来ているそうですが、関係あるのかどうか。

麒麟と人物

↓これは蕭史しょうしですね。蕭史は笙を吹いている事が多いですが、三才図絵では縦笛を吹いています。

蕭史

妙見堂

境内の池の橋を渡った先には観音堂があり、その手前で右を向くと妙見堂があります。

津金寺境内

天保七年(1836)建立
三間社流造り
彫師 二代目・立川和四郎富昌 田中円蔵

妙見堂

仁王門は前から気になっていたのですが、この日はこの大きな覆屋が車から見えたので寄ってみました。

妙見堂御本殿覆屋

残念ながら胴羽目はありませんでした。

妙見堂御本殿

しかし、海老虹梁には迫力の龍。これだけでも寄った甲斐があります。

海老虹梁の龍

木階下には鯉。

木階下 鯉

縁下斗栱間には親子獅子。

親子獅子

山羊もいます。

山羊

脇障子には女仙。桃の様なものを持っているので、西王母でしょうか。

弁財天? 西王母?

向拝水引虹梁上にも龍です。

妙見堂御本殿向拝

唐破風下には宝袋や隠れ蓑隠れ笠などの宝尽くし。

妙見堂御本殿向拝
妙見堂御本殿

こちらの海老虹梁の龍も大迫力です。

海老虹梁の龍

今にも飛び掛かって来そうです。

海老虹梁の龍

木階下の鯉。

木階下 鯉

縁下斗栱間。こんなに躍動感のある獏は中々見ないです。

獏

唐獅子牡丹。

唐獅子牡丹

こちら側の脇障子は寿老人でした。なので、反対側はもしかしたら弁財天だったかも知れません。

寿老人

さすが二代目・和四郎富昌です。

って、どれが和四郎でどれが田中円蔵なのかは分かりません。

田中円蔵というのは初代・和四郎富棟の弟子、つまり二代目・和四郎の兄弟弟子で、茂田井諏訪神社を建てた人です。茂田井諏訪神社を見ると、割とざっくりした作風の人に思えます。

さらに言うと二代目・和四郎富昌というのは実は二人いたという謎めいた話があります。

一人は初代の長男で、もう一人は二代目の弟子で野村作十郎という人です。和四郎富昌が50歳を過ぎた頃から急に彫り物の数が増え、その死後に製作された彫り物もあり、筆跡も二種類あるというのです。作十郎は初めのウチは師匠の名代として彫っていたのが、二代目・和四郎富昌の名前が大きくなり過ぎて、そのまま二代目・和四郎富昌を名乗り続けた、という事らしいですが。。。

ここは二代目・和四郎が52歳頃の建立なので、もしかしたら野村作十郎の作品なのかも知れません。

刺青師・龍元

294(2020.12.23)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    立科町?佐久市の西側なんですね。
    見事な彫刻ですね!
    いつの日か鬼面巡りと合わせて行きたいです。
    仁王像は鉄人28号が浮かんできました。(笑)

    • 龍元 より:

      鉄人28号ですか‼︎
      再放送を観たと思うんですが、あまり記憶にありません。

      ここは佐久と上田の中間辺りですね。あまり寺社彫刻の多い地域ではありませんが、のどかで良い所です。

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