令和二年七月吉日、新潟県長岡市の秋葉神社三尺坊に参拝しました。神社は常安寺の境内にあり、神仏習合の痕跡を色濃く残しています。
三尺坊とは秋葉山三尺坊、つまり天狗ですね。
天文二十年(1551)勧請
安永五年(1776)現拝殿建立
弘化三年(1846)現奥の院落慶 彫刻は安政頃完成と推定
平成八年(1996)現拝殿一部改修
御祭神 三尺坊大権現
奥の院彫師 石川雲蝶
小林(熊谷)源太郎
拝殿向拝
一抱えもある大きい鬼面。
角がありませんが。
奥の院
奥の院は立派な覆屋の中にありました。
ここは二人の宮彫りの天才、石川雲蝶と小林源太郎が八年の歳月を掛けて仕上げた彫り物が残されています。雲蝶40歳、源太郎55歳頃の作品。
切れ目があって玉垣内に入っても良さそうな感じだったので、正面から失礼して。。。
脇障子がありませんが、これは完成前に雲蝶と源太郎がケンカ別れしてしまったので、未完成になったという説があります。
向拝
唐破風の上には「松に鷹」。細かいです。
海老虹梁の「波に龍」と手挟みの「桐に鳳凰」
水引虹梁と木鼻。ちょっと細かすぎて、良〜く見ないと何が彫られているのかわかりませんね。
これはどちらの作品なのかは分かりませんが、おしなべて雲蝶の作品は寺社彫刻には細か過ぎますね。望遠鏡で覗くか写真を引き延ばすかしないと良く分かりません。
細かい彫り物は近くで見る分には見栄えが良いので、山車とか神輿向きですね。
刺青の場合、昔は「祭りなんかで裸になった時に遠目に映えるのが良い」とされて来ましたが、今は外で刺青を見せられる場所がほとんど無いので、内輪の仲間に近くで見せた時に見栄えがする様に細かくなる傾向にあります。
江戸期の人達の視力は私たちよりずっと良かったでしょうから、これでも良く見えたのかも知れませんが。
浜床下羽目板には独特な表情の「犀」がいました。
左面
胴羽目は案内板によると「烏天狗の酒宴」
真剣に酒を注ぐ小天狗の表情が堪らなく良いです。
背面
案内板によると「大天狗の前で烏天狗と若武者の試合」。牛若丸ですね。
因みに、ここの祭神の秋葉山三尺坊と牛若丸の師匠の鞍馬山僧正坊は共に四十八天狗の一つに数えられます。(〇〇坊というのは天狗の個体名を表すとは限らず、集団名を表す事もあるらしい、う〜ん難しいな)
右面
案内板によると「烏天狗の敗北」。多分、試合の前に酒盛りなんかやってるから負けたのでしょう。
「痛ってえ〜、牛若の奴、本気でやりやがった」
素晴らしい彫り物でした。特に胴羽目の物語性は分かりやすくて、勝手に想像が膨らみます。
刺青師・龍元
165(2020.08.04)
コメント
onijiiです。
うーん、素晴らしい!
二人の作風の違い!!
神社とは思えぬ豪華さ!!!
鬼面、烏天狗ありがとうございます。
ここは是が非でも行きたいです。(笑)
こんなに凄い物が常時公開なんて驚きですよね。細かい所まで彫り込んであるので、ここは双眼鏡か単眼鏡が必需品です。