まだまだあります [丹内山神社 其の三] 岩手県

丹内山神社御本殿 東北地方
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和六年九月下旬 岩手県花巻市の丹内山神社に参拝しました。

丹内山神社 其の二 からの続きです。

承和年間(834-847)創建 大聖寺不動丹内大権現と称す
文化七年(1810)現本殿再建
明治初頭 廃仏毀釈により丹内山神社と改称
御祭神 多邇知比古神たにちひこのかみ 他

御本殿左面にも3点の小壁と6点の胴羽目がありました。

丹内山神社御本殿

こちらも数が非常に多いので 便宜的に番号を付けました。

番号

① 二十四孝 王裒

これはお墓らしき物があるので 雷嫌いだった母を想って 雷が鳴るたびに墓前に駆けつけた 王裒おうほうでしょう。

二十四孝 王裒

スペースはたっぷり有るので 出来れば雷さまも欲しかった。

二十四孝 王裒

② どちら様?

どちら様?

庭先に幽霊の様に佇む女性。

どちら様?

縁側でうつむいている男性。この人たちは 何をしてるのでしょう?

どちら様?

③ どなた?

男性が小舟に乗っています。

どちら様?

こちらの男性もうつむき加減。。。やや! 男性の視線の先にあるのは何でしょう?

どちら様?

不自然な姿勢の 女性?

どちら様?

④ 二十四孝 黄香?

寝台の様な物があるので もしかしたら 暑い夏に父の寝床を団扇で扇いで涼しくした 二十四孝の黄香こうこうかも知れません。

二十四孝 黄香?

団扇を持っていたかも知れない手は 欠損。

二十四孝 黄香?

⑤ 源頼光と枡花女

またもや うつむき気味の男性 と女性。

源頼光と枡花女

女性の方をよく見ると 弓と矢を持っています。なので これは枡花女しょうかじょだと思います。

枡花女

追記(2024.10.29)右の矢印の先にある物は蛇の抜け殻でした。本当の弓は枡花女が左手に持っています。小心さんにご指摘頂きました。矢印まで付けておきながら気が付かず、全くの間抜けでした。

源頼光は夢の中で 楚の国の弓の達人・養由基ようゆうきの娘である枡花女から 雷上動という弓と水破兵破という2本の鏑矢を授かります。これらは子孫の源頼政に受け継がれ ぬえ退治に用いられます。

源頼光

⑥ どなたでしょう?

分かりません。

どなたでしょう?

⑤の 源頼光は居眠りしていたという設定なので 仕方ないとは思いますが この面の男性はみんな うつむき加減で元気がありませんね。

どなたでしょう?

⑦ 二十四孝 楊香

楊香と父は山で突然 虎に出くわしました。楊香が「私だけを食べて 父は助けて下さい」と懸命に祈ったところ 虎は去り 父子共に命が助かりました という話。

二十四孝 楊香

木の影に隠れる楊香の父親。ニコニコしてしていて 楽しそうです。

二十四孝 楊香

虎は落ち着いているのに むしろ 積極的にチョッカイを出しに行く 楊香。

二十四孝 楊香

⑧ 牛若丸と浄瑠璃姫

数ある義経伝説の一つ 牛若丸と浄瑠璃姫だと思います。悲しい恋の物語。

牛若丸と浄瑠璃姫

自分の氏素性を悟った牛若丸は 鞍馬山を出て奥州を目指します。道中 偶然通り掛かった長者の家で 浄瑠璃姫じょうるりひめの奏でる見事な琴の音色に惹かれ 思わず笛を取り出して和する牛若丸。

牛若丸

牛若丸に恋をしてしまった浄瑠璃姫は牛若丸を追い掛けますが 身分の違いを知った母親に幽閉され 最後には入水して果てます。

浄瑠璃姫

⑨ 菊慈童 

慈童は穆王ぼくおうの寵愛を受けますが 官人に妬まれて 過失を嫁せられ 深山幽谷に流刑になります。

菊慈童

哀れに感じた穆王は(仏を讃える詩)を与えました。

慈童が忘れないように それを菊の下葉に記すと その菊の葉の露は谷の水に滴り 病気が治る霊泉となって麓の村へ流れました。

菊慈童

800年後 霊泉の調査にやって来た勅使は 嬉々として楽の舞を踊る 少年の姿をした慈童を発見します。

菊慈童

私の好きな話です。

丹内山神社御本殿

関東に比べて東北は 胴羽目のある神社の密度が低く 回るのに時間が掛かります。朝早くに出ましたが 一社目に到着したのがお昼過ぎ。

龍元洞慰安旅行

この日はここで暗くなって来たので 移動中に 彫鈴がネットで探して予約した旅館に宿泊しました。

八畳一間に2人で雑魚寝。当日予約なので 夕食なしの素泊まりです。

お宿

部屋風呂は 若い頃に住んでいたアパートの風呂よりも小さなユニットバスです。

大浴場で一風呂浴びるかと思って 行ってみたら4階専用との事。私たちの部屋は3階です。

宿

でも4階に部屋は無いんですよね。

ご案内

4階には魔の世界の入り口があるのか。。。?

なんて一瞬思いましたが 大人数のお客には4階の宴会場も客間として貸すのでしょう。ここは労務者やバックパッカーが利用する安宿だった様です。あとで彫鈴に聞いたら ナント1人一泊3,000円。

私たちが泊まった 布団二組敷いて荷物広げたら一杯一杯の八畳間が一番大きい部屋のはずですが 彫鈴に「ここで良いですか?」と運転中にチラッと見せられた部屋の写真は ほとんどが宴会場の部屋でした。

グーグルマップ写真

ネットに騙されました。

でも 値段から考えれば 良い旅館か。。。

まあ 1人なら車中泊ですから シャワーと布団があるだけ幸せです。

刺青師・龍元

083-03(2024.10.28)

コメント

  1. 小心 より:

    ⑤の二枚目の写真、右の矢印の先にあるものは蛇の抜け殻でしょうか?
    8月末に撮影した私の画像には写ってなかったものなので。

    • あらら、本当ですね。よく見るとちゃんと鱗と蛇腹が写ってますね。
      矢を見た瞬間、これが弓だと思い込んでしまいました。本当の弓はちゃんと左手に持ってますね。
      矢印まで付けていながら気が付かないとは、まったく間抜けな話です。
      ありがとうございます。

  2. onijiiです より:

    onijiiです。
    二十四孝はこれだけの情報でよく
    分かりますね!凄いですね!!
    小心さんにも驚きました!!!

    先輩方により、何が彫られている
    か解明した寺社が多数あるのでは
    ないかと思います。

    毎回リスト作りの参考にしており、
    楽しみにしています。
    ありがとうございます。

    • 小心さんにはいつも教えて貰ってばかりです。

      寺社彫刻はいろいろな楽しみ方があると思いますが、何が彫られているか考えたり、彫師が何を思いながら彫っていたのか想像したりするのが好きです。

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