かつては眩かっただろう寂れた彩色彫刻 [とある神社 其の五] 関東

ある時　関東のとある神社に参拝しました。

元々は極彩色が眩かっただろうと思われる 立派な御本殿です。

右面胴羽目は唐子の書。

書とは古代の文人・士大夫・官僚が嗜むべき芸ごと　琴棋書画の四芸や詩書画の三絶の一つです。

彩色がかなり剥落してしまってます。

犬？猫？を抱えた唐子。

脇障子は 牛を連れたピエロの様な風貌の人。

これは　許由が耳を洗った川の水を 牛に飲ませる訳にはいかないと 来た道を引き返す巣父でしょう。

背面です。

これはどなたでしょう？

赤子を抱く女性。。。

と

鍬を持った男性。。。とくれば　二十四孝の郭巨かくきょがまず思い浮かびますが

肝心の 黄金/お釜 がどこにも見当たらないし　冠を被った女性の服装から考えても 極貧に喘ぐ郭巨夫婦ではなさそうです。

〜追記（2024.07.06）これは拓跋詰汾たくばつきっぷんの説話の様です。


橘守国　絵本故事談



拓跋詰汾は山沢で狩りをしていた。突然、天から衣を纏った車が舞い降りて来た。中から1人の美しい婦人が現れ「私は天女です。あなたと婚姻を結ぶよう命を受けてきました」と言った。
その夜、拓跋詰汾は彼女と床を共にした。明け方、彼女は「ちょうど来年の今、また同じ場所でお会いしましょう」と言い、風雨のように凄まじい速度で去っていった。
1年後、拓跋詰汾は同じ場所に赴くと、やはり天女と再会した。
天女は生まれたばかりの子を拓跋詰汾へ託し「これはあなたの子です。しっかりと教育し、立派な子に育てるのです。子孫は代を重ねて王となることでしょう」と言い、すぐに退散した。
Wikipediaより抜粋

左面に廻ります。

脇障子は巣父と対になる許由。

尭帝に位を譲ると言われて 耳が穢れたと言って　川で耳を洗います。

思いの他　男前です。

胴羽目は韓信の股くぐり。

「お前はいつも剣を帯びているが　それで俺を刺してみろ　できないなら俺の股をくぐれ」

街のチンピラに挑発された韓信は　何も言わずに股をくぐりました。

この韓信も男前ではありますが　僧侶かなにかの様な風貌です。

韓信は街中の笑い物になりましたが　後に劉邦に仕えて 漢の三傑と称されるまでになります。

画題に統一感が無いのが難と言えば難ですが　彫刻の完成度が高く 彩色の寂れ具合も良い感じで 素晴らしい神社でした。

刺青師・龍元

059（2024.07.06）