西福寺開山堂が期間限定で写真撮影を許可しているという事を 宮彫り廻りの師に聞いてやって来ました。其の三からの続きです。
天井画も良かったですが 正面欄間には扶桑洞宗鼻祖吉祥山永平道元禅師行状図 須弥壇(の下の段?)には文覚上人の凄い彫り物がありました
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まず 左上の欄間から 説明書きによると これは道元禅師と稲荷大明神
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道元禅師は宋国での行脚中 山中で激しい腹痛を起こした
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そこへ稲荷大明神が現れ 薬を授けてくださった
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薬を受け取る従者の木下道正は 帰国の後 日本漢方の基を築く事になる
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欄間中央は説明書きによると 道元禅師と白山大権現
![](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_8400-1.jpg)
道元禅師が宋での修行を終えて帰国前夜 碧巌録という禅書を発見して一夜で書写しようとする
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とても間に合いそうにないが そこへ白山大明神が老人となって書写を手伝ってくれた という話
![白山大明神](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_8383-1.jpg)
右の欄間は 説明書きによると 永平寺血脈地縁起
![永平寺血脈地縁起](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_8399-1.jpg)
永平寺開基・波多野義重公に仕えていた侍女が 何者かに殺されて池に沈められた
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侍女は成仏できず 夜な夜な幽霊となって現れていた
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波多野義重に相談を受けた道元禅師
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成仏できるように 幽霊に血脈を授ける (血脈とは仏弟子となった証拠の系譜の事)
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苦しみから解放される幽霊
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合掌しながら成仏していきます
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血脈池の幽霊もシビレたんですが もっと狂喜したのは須弥壇?の彫り物
残念ながら説明書きが無かったので 私の推測になりますが これは遠藤盛遠 のちの文覚上人でしょう
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源平盛衰記に出てくる話で まとめるとこんな感じです
盛遠は親友・源渡 の妻 袈裟御前に恋をしてしまう
「私は夫のある身です」
と袈裟に拒絶されるが 恋に狂った盛遠は手が付けられなかった
「そなたの母を殺し 我も腹を切る」
脅迫混じりに詰め寄る盛遠に困惑した袈裟はついに言った
「今宵 夫には酒を飲ませて早めに寝る様に仕向けます 夫を亡き者にすればあなたの想いに沿えましょう」
その晩 盛遠は袈裟の指示通りに源渡の寝所に忍び込み 暗闇の中一撃で渡を殺害すると 首を切り落としてそれを抱えて一目散に逃げた
月明かりの下で首を確認した盛遠は愕然とする
盛遠の持っていた首は渡ではなく、袈裟の首であった 袈裟は渡の身代わりになったのである
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己の過ちから 最愛の人を手に掛けてしまい 愕然とする盛遠
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左の武士は源渡でしょうか
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その隣は 文覚上人の滝行 刺青では定番の図柄で 寺社彫刻でも数多くはありませんが時々見掛けます
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盛遠は己の愚かさと罪深さを悟り 袈裟の首を抱いて鞍馬の山を彷徨った果てに出家
名を文覚と改め ひたすら修行の道へと身を投じます
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熊野の那智の滝で荒行をする文覚
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さすがの文覚も四日目にはついに気を失い 滝を落下していく所を 不動明王の脇侍の矜羯羅童子と制咜迦童子に助けられます
![矜羯羅童子](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_8633-1.jpg)
制咜迦童子
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矜羯羅童子
![](https://ryugendo.tokyo/wp-content/uploads/2022/09/IMG_8635-1.jpg)
その隣は ?です
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盛遠時代の説話でしょうか?
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それとも文覚上人になってからの話?
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文覚つながりで来たので これも文覚上人の話だと思うのですが。。。
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私が天井画以上に感動したのは 袈裟御前の生首です 説話を知らないとただの無惨な場面にしか見えませんね
以前から刺青を彫りたいと思っている題材です こんな意外な所で出会うなんて。。。
芥川龍之介がこの話に取材した「袈裟と盛遠」という短編を 独自の解釈で書いています ネットに落っこちています 10分15分くらいで読めるので是非読んでみてください
西福寺開山堂 まだ他にも良いものがあったので 其の五に続きます
刺青師・龍元
116-05(2022.09.19)
コメント
onijiiです。
圧倒されてしまいますね。
これほどの表現力は凄まじい。
欄間中央の奥行き感は凄いですね。
顔の艶にゾクゾクしてます。(笑)
まさに凄まじいがピッタリ来る言葉ですね。不気味ですらあります。本当に越後に埋もれさせておくのは惜しいです。