令和五年七月中旬 群馬県桐生市の桐生天満宮に参拝しました。
令和五年六月二十三日に御本殿・幣殿・拝殿が国指定の重要文化財になったばかりの様です。
景行天皇御代(71-130)創建
観応年間(1350-52)北野天満宮の御分霊を合祀「桐生天満宮」と改称
寛政元年(1789)本殿幣殿上棟
彫師 関口文治郎
御祭神 菅原道真公 天穂日命 祓戸四柱大神
裏に回ります。さすが国の重文 見事な御本殿と幣殿です。
境内の案内板には 狩野益広(狩野派の絵師?)が描いた 極彩色の本社幣殿拝殿妻之図の写しがあります。これには拝殿にも彫り物が描かれていますが 実物にはありません。
図を見ると往時はさぞかし煌びやかだったのだろうと思われます。
右面に胴羽目は二枚。どちらも題材は二十四孝からです。
左側の胴羽目は 二十四孝と言ったらコレ!と言っても差し支えない位に頻出の大舜。
舜は継母やその連れ子の他 なんと実の父親にまでひどい虐待を受けましたが それでも孝行を尽くします。
完全に心を支配され 逆らうとか逃げるとかの発想すらも出来なくなっていたのかも知れません。最近よく聞く話です
畑仕事を手伝ってくれる象。
悲鳴をあげる舜の心が作り出した妄想の可能性が高いです
そんな舜に尭帝は娘を嫁がせて帝位を禅譲します。
しかし伝説の高士と言われる許由や巣父が固辞したという帝位です。もしかしたら これからも舜の苦難は続くのかも知れません
その隣は大舜と人気を二分する楊香と思いましたが もしかしたら違うかも。
楊香と父親は山で虎に遭遇しました。
「私を食べて良いからお父さんを助けて!」
二十四孝きっての孝行娘の楊香は身を挺して父を虎から守ろうとします。
が こちらの方↑はどう見ても男性には見えないです。 親父はとっくに逃げてしまって 慌てて女神が助けに来た という設定なのかな?
背面に廻ります。
背面には胴羽目が三枚あって こちらも画題は三枚とも二十四孝から。
一番左は 二十四孝レギュラーの郭巨。
極貧に喘ぐ郭巨夫婦は 母親を養うために口減らしに赤子を埋めようとします。
すると 天がその孝行心に感じて 金塊を与えてくださいました という話。
極貧という割には立派な着物を着ていて 何処かのご大尽といった風情ですが。。。
真ん中は孟宗。 病で床に伏す筍好きの母のために 真冬にある筈のない筍を探しに雪山へ。
探せど探せど見つからず 涙ながらに天に祈りながら雪を掘っていると 天がその孝行心に感じて 筍を生やしてくださいました。↓喜ぶ孟宗。
で…この動物は何でしょう?
孟宗の話にこんなのいたっけかな?
ゆるキャラ? パンダ?
〜追記(2023.08.12)これは犬か何かの雪だるまの様です。孟宗とは雪繋がりで雪だるま。 一魁斎さんにご教示いただきました。
追記終わり〜
〜追記(2023.09.08)橘守国の絵本直指宝に元絵を見つけました。
追記終わり〜
右隣の胴羽目 漢文帝。
高祖劉邦の子である文帝は 生母の薄太后に孝行を尽くした事でも有名です。
自ら毒味・給仕をしたと伝わります。
自分の方が毒殺される危険性が高いだろうに。。。と思います
左面です。
左側の胴羽目は老萊子。
老いた両親に年を感じさせないために 七十歳になっても 子供のように泣いたり転んだりしたらしいです。
痛々しくて 両親は見ていられなかっただろう と思います
そう思って彫刻を見ると 二人は悲しげな面持ちに見えます
最後は唐夫人。
歯が無くて咀嚼する事の出来ない姑に乳を与える唐夫人。
「僕のオッパイ〜(泣)」
これを初めて見る人は ほぼ全員 絶句かニヤニヤ。
胴羽目は計七枚。散々茶化してしまいましたが さすが関口文治郎 どれも素晴らしい出来で 国指定重要文化財になるのも頷けます。出来ればいつの日かお色直しをすれば さらに見違える様になると思います。
他にも良い彫り物があったので また次回 真面目にやります。
刺青師・龍元
081-01(2023.08.09)
コメント
onijiiです。
孟宗にゆるキャラ?
可愛いオットセイのような。
全く気付きませんでした。(笑)
Onijiiさん おはようございます
気が付かないって事はよくありますね。でも一旦気が付くとこのゆるキャラ気になりますよね。孟宗より存在感あります。
更新お疲れ様です。
孟宗の場面の謎アニマル、恐らくはリンク先の浮世絵に描かれているような雪を固めて作る動物を表現したものと思われますが、宮彫師の遊び心がうかがわれますね。
https://karapaia.com/archives/52229496.html
一魁斎さん おはようございます。
ああ、これは雪だるまなんですね。納得です。
それにしても、脇のはずが主役よりも目立っちゃってますね。
重要文化財になっても、彫刻の内容はほとんど理解されていないと思います。彫刻の題目が分かったとしても、この謎のゆるキャラの様に、これは何だ?と、細部まで把握している人はいないと思います。ですが、今回ゆるキャラが犬の雪だるま だという事が判明し、良かったですね、龍元さんと一魁斎さんは桐生天満宮から表彰ですね。
錺さん おはよう御座います。
ハハ、私は表彰される様な事はしてませんが。
それにしても一魁斎さんは何でも知ってますね。脱帽です。
群馬で寺社彫刻の調査をしています。白毛山凡人(はくもうさん ぼんど)といいます。
普段は自然を相手に凡人が作る俳句で遊んでいます。
たまに寺社彫刻をの説時もあります。
いつも素晴らしい写真と説明を参考にさせて貰っています。
桐生の天満宮の写真有難うございます。
桐生の天満宮は国指定の文化財になったので「桐生天満宮と上州の彫物大工」の冊子を作るアマゾンでも販売しています。
それはいいのですが末社の機神神社の所でラッパを吹いている唐子があります。
これはなんだかお分かりでしょうか。
当時日本にはこの様な笛はありませんでしたから、他の所には無いと思います。
私も分からなかったので調べたところ「チャルメラ」ではないかとの結論に至り
チャルメラ吹きを調べる内に「朝鮮通信使」に辿り着きました。
朝鮮通信使に何の所縁もないこの地の彫ったのか分かりません。
他にあるとは有るとは思いませんが、実は桐生の黒保根地区の有る「栗生神社本殿」のにも彫ってあります。栗生神社は山の上ですが天満宮を彫った関口文治郎が天満宮より少し後に彫ったものです
機神神社はそれより少し後に星杢政八が彫ったものです。
詳しくは「桐生天満宮と上州の彫物大工」を見て下さい。
実は孟宗の(犬、雪だるま)説は私の知っている方も知っていました。私は犬、雪だるまかも知れませんが、実際の現場を見たわけではないことから、なぜそこに彫ったかが一番気になります。
要は参拝者を一人でも増やすために特徴のあるものを彫りたかったのではないかと思い、それなら現代のユルキャラの発想と同じなので何に見えてもよかったのではないかとも思います。
因みに私は魚の妖精と思い、勝手に「ギョギョの文ちゃん」なんて読んでいました
それより機神神社の方が気がかりで朝鮮通信使を彫った作品がありましたらお教え下されば幸いです。
白毛山凡人さん 初めまして。
コメントありがとうございます。ブログ拝見しています。「桐生天満宮と上州の彫物大工」も出てすぐに買いましたよ。
唐子と言いながら実は朝鮮通信使だ、という事はネットで読んだ事があります。もしかしたら白毛山凡人さんのブログだったかも知れません。
唐子については特別強い興味がある訳では無いので、あいにく持ち物などの分類はしていません。これからは気を付けて見る様にしますので、もし発見した場合にはお知らせ致します。
過去記事をざっと見返してみましたが、ラッパを吹いている唐子は機神神社を含めて8箇所にありました。これがチャルメラなのかどうかは私には分かりませんが、「ラッパ唐子」というタグを付けてありますので、お時間のある時に覗いてみてください。