源氏の説話に取材した胴羽目 [塩竈神社] 茨城県

令和三年九月下旬、茨城県桜川市の塩竈神社しおがまじんじゃに参拝しました。

目の前の道路は車両進入禁止で封鎖されていたので、手前に車を停めて歩きました。鳥居はありませんでしたが、もしかしたら何処か麓の方にはあったのかも。

御祭神　塩椎神しおつちのかみ

拝殿はあっさりとしていましたが、御本殿は立派。

向拝には絡み合う二匹の龍。

水引虹梁の無いタイプ。ここら辺でたまに見掛けます。

脇障子が斜めについています。千葉北部から茨城にかけてよくあるタイプ。

胴羽目の脇にはミツバチの巣箱。

胴羽目は仁田四郎の猪退治。富士の巻狩りの最中、頼朝の陣屋に突っ込んで来た大猪を退治する場面。

仁田四郎忠常は源頼朝の家臣で数々の武勇伝を残す猛将です。

背面胴羽目は源頼朝の富士の巻狩り。

巻狩りというのは中世に遊興や神事祭礼や軍事訓練のために行われた狩競の一種で、源頼朝が建久4年（1193年）催した富士の巻狩りは勢子までいれると70万人が参加したと言われます。

後ろの人はあんな大きな傘を持って小走りに走って、大変。

「どうもすいません」

左面胴羽目は源頼義の湧水伝説。

前九年の役で、昼夜甲冑を解かずに戦って士卒みな喉が渇き水を望んでいた時に、頼義が八幡神に念じて弓で岩に穴を開けるとたちまち清水が噴出した、といいます。

後ろの人の驚きと嬉しさの入り混じった表情がなんとも言えませんね。

胴羽目三面とも源氏ゆかりの画題で、右面と背面が富士の巻狩りつながり。見事な彫り物でしたが、頼義が背面なら左右で対になったのにな、と思います。が、構図の大きさからこの配置になったのかなという気もします。

刺青師・龍元

129（2021.10.19）