胴羽目は義経物語 [日枝神社] 栃木県

日枝神社 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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明けましておめでとうございます。今年も新年寺社彫刻巡礼の旅に行って来ました。

今年は30社廻って、うち一社は鳥居を潜りはしましたが、急な石段が危険との事で鎖で封鎖されていたので断念しました。なので、参拝したのは29社です。

栃木県北部から始めて、茨城県北部、福島県を廻る予定でしたが、福島県白河市に行ったところで雪のため茨城県に戻りました。


令和四年新年寺社彫刻巡礼の旅一社目は以前から訪れたいと思っていた栃木県那須烏山市の日枝神社です。

日枝神社鳥居
日枝神社拝殿
日枝神社御本殿覆屋

いつもの様に右から廻りましたが、彫刻の順番の関係で今回は左面から紹介します。

日枝神社御本殿

海老虹梁は松に鳥。椋鳥か何かですかね。鳥は難しいですね。

海老虹梁

胴羽目は「牛若丸剣術を修す」。父・義朝が敗死したため、母の常盤御前が平清盛の側室になる事で幼少の義経は助命され、鞍馬寺に稚児として預けられました。

牛若丸剣法を修す

牛若は裏の鞍馬山で烏天狗たちを相手に剣術を修めます。

牛若丸と烏天狗

松の木にお猿さんが三匹座っているのは、ここが日枝神社だからでしょうか。

牛若丸剣法を修す

細めの脇障子には天人風の女性。反対側の脇障子との兼ね合いから「西王母」ではないかと思います。

西王母

けっして美人ではないですが、独特の表情に惹きつけられます。

西王母

彫りは素朴な感じです。

鴉天狗
牛若丸剣法を修す
日枝神社御本殿

鞍馬天狗僧正坊くらまてんぐそうじょうぼうと牛若丸。

僧正坊と牛若丸

巻物を手にする牛若丸。

牛若丸

いよいよ免許皆伝「鞍馬天狗、牛若丸に兵法書を授く」です。

牛若丸に兵法書を授く
獅子

いよいよお目当ての胴羽目です。

日枝神社御本殿

牛若丸と武蔵坊弁慶の出逢いを描いた「五条大橋」です。

牛若丸と弁慶の出逢い

牛若丸はよく見かけますが、弁慶の彫り物は珍しいです。

武蔵坊弁慶

実は弁慶と牛若の出逢いは出典によって違いがあります。「義経記ぎけいき」では義経はこの時もう19歳、元服後の立派な侍だし、「橋弁慶」では義経が千人斬りをしていて弁慶が退治に行くという、全く逆の設定。義経と弁慶は人気があるので、他にも色々な筋書きの物語があります。

五条大橋

今日よく知られた「刀千本狩りの願を立てた弁慶が五条大橋で義経に返り討ちにあう」という筋書きは、明治に書かれた巌谷小波の「日本昔噺」によるものというのが通説の様です。

五条大橋

右側脇障子は、西王母から桃を盗んで800年生きたという「東方朔とうほうさく」だと思います。

東方朔

こちらの海老虹梁は山鵲さんじゃく。かなりデフォルメの効いた可愛らしい感じの彫りです。

山鵲

覆屋の窓も御本殿を鑑賞しやすく作ってあり、申し分ありません。

日枝神社御本殿

今年も一社目から素晴らしい彫り物に出会えました。

狛犬

まあ、選んだんですけどね。

刺青師・龍元

001(2022.01.07)

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