世界中で高評価を受ける日本伝統刺青。最大の特徴である額彫りについて解説。第2回目。背中・胸割り・ドンブリについて。
伝統刺青 額彫り1からの続きです。
背中額彫り
「背割り」と言う人もいます。脇の部分に縦にミキリが入ります。肩の部分から腿まで、体で1番大きな絵柄が入り、主となる部位です。なので背中から始めると身体全体の刺青のデザインをまとめやすくなります。
胸割り
胸から縦にズラッと並ぶミキリが美しい形ですね。個人的に好きな形です。中心の空白の幅は一般に指4本ともゲンコツ一つ分とも言われますが、人それぞれです。これも着物を着ていた時分には空白の幅がもっと広く、半纏の形を模して考案されたと言われています。
ドンブリ
まさにもう1枚背中に匹敵する大きさの図柄を入れられる場所がお腹です。本来は、手首足首までの総身彫りをドンブリと言いますが、手首足首まででなくとも胴体の全面が埋まっていればドンブリと呼ぶ事が多いです。「胸割り」に対しての「ドンブリ」ですね。両肩を仕上げてから入れると胸のタイコの分、絵柄が小さくなってしまうので、やるなら背中の次に考えると良いかも知れません。
衿ぐりは、丸首・Vネック・Uネックなどの種類があり、大きさも様々です。普段着る服や生活スタイルに合わせると良いでしょう。
アセヌキ
背中に限らず腕でも脚でも、スジと呼ばれるアウトラインの内側、色を入れずに肌をそのまま残す部分を、アセヌキと言います。
これの由来には諸説あって、江戸時代の墨刑、つまり前科の印としての入墨を消す為に入れた彫り物ではないという事の証、とする説があります。この説が本当かどうかはともかく、実際に古い刺青を和彫りでカバーアップする時に一番悩むのがこのアセヌキの扱いです。
上の桜のすぐ下にトライバルタトゥーが入っていたのが分かるでしょうか。額の部分だとアセヌキがあるので、どうしても見えてしまいます。色物では割りと隠す事が出来るのですが、このお客さんは桜吹雪という注文だったので大きな色物のモチーフが無く苦労しました。言わなければ分からない位には充分隠せたと思います。
伝統刺青 額彫り3へ続く
刺青師・龍元