令和三年十二月中旬、群馬県桐生市の広沢賀茂神社に参拝しました。
創建年不詳
御祭神 賀茂別雷神
凄く雰囲気のある境内です。
年季の入った堂々とした御本殿。苔むした石段も良い感じ。
胴羽目と腰羽目に大きな彫り物があります。
胴羽目は仏教説話から捷疾鬼。
釈迦が涅槃のとき、釈迦の遺骨の入った仏舎利を盗んだ捷疾鬼を韋駄天が追って取り戻した、という話です。
「こら待て、盗人め!」
「旦那、見逃しておくんなせえ!アッシだってお釈迦様が大好きなんでさ〜」
腰羽目には二十四孝からお馴染みの郭巨がありました。母を養うために口減らしに我が子を埋めようとして黄金のお釜を掘り当てます。
知らない人が見たら「UFOを追いかけて小さな宇宙人を捕まえた所」と勘違いしてしまいそうです。彫師の表現力のせいではなく、この話の突拍子の無さが原因です。
背面に廻りましょう。
胴羽目・腰羽目にもしっかりと彫り物がありました。
胴羽目は林和靖。梅妻鶴子、梅を妻、鶴を子の様に愛する詩人です。
林逋ともいいます。
超絶技巧という訳ではないですが、指の関節など細かい所まで非常に丁寧に彫り込まれています。
腰羽目は二十四孝から唐夫人。歯の無い姑に乳を与えます。初めて見た人はほぼ全員ギョッとします。直接ではなく、せめて搾乳してから与えれば良いのに、と無粋な事を想ってしまいます。
この表情!
御本殿左面。
鼻高老人と雲に乗った天女なので、これは邇邇藝命の天降り・天孫降臨の一場面、天鈿女命が猿田彦命に道を教わっている所でしょう。
行くべき方向を指さす猿田彦神。天岩戸を開く場面で猿田彦神が描かれる事が多いですが、実際の神話ではこの時が初登場です。
天鈿女命にしては美人です。この時はちゃんと服を着ていた筈なんですが、胸をはだけてますね。天鈿女だという事を強調しているのでしょうか。 〜追記(2022.07.15)日本書紀では「天鈿女は道を阻む猿田彦に胸と陰部を見せて嘲笑い、名を尋ねた」とある様です。勉強不足でした。ふ〜む、しかし日本神話は理解し難いです 追記終わり〜
腰羽目は二十四孝から老萊子。
あらゆる手練手管を弄して両親を喜ばせたといいます。
七十歳を過ぎているのに嬰児のしぐさをする息子に歳を忘れさせられている両親。僕なら騙されませんが。
寂れた彩色が渋くて良いです。
鬱蒼とした山奥の森の中にある様な、雰囲気のとても良い神社でした。
刺青師・龍元
167(2021.12.25)
コメント
onijiiです。
渋いですねえ!
顔の表情が素晴らしい!!
こちらは2回行きましたが、
また行きたくなりました!!!(笑)
彩色も大分寂れてしまっていて、良〜く見ないと分かりませんが表情まで丁寧に彫られた極上の出来ですね。
ここはonijiiさんの所からは近くはないのに2回も行ったのですか。あれだけの数回って、さらに複数回参拝するなんて凄いです。私も再訪リストはありますが、なかなか手が廻りません。