一社で二社分の彫り物を堪能できます [熊野神社] 栃木県

熊野神社 神社仏閣
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和四年七月中旬 栃木県足利市の熊野神社に参拝しました

熊野神社鳥居

室町時代(1336–1573)創建
寛政十年(1798)本殿再建
御祭神 伊弉諾命 伊弉册命

着いた時には草刈りの人達が2〜30人 社殿の周りで休んでいました

熊野神社拝殿

オジさん達に挨拶をして お参りを済ませ 裏へ廻ります

熊野神社御本殿覆屋

見事な御本殿です 彫り物てんこ盛りではないですが 胴羽目・脇障子・扉脇などの重点は押さえています

熊野神社御本殿

脇障子の鶴 結構ハードボイルドな感じです

鶴
熊野神社御本殿

胴羽目は黄安仙人だと思います

李白観瀑

パッと見 童子は岩に座っているのかと思ったら 亀でした

非常に柔和な顔をしています

李白

背面

熊野神社御本殿

胴羽目は養老孝子伝説  孝行息子の源丞内げんじょうないが酒の流れる滝を発見して その酒を父親に飲ませたら若返ったと言う話

養老孝子伝説

噂を聞きつけて行幸する天皇  これぞ貴族という感じの 綺麗なお顔をしています

帝

伝説上では元正天皇ですが 元正天皇は女性です

帝

ブサイクな源丞内 まあ現実はこんなもの

源丞内

左面へ廻ります

熊野神社御本殿

右面の黄安に比べると 鋭い目付きの男性

林和靖

林和靖りんなせいだと思います 梅がないけど

林和靖

名のある工匠の作だと思われます

熊野神社御本殿

こちらの脇障子の鶴も ハードボイルドを通り越して 怖いくらいです

鶴

お気付きと思いますが ここはこれで終わりではありません

熊野神社御本殿

再建前の御本殿に飾ってあった物なのか 他所の御本殿に飾ってあった物なのかは分かりませんが もう一組の胴羽目と脇障子が覆屋の内側に飾ってあります

熊野神社御本殿覆屋

1番左の胴羽目は 源頼光の大江山鬼退治の名場面の一つ 熊野大明神・八幡大菩薩などの化身である翁たちから 星兜を受領する場面

源頼光と神々の化身

星兜を押し抱く頼光  八幡大菩薩が使っていたというこの星兜は 考えを読まれるのを防ぎ どんな刃でも貫く事が出来ない という不思議な兜

星兜を押し抱く源頼光

左から2番目の板も 源頼光の大江山鬼退治の名場面 酒呑童子しゅてんどうじに酒と舞を振る舞う頼光一行です

大江山での宴

酒呑童子とは

  • 元々もの凄い美男子で 想いを寄せる女達を相手にしなかった為に 無下にされた女達の怨念によって鬼になった
  • 酒好きの稚児ちごが鬼面を被ったまま酔い潰れ 鬼面が外れなくなった
  • 山で人間の死体を見つけ 寺の僧に それとは言わずにその肉を食べさせている内に 生きている人間を襲う様になったので 事が露見して寺を追い出された

など様々な伝説があります 

酒呑童子

左から3番目の板は 脇障子でしょう  猿と鷲が彫られています

鷹

その隣 1番右側の板には 弓に矢をつがえる侍です

俵藤太秀郷

これは田原藤太こと藤原秀郷の大百足退治ですね

俵藤太秀郷の大百足退治

龍の尻尾を彫る事で 秀郷に百足退治を懇願する琵琶湖の龍女 を表しています

琵琶湖の龍女と藤原秀郷

この大百足には矢は効きませんが ツバに弱いので 秀郷は矢にツバをつけて退治したと伝わります

大百足

じゃあ ペッペとツバを吐きながら追っかけて行けば 誰でも追っ払えるのでは?

という事は言いっこ無しで。。。

2社分の彫り物が有ったので 草刈りの人達の痛い視線を背中に感じながら 長い事覆屋に張り付いていました

刺青師・龍元

096(2022.07.31)

コメント

  1. onijii より:

    onijiiです。
    2社分なので、彫刻愛好家大喜び。
    地元の方はよそ者を警戒するので、
    必ず挨拶をするようにしています。
    痛い視線の中、お疲れ様でした。(笑)

    • カメラのレンズを換えながら、何度も何度も右側に行ったり左側に行ったりしましたからね。変なヤツですよね。オジさん達も最初は愛想が良かったんですが。。。

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