令和八年 新年寺社彫刻巡礼の旅 第三社目 福島県いわき市の八劔神社に参拝しました。

創建年代不詳
寛政十年頃(1798)現本殿造営
御祭神 日本武尊

ここは非常に珍しい彫物が沢山ある神社で ずっと楽しみにしていた神社です。

御本殿は一間社入母屋平入り向拝唐破風付き。基礎はコンクリート 四隅を金属柱で支えています。

胴羽目を見ていきます。

刀を構えた女性の様に見えます。

一見するとムカデの様にも見えますが 長い体がありません。

ひょっとすると これは土蜘蛛ではないかと思うのです。

土蜘蛛というのは 大和朝廷に逆らう地方豪族の事ですね。

実は10年ほど前 刺青の図柄として神我志姫の資料を集めた事があります。
神我志姫というのは 別名神夏磯媛といって 景行天皇の熊襲征伐に協力した周坊(現山口県西部)の豪族の首長です。

上下二点の図では「神夏磯媛」と書いて「かみがしひめ」とルビがふってあるので 江戸期に神我志姫と神夏磯媛が同じ人物と認識されていた事は間違いないでしょう。

図ではどれも刀ではなく槍を持っているのが気になります。今回 刀を持っている図を探しましたが見つかりませんでした。
「神我志姫の土蜘蛛退治」の彫物は 私が把握している限り 京都府福知山市の景清神社御本殿脇障子と 兵庫県豊岡市の小江神社御本殿脇障子 にあるだけ。因みにそちらは二点とも 槍を構えています。
まあ 伝承では実際に土蜘蛛を退治するのは 景行天皇なので そこまで拘る必要は無いと判断して 図象的に1番近いのは 国芳のこの神夏磯媛でしょうか。

これが神我志姫だとしても なかったとしても 激珍彫物という事には変わりありません。
御本殿背面に廻ります。

胴羽目は 神功皇后の三韓征伐。
神託を受けた神功皇后が仲哀天皇の没後 新羅に出兵。新羅・百済・高句麗の三韓王が降伏し 神功皇后が岩に弓で銘を刻む場面。

馬上の神功皇后は動きのある構図で躍動感があります。

脇に控えるのは忠臣・武内宿禰。

弓を握る神功皇后の視線の先にあるのは

「三韓」の二文字。その下は削られてしまった様にも見えます。

浮世絵では「三韓」の後「王」と書きかけている所です。


御本殿左面に廻ります。

胴羽目は 須佐之男命の八岐大蛇退治。

大蛇に食べられる筈だった8番目の姫 櫛名田比売。祈りを捧げます。

神話では 須佐男命は櫛名田比売を櫛に変えて 髪に挿して大蛇と戦います。

大蛇の頭はちゃんと八つ彫られていました。

胴羽目三面とも 日本神話から題材が取られていました。

他にも珍しい彫り物があったので 其の二に続きます。
刺青師・龍元
003-01(2026.01.13)



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