先日、友人が海外へ引っ越す事になったので、ひと抱えもある大きくて立派な亀の甲羅を頂きました。
これは鼈甲の材料になるタイマイという亀の甲羅ですが、ご存知の通りワシントン条約により輸出入が禁じられているので、海外に持って行けないという訳です。
落っことしてお尻の部分が欠けてしまっているので、もう飾り物にはなりません。
そこで、これを刺し棒の飾りに使う事にしました。
煮沸すると外側の鱗板が剥がせるのですが、この大きな甲羅を煮る事が出来る様な鍋は持っていないので、フライパンに入る大きさにノコギリでカット……
甲羅から鱗板を剥がす事が出来ました。
内側の甘皮の様な物を削り取ります。
予め削っておいた竹製の刺し棒に合わせて、大体の形を整えます。
更に煮沸します。
柔らかくなった鼈甲に重石をして冷まします。
平になった鼈甲を刺し棒に合わせて、形を微調整します。
光の反射で鼈甲の透明な部分が綺麗に透けて見える様に、刺し棒に銀箔を貼ります。
透明漆で鼈甲を刺し棒に貼って、テープをぐるぐる巻きにして、漆が乾くまで1ヶ月以上放置します。
竹の部分は漆を何度も何度も塗り重ね、箔で飾りの言葉を入れて仕上げます。
上の刺し棒には「彫りもの」 下の刺し棒には「豹死留皮」と書いてあります。
豹死留皮とは「豹は死して(美しい)皮を留む 人は死して名を留む」と言う格言で、芸術家や偉大な業績を残した人を讃える言葉。「虎死留皮」とも言います。友人の彫豹への贈り物です。
後は鼈甲の見事な光沢が出るまで、ひたすら磨くだけ。上のは磨く前。下のは完成品です。
写真では伝わらないかも知れませんが、何物にも喩え難い絶妙な美しさ。本鼈甲の品物をほぼ初めて見た私は、自分で作ってこんな風に言うのも何ですが、感動しました。
加工に際してはYouTubeを参考にしました。鼈甲職人の皆さんは現在国内にある貴重な鼈甲をあんなに大事に使っているのに、私はノコで切ったりして無駄にしました。ごめんなさい m(__)m
刺青師・龍元