和彫りと洋彫りの違い

富士山 総論
富士山
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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和彫りと洋彫り

たまに和彫りと洋彫りの違いを教えて下さい、と言われます。

なかなか難しい質問ですが、一言で言ってしまえば、日本伝統の彫り物を和彫り、その他の物を洋彫りと呼びます。

伝統

すると何が日本伝統の彫り物なのかが問題になります。私は「日本伝統の図柄」つまり、「浮世絵や錦絵を下敷きにしたもの」「日本に古来より伝わる伝説(中国の故事を含む)に基づいたもの」を決まった様式に従って彫るのが日本伝統の彫り物であると考えていますが、これは彫師によって様々でしょう。

彫る道具

よく勘違いしている人がいますが、「手彫り=和彫り」ではありません。手彫りでやっても洋彫りは洋彫りです。しかし、「和彫り=手彫り」と考える人はいます。総手彫りでなければ伝統刺青では無いとする考え方ですが、これは少数派ですね。

図柄

図柄の違いがポイントだとしても、和洋折衷なモノもありますし、中々スパッときれいに区別出来るものではありません。

洋彫りの中にもトライバルやオールドスクールにニュースクール、リアリスティック、バイオメカなど色々あり、最近ではネオ・ジャパニーズなんてジャンルも人気の様です。

ネオジャパニーズタトゥー

ネオジャパニーズタトゥーとは簡単に言うと日本の図柄を洋風に描いた刺青の事です。和彫りの事を英語でトラディショナル(伝統的な)ジャパニーズタトゥーと言うので、それに対してのネオ(新しい)ジャパニーズタトゥーという訳です。

中には勘違いして「ネオトラディショナル~」なんて言う人もいますが、コレはもう言語矛盾ですな。

見る人によって違う

ネオジャパニーズタトゥーは私から見れば洋彫りの範疇に入りますが、随分と和彫り寄りのネオジャパニーズもあるし、60年位前の日本の彫り物の形を頑なに守っている彫師から見れば、私の刺青を伝統的でないと感じるかも知れません。でも、仮に江戸時代の彫師がその60年前の刺青を見たとすれば、随分とハイカラだなと感じる事でしょう。

伝統と言っても刺青の場合、それを彫る人纏う人が時代によって入れ替わっていく訳ですから、変化して行かざるを得ないし、変化して行くべきでしょう。

和食と洋食

海外のタトゥーが日本に伝わる以前は「和彫り」なんて言葉は無くて、ただ単に「彫り物」とか「刺青」とか「モンモン」とか呼んでいました。日本に洋食が入って来る前に「和食」という言葉が無かったのと同じ様な感じですね。

和食と言えば、天ぷらは元々ポルトガル料理だし、トンカツはフランス料理が起源ですが、今では立派な和食です。それどころか、洋食だって日本料理の一部だと言う人もいます。洋食のオムライスが日本発祥というのは有名な話ですし、明太子スパゲティはイタリアにはありません。

まとめ

こう考えると洋彫り和彫りの区別もあまり意味は無いのかなとも思えて来てしまいますね。非常にあやふやな答えになってしまいますが、

「和彫りとは日本伝統の彫り物の事で、時代によって変化し、定義が人によって違う事もある。洋彫りとはそれ以外の刺青の事」

という事になるのではないでしょうか。

う〜ん、最初に書いたものとほぼ同じになってしまった。


刺青師・龍元

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