令和四年七月中旬 栃木県足利市の熊野神社に参拝しました
室町時代(1336–1573)創建
寛政十年(1798)本殿再建
御祭神 伊弉諾命 伊弉册命
着いた時には草刈りの人達が2〜30人 社殿の周りで休んでいました
オジさん達に挨拶をして お参りを済ませ 裏へ廻ります
見事な御本殿です 彫り物てんこ盛りではないですが 胴羽目・脇障子・扉脇などの重点は押さえています
脇障子の鶴 結構ハードボイルドな感じです
胴羽目は黄安仙人だと思います
パッと見 童子は岩に座っているのかと思ったら 亀でした
非常に柔和な顔をしています
背面
胴羽目は養老孝子伝説 孝行息子の源丞内が酒の流れる滝を発見して その酒を父親に飲ませたら若返ったと言う話
噂を聞きつけて行幸する天皇 これぞ貴族という感じの 綺麗なお顔をしています
伝説上では元正天皇ですが 元正天皇は女性です
ブサイクな源丞内 まあ現実はこんなもの
左面へ廻ります
右面の黄安に比べると 鋭い目付きの男性
林和靖だと思います 梅がないけど
名のある工匠の作だと思われます
こちらの脇障子の鶴も ハードボイルドを通り越して 怖いくらいです
お気付きと思いますが ここはこれで終わりではありません
再建前の御本殿に飾ってあった物なのか 他所の御本殿に飾ってあった物なのかは分かりませんが もう一組の胴羽目と脇障子が覆屋の内側に飾ってあります
1番左の胴羽目は 源頼光の大江山鬼退治の名場面の一つ 熊野大明神・八幡大菩薩などの化身である翁たちから 星兜を受領する場面
星兜を押し抱く頼光 八幡大菩薩が使っていたというこの星兜は 考えを読まれるのを防ぎ どんな刃でも貫く事が出来ない という不思議な兜
左から2番目の板も 源頼光の大江山鬼退治の名場面 酒呑童子に酒と舞を振る舞う頼光一行です
酒呑童子とは
- 元々もの凄い美男子で 想いを寄せる女達を相手にしなかった為に 無下にされた女達の怨念によって鬼になった
- 酒好きの稚児が鬼面を被ったまま酔い潰れ 鬼面が外れなくなった
- 山で人間の死体を見つけ 寺の僧に それとは言わずにその肉を食べさせている内に 生きている人間を襲う様になったので 事が露見して寺を追い出された
など様々な伝説があります
左から3番目の板は 脇障子でしょう 鷹 猿と鷲が彫られています
その隣 1番右側の板には 弓に矢をつがえる侍です
これは田原藤太こと藤原秀郷の大百足退治ですね
龍の尻尾を彫る事で 秀郷に百足退治を懇願する琵琶湖の龍女 を表しています
この大百足には矢は効きませんが ツバに弱いので 秀郷は矢にツバをつけて退治したと伝わります
じゃあ ペッペとツバを吐きながら追っかけて行けば 誰でも追っ払えるのでは?
という事は言いっこ無しで。。。
2社分の彫り物が有ったので 草刈りの人達の痛い視線を背中に感じながら 長い事覆屋に張り付いていました
刺青師・龍元
096(2022.07.31)
コメント
onijiiです。
2社分なので、彫刻愛好家大喜び。
地元の方はよそ者を警戒するので、
必ず挨拶をするようにしています。
痛い視線の中、お疲れ様でした。(笑)
カメラのレンズを換えながら、何度も何度も右側に行ったり左側に行ったりしましたからね。変なヤツですよね。オジさん達も最初は愛想が良かったんですが。。。