八斗島稲荷神社 其の一の続きです。
胴羽目三面と脇障子は三国志演義の名場面が題材に取られていました。
私は今、吉川英治の三国志を読んでいますが、ここの彫り物はイメージがぴったりです。でも、吉川英治版の三国志は日本人向けに随分と改変されているとの事なので、その内に読んでみようと完訳版も入手してあります。
と云う訳で、私の感想は全部吉川英治版を下敷きにしています。
右面胴羽目は三国志演義から三顧茅廬。いわゆる三顧の礼です。劉備玄徳が諸葛孔明を軍師に迎えようと家を三回訪ねて、三回目でやっと在宅していたが、孔明はお昼寝中だったという場面。玄徳は目が覚めるまで待ったと言います。
劉備玄徳の舎弟で筋肉バカの張飛・翼徳。「奴は寝てますぜ!家兄、早く帰りましょう!」と言っているのが聞こえる様です。
同じく劉備玄徳の舎弟で長い髭が自慢の関羽・雲長。「静かにしろ、貴様の髭に火をつけるぞ!」
将軍でありながら三顧の礼を尽くす劉備・玄徳。「先生がお昼寝なさっているのなら、そのままに。。。」
劉備玄徳って劉備が姓で玄徳が名前だと思ってましたが、中国人なので姓は一文字が普通。劉が姓で備が諱、玄徳は字だそうです。諱とか字って何だ?って調べると、諱は本名で親や目上の人間だけが呼ぶ事ができるそうで、諱を使わないで済む様に字をつけるとの事。
日本の侍も氏と忌み名と通り名とかあったりしますね。例えば、渡辺綱は通り名が渡辺源次で、正式な名乗りは源綱です。
お昼寝中の諸葛亮・孔明。諸葛は珍しく二文字の姓です。
右側脇障子には鶴に乗った武人。誰だろ?三国志には基本的に魔法は出て来ない筈なので(関羽や張飛は魔人的な強さですが)これは三国志ではないのかな?
裏側へ回ってみると脇障子の裏側には趙雲・子龍がありました。画題は長坂坡趙雲救幼主。私は最初、張飛とイメージが被ってしまって区別がつかなくなってましたが、この人は脳みそ筋肉ではありません。
長坂坡の戦いで、玄徳は曹操軍がやってきたと聞くと妻子を見棄てて逃走。
趙雲は乱戦の中、行方不明になった玄徳の妻と息子を捜索、重症を負った夫人と息子を発見します。足手まといにならない様にと自害した糜夫人に阿斗を託されて、趙雲は曹操軍の中を単騎脱出。チョーいい漢です。胸に抱えているのが玄徳の息子・阿斗、後の劉禅。
玄徳は何回か妻子を置いてトンズラします。中国人の友人は「玄徳なんてダメな奴だ」と言いますが、こんな所から来てるのかも。
胴羽目は趙雲を追う曹操軍の兵士達。
風を切って馬を走らせる曹操軍の武将。
三国志好きでなくてもこの疾走感は堪りませんね。
歩兵は大変です。
脇障子と胴羽目で一つの画題になっているのは変わった趣向ですが、こことほぼ同じ構図の彫り物が高崎市の榛名神社双龍門にあります。
反対側の脇障子はどうなっているのかというと、張飛大鬧長坂橋、長坂橋にて大喝する張飛がありました。
「燕人張飛、これにあり! 俺と命がけの勝負をしたい奴はいるか!」と曹操軍に向け大喝します。何万人もいる曹操軍が張飛のこの一喝でビビります。まさに魔人・超人です。でも、後ろの方の人には聞こえたのだろうか?
その続きが左面胴羽目の逃げる曹操軍。
蹄の音が聞こえてきそうです。
この人逃げてるくせに、やけに貫禄がある。
脇障子の表側は張飛のお尻。
脇障子の裏側と胴羽目が続き絵だなんて、かなり変わった趣向です。本当に合ってるのかな?でも、榛名神社双龍門では同じ構図で並んでますから、良いのだと思います。
この日は天気良すぎだったのが少し悔やまれます。また行くか!
次回は腰羽目の二十四孝です。
刺青師・龍元
046-02(2021.03.18)
コメント
onijiiです。
三国志は何十年も前に横山光輝の漫画を
読んだだけですが、こうしてセリフが
入るとリアルになりますね!
彫刻の素晴らしさが引き立ってきます!!
彫り師の技量の高さは凄いですね!!!
良い彫り物はセリフや音が聞こえてきますね。
本を読んでる時もこの姿を想像して、すごくリアルに読む事が出来ます。