世界中で高評価を受ける日本伝統刺青。最大の特徴である額彫りについて解説。第4回目。ミキリについて。
伝統刺青 額彫り3 からの続き
ミキリとは
ミキリとは、刺青を入れない部分と額の境目の事です。今までカタカナで書いてきましたが、漢字で書くと多分、「見切り」と書きます。なぜ多分なのかというと、耳で覚えたからです。
額を付けるとヤクザっぽくなるので、「堅気の世界に見切りを付ける」という所から来ている、という説がありますが、これは後付けでしょう。建築業界ではドア周りの縁や天井などの境界部分の化粧部品の事を「見切り」と言いますし、実際に絵を入れる額縁の縁の部分の事を「見切り材」と言いますからね。
「見切り」ですから境界部分だけの事を言う様に思ってしまいますが、抜き彫りの刺青に額を付ける事を「ミキリを入れる」「ミキリを付ける」という様に、「額」という言葉の代わりに使ったりもします。また、「雲ミキリ」「岩ミキリ」という言葉もあるので、ある程度の幅のある言葉です。
ミキリが表すもの
ミキリはそれ自体で岩や雲、波や風、などを表します。岩であれば岩ミキリ、雲であれば雲ミキリなどと呼びます。
因みに、岩ミキリや雲ミキリではなく、真っ直ぐのミキリの事を指す言葉を私は聞いた事がありません。誰か知っている人がいたら教えてください。英語では wind bar (風の縞)と言いますが、風だけでなく波はもちろんですが、光を表したり、絵の勢いを表したりもします。
一般に関東より東ではこのミキリが細かく、関西以西では太い傾向があると言われています。
胸割りや両肩のタイコ部分のミキリは左右で太さと色を揃えると綺麗に見えます。
ミキリの境界部分の形
ミキリの境界部分の形にはブッキリと牡丹ミキリというのがあります。
ブッキリ・ブツギリ
ブッキリとは境目を真っ直ぐに引いたミキリの事で、主に袖口や足元に使いますが、他の部分に使う事もできます。シャープな印象になりますね。
牡丹ミキリ
牡丹ミキリとは扇を並べた様な形のミキリの事です。風雅な印象になりますね。私のところでは特に注文が無ければこの形になります。
その他のミキリ
その他に曙ミキリ・松葉ミキリ・砂利ミキリというのがありますが、浮世絵などで見るだけで現在では殆ど使われていません。
ところで今までの写真を見てもらえば分かりますが、腕でも足でも袖口のミキリは前から見て必ず内巻きにつけます。福は内という訳です。私の所では、です。
伝統刺青 額彫り5 に続く
刺青師・龍元