手彫りの道具の作り方 刺し棒編 その1

刺し棒 刺青道具
刺し棒
プロフィール

彫師歴四半世紀余。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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ここ2ヶ月くらい掛かって刺し棒を作っています。本当は今週末のモンペリエタトゥーコンベンションに間に合わせたかったのですが、忙しくてなかなか進められず、後一歩という所で間に合いませんでした。

切り出し

 まずは切り出しです。予め大雑把に切り出してあった木材をベビーサンダーを使って寸法通りに切り出します。黒檀や紫檀はとても硬いので、山刀などでは歯が立ちません。

左端が黄金檀、赤っぽい2本目が紫檀、3本目の黒いのが黒檀、右端が紫檀。

ベビーサンダーで荒削り

粗削り

次に、水を使って目詰まりを落としながら、 木工ヤスリを使って形を整えます。手が荒れるので手袋を着用。手先を使う仕事ですからね。

削り出し
木工ヤスリで削った木材
木工ヤスリで削った木材

中削り

次に粗めの耐水ペーパーで表面を整えます。

粗めの耐水ペーパーで表面を整えます

仕上げ削り

さらに細かい400番くらいの耐水ペーパーで表面を滑らかにします。

400番くらいの耐水ペーパー

ここまでは1本に付き30分くらいです。この段階でも使用出来ない事はないのですが、モクの表面そのままだと、衛生的にも良くないし (つまり、万が一インクが付着した場合に染み込んでしまうという事)、第一滑るのです。良い木は磨くと本当に滑らかになります。粗削りのまま使えば良いって? 使っているウチに程よく削れて結局スベスベになってしまいます。

塗り

なのでウルシを塗ります。ウルシを塗ると手に貼り付く様な感触になります。色ものには下地に白を塗ると発色が良くなります。

刺し棒

左のは木目を生かして“透き”を何回か塗った後、銀粉を使って私の護り本尊の大日如来の真言をあしらってみました。。

真ん中のはマダラに紫を塗って、その上に少し奢って金箔を貼り、「透き」を重ねています。この後2000番くらいのペーパーで研いで少し紫を出します。

右のはマダラに紫を置いて、金箔を所々貼り、その上に緑。この後、同じく少し研いで緑を破ります。コレはどういう仕上がりになるか分かりませんが、実験的に思い付きでやっています。研ぐと色々な色が出て来て面白いと思うのですが。

刺し棒

研ぎ

ある程度塗りを重ねたら、塗りと研ぎを繰り返します。

金箔と真言の2本は大分良くなって来ました。金箔のやつは途中から「紅溜め」という色に変えました。多分、後2、3回くらい塗りと研ぎをすれば仕上がりです。

刺し棒

奥の、かつて緑だったヤツは「透き」を何回か重ねたら黒くなってしまいました。コレはこれで良〜く見れば深みのある良い色なのですが、離れて見ると真っ黒に見えてしまうのでどうしようかな、と思案中です。 追記ー 結局、「透き」の層を削り落として緑色の刺し棒にしました。ー追記終わり(19.06.03)

刺し棒

耐水ペーパーの工程を省略して、粗削りのギザギザの表面に箔を貼り「透き」系のウルシを塗ったりしても表情があって味のある仕上がりになります。

これは荒削りのまま銀箔を貼り「本透明」を重ねています。削り跡が良い表情になっていると思います。

刺し棒

刺青師・龍元

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