刺青を入れる時に気を付けなければならない重要な事柄の1つに、衛生管理があります。
ひと口に衛生管理と言っても色々ありますが、1番重要な事は感染症対策です。
感染症
感染症というのは、ウィルスや細菌などが体内に侵入し増殖して発熱や下痢・嘔吐など様々な症状を引き起こすものをいいます。
感染症を大きく分けると以下の2つになります。
① 土壌や虫など不衛生な環境から感染 (いわゆるバイキンが入るというヤツです)
② 人(動物)から人へ感染
①について
現在の日本では刺青の施術・治癒に支障のある様な環境というのは、あまり考えられません。刺青を手術室や無菌室で施術する必要はなく、病院の皮膚科・外科の処置室がそうである様に、普通に掃除が行き届いている程度で充分です。刺青を入れた後も、野良仕事や屋外スポーツなどで泥だらけにならない限り、普段通りの生活で大丈夫です。お風呂も大丈夫です。
②について
人から人への感染には、咳やクシャミの飛沫によって感染する飛沫感染、空気中に浮遊するウィルスなどによって感染する空気感染、汚物などに接触して感染する接触感染など様々です。刺青施術時において特に気を付けなければならないのは、血液を媒介してウィルスが感染する、B型肝炎・C型肝炎・HIVなどの血液感染でしょう。
これに対しては、血液の付着した物を使い捨てにする、もしくはキチンと手順に従って器具を洗浄した後にオートクレーブ滅菌をする事で、感染経路を遮断します。飛沫感染・空気感染に比較すると容易に感染経路を遮断する事ができます。
感染症対策
当工房では
- 手彫り用針・マシン用針・グローブ・タトゥーインクなど、刺青施術部に直接触れる物はすべて使い捨てにしています。一番基本的な事です。
- マシンの針を装着する部分の金属製チューブは、超音波洗浄器にて洗浄後、滅菌パックに封入してオートクレーブ(高温高圧蒸気滅菌機)にて滅菌しています。オートクレーブとは132℃の高温と20,000Paもの高圧を掛ける事が出来る医療用装置です。
- 施術に使うベッド、枕、ライト、テーブル、床、タトゥーマシン、刺し棒(手彫りで使う棒) などは血液が付着しない様に全てビニールなどで覆い (バリアと言います)、施術後、バリアを取り外した後、キャビワイプ (病院などで使う殺菌消毒剤を含ませた使い捨ての布) などで清掃しています。
- 施術中は常にグローブを着用し、バリアされていない物に触れる場合 (新たにインクを用意する時など) には新しいグローブに交換しています。
- 墨・インクの補充には常に新しいインクカップを使用します。インクが撥ねる可能性があるので、使用中のカップにつぎ足しはしません。
- ゴミ袋は顧客毎に取り替えています。
- 衛生管理の方法について常に見直し、改良を心掛けています。
刺青に使う器具
刺し棒です。
刺し棒はプラスティックフィルムでバリアします。
針を装着する先端部分には 更にラテックスシートを被せます。
針を刺し棒に装着した状態。
手彫り用針は顧客毎に使い捨て。
マシン用の針も使い捨て。マシンやクリップコードはビニールでバリア。チューブと呼ばれる、針を装着する金属の握り部分は、使用後 取り外して超音波洗浄した後オートクレーブで滅菌。
ベッド・枕 その他の物もビニールやプラスチックフィルムなどで覆います。
使用後は Cavi Wipes・SaniCloth (消毒殺菌シート) などで清掃。
刺青師・龍元