世捨て人たちの欄間 [龍泉寺] 群馬県

龍泉寺 神社仏閣
プロフィール

彫師歴三十余年。東京六本木にて刺青芸術工房龍元洞を主宰。
日本のみならず、世界中で日本伝統刺青に注目が集まる中、世界の刺青大会に参加、北米・南米・欧州・豪州など各国の刺青師と交流。日本古来伝統の手彫りの技術の継承・研鑽とともに、日本文化の紹介にも力を注いでいます。

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令和七年五月中旬 群馬県高崎市の龍泉寺に参詣しました。

龍泉寺

内陣と内外陣境に欄間彫刻がありました。今回は内外陣境の欄間を紹介します。

龍泉寺

天蓋に遮られて見えませんが 内外陣境の欄間は多分四点。

左の欄間から見ていきます。これは唐代風狂の僧 寒山拾得かんざんじっとくですね。

寒山拾得

巻物を広げる寒山。

寒山

箒を振り回す拾得。

拾得

中央左側の欄間。

黄鶴仙人と太公望

鶴に乗る黄鶴仙人です。黒い下書きが気になっていましたが これは彫るためのガイドライン。まだ制作途中だった様です。

黄鶴仙人

真っ直ぐな針で天下を吊ろうとする 太公望。

太公望

中央右側の欄間。

琴高仙人と莫月鼎

龍子を捕まえて来ると言って入水し 鯉に乗って戻って来た琴高きんこう仙人。

琴高仙人

こちらはお初にお目に掛かります。

莫月鼎

色々探すと 諸職画鑑しょしょくえかがみという絵手本に元絵と思われる物を見つけました。莫月鼎ばくげつてい と書いてあります。どうやら琴高仙人もこの本を参考にしている様です。

諸職画鑑
諸職画鑑 北尾政美・画

莫月鼎 はググっても日本語サイトではヒットせず。中国語のサイトが沢山引っかかるので いくつか拾って Deepl翻訳すると 莫月鼎は13世紀頃の実在の人物で 道教に由来する秘術の五雷法を操るそうです。五雷法とは雷神を召喚し自然現象を操る術。絵では 月の様なものに向かって扇を振りかざしていますね。

画筌がせんという本にも莫月鼎の画がありましたが こちらも詞書は無し。これも船に乗り 月の様なものを仰ぎ見ています。

画筌
画筌 林守篤・著画

右側の欄間。

?と司馬温公瓶割

テンガロンハットを被り 片肌脱いでいる この人は。。。どなたでしょう?

?

隣には司馬温公瓶割があるので ↑これは司馬光?

司馬温公瓶割

司馬温公瓶割とは 水を張った大瓶に落ちた友人を助けるために 高価な大瓶を割った司馬光の話。

友人

知らない人が見たら 生首か お面が流れていると思っちゃいそうです。


顔など複雑で繊細な所から始めて 雲や波など単純な部分は後で彫り進めていたという事が分かります。

今回は動画無しです。思いのほか見応えのある欄間でした。

刺青師・龍元

060(2025.09.14)

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