令和四年三月中旬、東京都あきる野市の白瀧神社に参拝しました。
坂道の途中に鳥居があります。
階段を登ると拝殿を兼ねた覆屋がありました。
御本殿正面です。
扉脇の龍。
向拝の龍。
扉脇の龍。
覆屋内部は綺麗に整頓されています。
右面胴羽目は龍と剣を振りかざす武人。
さて、いきなり難問です。以前だったら何の迷いも無く須佐之男命の八岐大蛇退治とする所です…
で、逃げ惑う足名椎か?なんて思ったでしょうが、足名椎が剣を持っているのはおかしいです。酒甕も無いし奇稲田姫もいません。
それにこの中国人風の髷と髭と服装。どう考えても須佐之男命ではありません。
寺社彫刻廻り愛好家のバイブルの様な本・若林純著の寺社の装飾彫刻という本にこれと似た構図の胴羽目が「方相と金龍」と説明されていました。
方相というのは「金龍武王を護る」の武王に襲い掛かる方の武人の事です。つまり、「金龍 武王を護る」の武王無しバージョンという事です。
「金龍武王を護る」は橘守国の絵本写宝袋に元絵がありますが、武王無しの元絵もあるのでしょうか?
もしかしたら、今までも須佐之男命と勘違いしていただけで、沢山あったのかも知れません。
この説話は、私は読んだ事がありませんが「武王伐紂平話」と「春秋列国志伝」が出典の様で、「史記」には出て来ない様です。
因みに、方相はこの後すぐ武王に詫びを入れ、「武王伐紂平話」では許されますが、「春秋列国志伝」では武王に許されるも太公望に処刑されます。
脇障子には巻物を持った老師。
片方だけ裸足なので黄石公で間違いないと思います。
背面です。
胴羽目は韓信の股くぐり。
ワルそうな顔をしたチンピラ。「剣で俺を刺してみろ、出来ないなら腰抜けだ、俺の股をくぐれ」と挑発します。
韓信なので当然中国人風の風体です。
左面に廻ります。
御幣が置いてあって、残念ながら全体を見る事は出来ませんが、どうやら「鴻門の会・樊噲の門破り」ですね。項羽の企みを知った樊噲が劉邦を救うために酒宴の席へ乗り込む場面です。
山車には多いみたいですが、神社では珍です。覚えている限りでは茨城県龍ケ崎市の三峰神社にあったのみです。
脇障子は「黄石公」と対になる「張良」。御幣で隠れてしまってますが、手には沓を持っているはずです。
鑑賞しやすい造りという事は、雨風が吹き込みやすいという事でもあるのですが、きちんと手入れがされていて、大事にされている事が分かる社でした。
背面と左面の胴羽目と脇障子が中国図柄なので、右面胴羽目も中国図柄の「方相と金龍」で間違いないと思うのですが、如何でしょう?
〜追記(2022.04.12)右面胴羽目は「黄石公が落とした沓を張良が拾いに行く場面」かも知れないそうです。確かに格好からすると張良がしっくり来ますね。もしそうだとすると、脇の人は誰だろう? 追記終わり〜
刺青師・龍元
047(2022.04.03)
コメント
onijiiです。
顔がいいですねえ。味がありますね。(笑)
人物は顔や指先、姿勢などに目が行きます。
あきる野市は彫刻が流行った地域のよう
ですね。
雨武主神社の人面を見たいと思ってます。
人物は顔が命ですが、指も大事ですね。指先のちょっとした感じで表情が変わります。
雨武主神社は良いですね。この後再訪しました。