総手彫り背中額 渡辺綱 一条戻橋の鬼女 が始まりました。
まず下書きです。下書きは基本的にはり絵(ステンシル)ではなく 体に筆で直接 絵を付けていきます。
人間の体には骨や筋肉の盛り上がりなど凹凸があるので 紙に書いた物を転写すると どうしても辻褄が合わなくなるからです。
筋彫りがほぼ終わった状態です。
ここまで休憩入れて約12時間。
これから太彫り・額など 黒墨から始めて 着物などに柄を入れて色を付けて行きます。
まだ始まったばかり。これから長い道のりです。
動画です。
渡辺綱
渡辺綱というのは 平安中期に実在した 源頼光 の家臣で頼光四天王の筆頭です。正式な名乗りは源綱。通称 渡辺源次です。
一条戻橋
一条戻橋というのはこんな話です。
ある晩 頼光の使いで源氏の宝刀「髭切の太刀」を借り受けた帰り道 一条戻橋に差し掛かる辺りで道に困っている女があった。綱が女を馬に乗せると 突然 女は鬼に変身し綱の髷に掴み掛かって来た。綱がすかさず宝刀「髭切」を抜き その腕を切り落とすと 鬼はそのまま逃げて行った。
陰陽師の安倍晴明に相談すると
「その鬼は 茨木童子 必ず腕を取り返しにやって来るから 七日間家に閉じこもり物忌みをし その間誰も家に入れない様に」
と言われた。
それから数日間 茨木童子は綱の屋敷に侵入しようとするが 綱の唱える仁王経と家中に貼った護符の力でどうしても入る事が出来なかった。
七日目の晩 養母が訪ねて来た。綱は扉越しに訳を話して来訪を断るが 年老いた養母に
「年老いた母がはるばるやって来たというのに なんという仕打ちをするのじゃ この親不孝者め」
と泣かれ 仕方なく家に招じ入れた。
「綱よ 鬼の腕を切り落としたそうじゃな 見せておくれ」
養母は鬼の腕を手に取り しげしげと眺めていたが 突然鬼へと姿を変え
「我は茨木童子 確かに腕は返して貰った」
と腕を持ったまま窓から逃げて行った。
刺青師・龍元