令和六年九月上旬 群馬県沼田市の町田坊観音堂に参詣しました。
天仁元年（1108）開基・創建
文政十三年（1830）焼失
天保三年（1832）現堂宇再建 本堂・庫裏は現存しない
昭和五十三年（1978）屋根を瓦葺から銅板葺に改修
彫師 小林源太郎正俊
向拝
兎ノ毛通の鳳凰。
向拝が凄い事になってます。
唐破風下の彫刻と中備は 多分一つの場面で 「龍宮玉取姫之図」
歌舞伎や浄瑠璃にもなっていて 刺青でも人気の図柄です。
藤原不比等は 龍神に奪われた宝珠を取り返すために ある漁村に潜伏 現地の海女と契りを結び 男児・房前をもうけます。
不比等が 自分の正体と滞在の目的を明かすと 海女は房前を藤原家の跡取りにする事を条件に 宝珠を取り返して来ると約束し 海へ飛び込みます。
海上で海女の合図を待っていた不比等が 海女の腰に付けた命綱をたぐり寄せると 海女は龍に手足を食いちぎられた姿になっていました。
海女はそのまま息を引き取りましたが 十文字に切った海女の乳房の下には 宝珠が隠されていたのです。
龍から逃げる海女。
海女に迫る龍。
龍の口の中は サメの様に鋭い歯がぎっしりです。
今にも食い付かれそうです。
海女の左脚は ほとんど龍の口の中。
今まで沢山の玉取り姫を見てきましたが 最高の傑作だと思います。
さすが 名工・小林源太郎。
群馬県近世寺社総合調査報告書には こちらの唐獅子と牡丹が巧いと書かれていました。
この位置にほぼ丸彫りの獅子は珍ではありますが もっと玉取り姫を推して欲しかったです。
堂宇内部
堂宇内部はこんな感じ。写真を撮り忘れたので 群馬県近世寺社総合調査報告書から拝借しました。
内外陣境左側の欄間は獅子の子育て。
かなり小さな子獅子です。
欄間の上の組物間にも彫刻がありました。
大黒天ですね。
追記（2024.10.29）これは大黒が主ではなく 袋を引っ張る鼠が主役の様です。隣の牛に続き 外周の上部小壁には十二支の内の十支があります。
唐子が囲碁？双六？みたいな物をやっている？
それを眺める 二人の老人。何か説話がありそうです。
右端は 牛と唐子。こちらも何か説話があるのでしょうが わかりません。
その下の欄間は唐獅子牡丹。
こちらの塗りは 左の欄間と比べて素人っぽいです。
堂宇の外周にも素晴らしい彫り物があったので 次回紹介します。
刺青師・龍元
078-01（2024.09.21）
コメント
海女の右腕が無いのは欠損したのではなく、龍に食いちぎられたので腕が無いのですね。
物語の内容を知らないと、 あれ～腕が欠損してる、何か飛んできて欠損しちゃったのかな？ なんて想像しちゃうと思います。
海女の右足、躍動感があり必死で逃げている状況が出ていますね！！
やっぱりそう思いますか。
浮世絵などでは手足が無いものは無いので、どうなんだろうとは思っていましたが。。。源太郎なら有り得ますね。